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「地域の人たちにもわかりやすく」滋賀レイクスターズが取り組む「L-STARs」

滋賀レイクスターズ

バスケットボールBリーグ・滋賀レイクスターズは、これまで取り組んできた地域貢献・社会貢献活動を拡大・再整理した独自のSDGsプログラム「L-STARs」に取り組んでいます。澤井取締役(以下、澤井)、育成・アカデミー担当の井上さん(以下、井上)の話からは、いままで当たり前のように「継続」してきた活動の価値と、「未来」を見据えたクラブの方針を伺うことができました。

☆「L-STARs」は、「Smile(笑顔)」「Together(一緒に)」「Achieve(達成しよう)」「Responsibility(責任を持って)」の4単語の頭文字から。「クリーンウォーク」や「レイクスキャラバン」など5つのアクションに取り組んでいます。

L-STARS

『L-STARS』とは

ーー「L-STARs」の歴史、きっかけはどのようなものでしょうか?
澤井)「SDGs」が社会に広がる前から、地域貢献活動として「レイクスキャラバン」などの活動を行っていました。
ですが昨今、SDGsという言葉が普及するなかで、社会に貢献する活動にしっかり取り組んだ上で、きちんと体系化し、対外的に発表することが、クラブのブランディングや価値向上にも繋がると考え、社会貢献活動を継続し、拡大させていこうということになりました。

ーー名前はなぜ「L-STARS」にされたんですか?
澤井)実はレイクスターズといいながら、『スター』を使ったプロジェクトって今までなかったんですよ。(笑)広報担当者からのアイデアで、地域の方にもわかりやすい名称をつけることにしました。発表したのが4月中旬で、活動自体がまだ大きく出せていないのですが、来シーズン活動していく中でどんどん認知を拡大していければいいなと思います。

ーーキャラバンの実施回数、クリーンウォークの距離など、取り組み目標が具体的な数字を使っているのが印象的ですね。
澤井)数値目標がないと、活動が途中で行き詰まってしまうのではないかという懸念がありました。
また、活躍を対外的にアピールしていくためには、客観的な数字がある方が、地域の方々も認識しやすいと思いますし、皆さんを巻き込みやすいなということで、こういう形になっています。

13年間の継続的なレイクスキャラバン活動

ーー「レイクスキャラバン」とはどのようなものですか?
井上)この活動は、レイクスターズが立ち上がった2008年から始まりました。
私たちは「滋賀県で唯一のプロスポーツチーム」として、地域貢献活動は切っても切り離せないものだと捉えています。県内の小中高(養護学校を含めて)には年間で20校近く訪問し、2020年度までの約13年間で、県内307校(のべ2万7333名)を訪れたことになります。

ーー13年間しっかり継続されているのはすごいですね!学校ではどのような活動をしているのでしょうか。
井上)新型コロナウイルスの感染拡大前は、選手が学校の体育の授業に参加し、バスケットボールの指導する活動が、取り組みの大きな柱の一つでした。
コロナ禍の昨年からは、子どもたちと一緒に何かをするのが難しくなったため、「総合的な学習の時間」で、選手やアカデミーコーチが、子どもたちに夢・目標などについて語る活動が中心になり、力を入れています。

ーー継続できている理由は井上さんから見てどうお考えでしょうか?
井上)学校との信頼関係を築けているのが大きいと思います。学校の先生は異動がありますが、レイクスキャラバンについてしっかり引継ぎをしていただいたり、異動先でもまた実施することができたりすることで、活動の継続・拡大が実現しています。

レイクスキャラバン

目標は琵琶湖3周分!

ーー「クリーンウォーク」とはどのようなものですか?
澤井)きっかけは4年前、バスケットボールスクールなどでご一緒させてもらっている「公益財団法人大津市公園緑地協会」と、連携をするための協定を結ばせてもらうときのことでした。
公園緑地協会さんが、琵琶湖岸の公園の清掃や芝の手入れを担っているため、清掃に選手や一般の方を参加させてもらうことにしたのが「クリーンウォーク」の始まりです。
一般の方との活動を行えるとレイクスターズの認知が高まるでしょうし、参加される方からすると、選手とふれあいつつ、ゴミ拾いを兼ねてウォーキングができれば健康にもいいし、地域の環境も良くなってメリットしかありません。
この取り組みを続けてきたことで、昨年からはこの事業に対して、JTさんの「Rethink PROJECT」が協賛をしてくださることになりました。非常に良い取り組みなので、今後も継続していきたい活動の一つだと感じています。

ーー「クリーンウォーク」では琵琶湖岸を清掃しているとのことでしたが、滋賀の人にとって琵琶湖とはどのようなものなのですか?
澤井)滋賀出身の私にとっては、小さい頃からあって当然というものですし、最近汚れてきているという話をよく聞くので、他人事ではないと感じています。
数年前から、「ビワイチ」という、約200キロある琵琶湖をサイクリングで1周する活動が流行っています。
クリーンウォークの活動目標もそれにあやかり、「600キロ」を「琵琶湖3周」とひとひねりを加えた表現にしました。

クリーンウォーク

「夢を叶えた選手の話には説得力がある」

ーーレイクスキャラバンでは選手のかかわりが多い活動だと思います。選手自体がこういった活動に関わることによって、どういった影響がありましたか?
井上)レイクスターズは、若い選手が多いのが特徴的です。学生時代、バスケットボール中心の生活をしていた選手たちが社会と交流できる機会を得ることができるというのは非常にいい点だと思っています。
子どもたちは、『夢』は言えるけど『目標』は言えないという子も多いです。そんなときに、選手がよりリアルな目線で「バスケットの選手になりたい、そのためにはこういう風に取り組んできた」という話をしてくれるので、子どもたちにとっては『夢』を『目標』にすることができます。
こうした点で、選手が関わることで子どもたちにとっても、選手自身にとってもいい影響が出ているのではないかなと思います。

ーー選手の中で、井上さんの印象に残るお話はありますか?
井上)特に印象的だったのは、昨シーズンまでクラブに所属していた伊藤大司選手の話です。
彼は、小学生の段階からすでに、「NBAでプレーをしたい」と目標を立てていました。そして、そのためには中学校できちんと英語を勉強すると決め、中学の時点で高校はアメリカに留学すると決意していました。
自分が立てた目標を一つ一つクリアしていき、実際に高校から留学をして、のちにNBAでプレーするような選手と一緒にプレーしたり、大学まで海外で活躍したあとに、日本に帰国し、プロキャリアをスタートしました。
こういったことをリアルに子どもたちに話せる人は、数少ないと思っています。その夢や目標を実現した人の話っていうのは説得力もありました。

レイクスキャラバン

「世界にまで影響を及ぼすクラブになりたい」

ーー活動に関わるなかで、個人的に良かったと思うことはどんなことでしょうか?
澤井)クリーンウォークに参加される方の多くは、「選手に会いたい」という思いで参加されるのですが、実際清掃を始めると、こちらが声をかけないと先に進まないぐらい、細かいとこまで掃除される方がいらっしゃいます。いい意味で「目的がすり替わる」のを目にすると、嬉しく思いますし、プロスポーツクラブやプロスポーツ選手が社会貢献活動を地域に伝え、参加を促すことに適したコンテンツであることを実感します。

井上)私は「レイクスキャラバン」に帯同して一緒にいるただのスタッフです。それにもかかわらず、子どもたちは私のことを覚えていてくれたのは嬉しかったです。
「どういう仕事しているんですか?」と質問をくれたこともありました。選手ではなくても、スポーツを仕事として関わる方法があるということを知ってもらえるのは良かったなって思います。

ーー今後の方向性はどのように考えていますか?
澤井)今後は、県内の活動に加えて県外、全国、ないしは世界の課題に対して何かアプローチいきたいです。微力ながら、県外にもポジティブな影響力を及ぼしていきたいと思いますし、そういうクラブでありたいと願っています。

ーーありがとうございました!

編集より

『L-STARs』という名前を付け、キャッチーな形で取り組まれているように見えるレイクスターズさんの活動ですが、レイクスキャラバンなどは実は13年続けている活動です。

長く積み上げてきたものを、より周知・加速するために、『SDGs』という指標を使ってわかりやすくしていく。琵琶湖3周分という目標なんかは、地域の人へのわかりやすさが際立っていて、思わずうなってしまいました。

「選手目当てできた方が、ごみ拾いの方に夢中になってしまうこともある」という澤井さんからのお話もありました。スポーツから社会貢献への興味を持つ、そんな価値を発揮できる『L-STARs』の活動、これからもその想い・活動に注目していきたいと思います!

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