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何気なく捨てたゴミが、遠くの海を汚している!?~スポーツチームで広がる『LTO活動』とは~

ヴァンフォーレ甲府

NPO法人海さくらとスポーツチームが共同で行っている『LTO活動』。海のゴミを減らすための活動には、海に隣接していない県のスポーツチームであるヴァンフォーレ甲府も参加しています。なぜ、海のない県のチームが参加しているのでしょうか。

今回は、NPO法人海さくら事業部長の赤井弘夢さん(以下、赤井)とヴァンフォーレ甲府の前村幸樹さん(以下、前村)にお話を伺いました。

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街で出されたゴミが、海に流れ着いてしまっている

ーー『LTO活動』の内容について教えていただけますか。

赤井)LTO活動は、LEADS TO THE OCEAN活動のことを言います。海と日本プロジェクトの一環で、日本財団、湘南ベルマーレとNPO法人海さくら(以下、海さくら)が活動を始め、2022年はサッカー・野球・バスケットボール・アイスホッケーなど20のスポーツチームと協力して、スタジアム周辺でのゴミ拾い活動を行っています。
海さくらは、湘南の江の島付近のゴミ拾いをメインに行う団体です。ビーチでゴミ拾いをしていると、ゴミがなかなか減らないということに気づきます。それはなぜかというと、海にあるゴミの約7割〜8割は、街で出されたゴミが下水道を通り川に流れ、川から海に流れ出てしまったものだからなのです。

ーー海でゴミ拾いをするだけでは、根本的な解決にはならないということですか。

赤井)そうです。そのような状況を見てどうにかしなければいけないと思い、湘南ベルマーレとタッグを組み、活動することになりました。「海にゴミは行かせない!」というスローガンのもと、サポーターの方々とスタジアム周辺のゴミ拾いをするという活動をスタートしました。

ーー約7〜8割が海以外からのゴミということに驚きました!一般にはなかなか知られていないことかもしれないですね。

赤井)そうだと思います。ゴミ拾い活動をしていても、ゴミの出どころについて知らない人がやはり多いです。一人でも多くの方に知っていただくために、ゴミ拾い活動だけでなく、スタジアムでこの実情を知っていただく映像を流しています。

ーー湘南ベルマーレを皮切りに、他にもさまざまなスポーツチームと活動されていると伺いました。具体的にはどのような方法で活動をされているのでしょうか。

赤井)試合開始前や終了後に、スタジアムにゴミ拾いの受付を設けています。受付には、トングとゴミ袋を用意しており、手ぶらでゴミ拾いに参加することができます。ゴミ拾いの場所はスタジアム付近ですので、試合を観戦していない方でも参加が可能です。運営は、それぞれのスポーツチームが行っています。

LTO活動20210605
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ーーゴミ拾いには、どのような方が参加されていますか。

赤井)スポーツ観戦に来た家族連れの方々に多く参加していただいています。参加された方に選手カードをプレゼントしているので子どもにも人気の活動になってますし、また、スタンプカードを取り入れているので、スタンプを目当てに参加されている方もいらっしゃいます。

ーースタンプを貯めるとどんな特典があるのですか?

赤井)一定数のスタンプを集めていただくと、『ゴミ拾いマスター』に認定され、会場内の表彰式に参加することができます。表彰式では選手から直接プレゼントももらえることもあるので、参加される方の目標になっているのではないかなと思います。

ーースポーツチームを応援するサポーターにとっては、とても嬉しいことですね!

記念品贈呈選手から記念品贈呈も!(ヴァンフォーレ甲府・2021年)

海のない山梨県で活動する意味

ーー海のない山梨県にあるヴァンフォーレ甲府が、『LTO活動』に参加されたきっかけを教えてください。

前村)もともとヴァンフォーレ甲府では、『エコスタジアムプロジェクト』という日本一環境に優しいスタジアムを作ろうというプロジェクトをしていました。リユースカップを取り入れたり、デポジット方式を取り入れたりして、お客様に環境の知識と意識を持ってもらうためのプロジェクトです。2022年でエコスタジアムプロジェクトは19シーズン目になります。

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私がヴァンフォーレ甲府で働き始める以前から、海さくらの担当の方は存じ上げており、連絡をとる中で、「海のない県のスポーツチームの参加はまだないですね」という話になりました。

最初のうちは選手もお客様もフロントスタッフも、「海のない県が参加する意味があるのか」と疑問でしたが、海さくら代表の古澤さんからの「海がない県こそ取り組む意味がある」というメッセージに共感し、取り組みが始まりました。

ーー海のない県に住む人たちにとって、海のゴミ問題はなかなかイメージしづらいものなのでしょうか。

前村)そうだと思います。直接海を見る機会が少ないため、関係ないと思ってしまうことも多いと感じます。ですので、ヴァンフォーレ甲府が『LTO活動』に取り組み、チームとして発信していくことで、たくさんの方に海のゴミ問題について知ってもらえるのではないかと思っています。

知って初めて「海のない県にとっても関係あるんだ」と感じる

ーー知ろうとしなければ、なかなか気づけない内容ですよね。ヴァンフォーレが活動に参加することによって問題に気づく人も多いと思うので、大きな意義を感じますね。

前村)「知る」人を増やすために、海さくらさんが作成した動画をスタジアムでも流しています。

 
ヴァンフォーレ甲府 2022シーズンのLTO活動啓発動画

また、選手に協力をしてもらい紙芝居でも伝えたりしてます。選手が伝えることで、より身近に感じることが出来ると思いますし、サポーターに「山梨県にとっても関係ある問題なんだ」と感じていただくことができると思います。海のない県のスポーツチームとして参加させていただいてよかったなと感じています。

ーーヴァンフォーレ甲府の『LTO活動』では、毎試合どのくらいの方が参加されているのですか?

前村)現在は、毎試合70~80名程度の方に参加いただいています。講演を通して『LTO活動』の話をしたり、YouTubeに動画をあげたりしていると、スポンサー企業さんから「ぜひうちの社員を毎試合参加させたい」とおっしゃっていただけることもあります。他にも、学校などからの問い合わせもありますので、この先参加者がもっと増えていくのではないかなと楽しみにしています。

ーーゴミ拾い活動は、すぐにできる身近な社会貢献活動のひとつですよね。『LTO活動』が多くの人にとって社会貢献活動への参加の機会になっていて、素晴らしいなと感じます。

アウェイチームのサポーターにも嬉しい参加特典!?

ーー多くの方に参加していただけるように工夫されていることはありますか。

前村)SDGsカフェ(持続可能な山梨の未来を目指し、 SDGsに関心を持つ方々が集い、気軽で真面目な対話を楽しみながら学び合うカフェ)に参加をさせていただいたり、大学生や高校生、中学生といった若い年代の方たちに講和を行い、LTOの活動を含めた環境活動の紹介をし、誰でも気軽に参加出来ることとみんなで楽しくやっていることを伝えてます。

ーー対戦相手のチームのサポーターの方も参加されることはあるのでしょうか。

前村)ホームページなどでお知らせをしているので、アウェイチームのサポーターの中でも参加してくださる方もたくさんいらっしゃいます。

ーーアウェイチームについても活動が広がっていっていますよね。

前村)そうですね。先日、ホームでLTO活動に参加しているチームの1つである大分トリニータさんを迎えることもありました。そういったときは、『LTOダービー』としてスタンプを2倍押すなどの特典も実施しています。

大分戦の時には、参加者の方に配るカードをあえて元大分トリニータの三平選手(現ヴァンフォーレ甲府)にするなど、アウェイのサポーターの方々にも楽しんでいただけるように工夫しています。

滋賀レイクスターズ
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競技の垣根を越えて「ホームタウン」を大事にする

ーー「海さくら」さんとして、これからこの活動を広げていくためにどのようなことを考えていますか?

赤井)競技の垣根を越えた活動にも挑戦しようとしています。例えば、サッカーチームの横浜F・マリノスとホッケーチームの横浜GRITSの会場が非常に近い位置にあるので、同じ日に試合がある日は同時に『LTO活動』を行う『ダブルLTO』を行っています。こういった活動を他でも広げていきたいと思っています。

ーースポーツをきっかけに社会貢献活動に参加できるのは、とても素敵なことだと思います。

赤井)スポーツチームは、ホームタウンを大事にしてるので、地域が同じであれば他のスポーツと一緒に何かがしたいという気持ちが強いように感じます。その気持ちに応えるひとつの活動として、ゴミ拾い活動は非常に良いのではないかなと思います。

ゴミ拾いは、気分転換にもなりますし、単純に楽しいことだと思っています。ですので、「今日やることないからゴミ拾いしようかな」というふうに習慣のひとつとして取り組んでいただけたらと思います。そして、それがスポーツを通してもっと広がっていったらいいなと考えています。

ヴァンフォーレ甲府

学校帰りもゴミ拾い!?スーパー小学生からの学び

ーーヴァンフォーレ甲府としてのこれからの目標はありますか。

前村)現在はコロナ禍で選手が動きづらくはあるのですが、選手が発信することが一番強い影響力があると思っているので、選手たちにも『LTO活動』をもっと知ってもらえたらと思っています。例えば、参加者に配布するカードは、選手たちにトングを持ってもらって撮影をしています。その撮影中に選手たちから「これは何の活動に使われるのですか」と聞かれることがあります。その時に『LTO活動』について説明をすると、「海がない山梨県で活動があるんですか!」と驚かれます。

長谷川 元希選手のカード長谷川 元希選手。LTO活動をイメージできるようにトングを持って撮影しています!

ーーまずは選手たちに知ってもらうことが大事ですね。

前村)はい。選手たちに取り組みについて伝えることで、選手たち自身が感じたことを自ら発信してもらえたらいいなと思っています。もっともっと選手も一緒に取り組んでいけたらいいですね。

ーー選手の発信力はとても大きいですもんね。サポーターの方々に向けてのメッセージはありますか。

前村)『LTO活動』に参加していただき、ゴミ拾いを身近に感じていただければと思っています。実は、ヴァンフォーレサポーターで、毎試合参加してくださっている小学生の女の子がいて、先日お話をする機会がありました。そのお話の中で、「LTO活動に参加するようになってから、学校から帰る時にもゴミ拾いをしているんです」と教えていただきました。

ヴァンフォーレ甲府小さな子どもたちも積極的に参加!

ーー素晴らしいですね。

前村)はい、驚きました。どうして学校帰りもゴミ拾いをしているのか伺うと、「試合の日以外にもゴミを拾ったほうが、海って綺麗になるんでしょう?」と。子供ってすごいなと感じましたし、習慣化するとはこういうことだなと勉強になりました。

ーークラブの活動を通して、意識が広がっていくことはやはり嬉しいですね。ありがとうございました!

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