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選手全員が“知る”クラブの社会貢献~ツエーゲン金沢・辻尾真二さんインタビュー

辻尾真二さん

サッカー選手は、もっと社会のことを考えなければならない?
Jリーグ・ツエーゲン金沢では、2021年度『Kids Smile Project』として児童養護施設へのボール寄付を行います。それに先立ち、トップチーム全選手への勉強会が行われました。

今回はその勉強会を行った意義や価値について、元選手であり現在クラブアンバサダーを務める辻尾真二さんにお話を伺いました。

ツエーゲン金沢 勉強会©zweigen kanazawa

勉強会の様子はyoutubeでも公開中!(こちら

きっかけは『自分のため』でもいい

ーーこの勉強会の特徴は、何よりも選手全員がクラブの社会貢献活動に対して理解をしようとしているところにあると思います。Jリーグクラブの中でも珍しい取り組みかと思うのですが、この勉強会を開くことになったきっかけはどんなことがあるのでしょうか?

辻尾)地域での活動やスポンサーさんのイベントなど、クラブで決めてやっているような活動が選手に伝わる、というのはなかなか難しいと思います。僕自身が選手として活動していたときは、ベテランになるにつれてクラブがどうやって運営されているのかどういう人が関わっているのか、そういうことに興味が出てきました。ただ、若いときは自分にしかフォーカスしていないことが多いので、そうなるとクラブのことが伝わりにくい。なぜクラブがこうした活動をするのか、選手に対してもっと積極的に伝えた方がいいよね、ということで勉強会を行うことになりました。今回はオンラインで、もちろん対面でやる方が情熱や想いは伝わると思うのですが、オンラインになっても、選手は熱心に聞いてくれたので、勉強会をやった価値はあると思います。

ーーこの勉強会で辻尾さんもお話しされていましたが、選手に特に伝えたかったことはありますか?

辻尾)クラブは地域の人に支えられているからこそ、サッカー以外で地域のために何かできることをしよう、そのうちの一つが社会貢献活動である、という考え方を選手が理解するのが一番だと僕は考えています。ただ、やはり選手にとって理解しやすいのは、『社会貢献活動をすることがいちプロサッカー選手としての価値を高めることにも繋がる』ということだと思います。社会貢献活動をすることでクラブの価値も高まり、そこに関わることで選手としての認知も広がる。きっかけは『自分自身の価値向上のため』であってもいいのかなと。実際に行動を起こしてみたら、多くの人に支えられていることに気がつき、たくさんの社会問題があることを知ることになります。ピッチに立つ自分たちの責任、覚悟、それらはプレーに関わってくると思うので、結果的にピッチ外のことがピッチ内に還元されるということも伝えたいと思っていました。

ーー勉強会の中でとても印象的だったのが、「地域との関わりが増えることでピッチに立つときの責任感が変わってくる」という辻尾さんのお言葉でした。
プロの選手だからこそ持つ感情だと思うのですが、もう少し詳しく聞かせてください。

辻尾)若い頃は、自分のプレーで自分の価値を高めて、サッカー選手として良い待遇で、良い場所でプレーすることを第一で考えていました。もちろんサポーターの存在も大事だと思っていましたが、まずは自分のプレーがあって、応援してくれるサポーターはその次、という考え方でした。ただ、サポーターの方と関わることが増えてくると、自分たちの試合に対してお金を払って観にきてくれる人がいることに改めて気がつきます。自分自身のプレーよりも、チームの勝ち負けであったりとか最後まで諦めないプレーであったりとか、そういったところにも意識がいくようになりました。

ツエーゲン金沢 勉強会

©zweigen kanazawa

クラブのため⇒地域のため

ーー辻尾さんが現役時代も地域の活動に関わる機会があったと思うのですが、当時はどんな意識を持っていましたか?

辻尾)選手のときは、地域のためという意識よりも、どちらかというとクラブのためにというところが正直大きかったです。ツエーゲン金沢に加入した経緯も含めて、このクラブに対して何か自分のピッチ内外でできることをやりたいなと思っていました。そうすることで自ずと『こんなにたくさんの人たちにサポートされているか』ということに気がつくことができましたし、いろいろな人と会うことで自分を応援してくれる方も増えました。今は引退して金沢に帰ってきましたが、今でも応援してくれる方はたくさんいらっしゃいますし、改めてそういうことは大事だったなと感じています。

ーークラブのためにというところが最初だったのですね。地域のために、という意識はいつ頃から生まれましたか?

辻尾)ツエーゲン金沢でプレーしていくにつれて、次第にですかね。当時はJ3で、サポーターの方もかなり少ないところから、自分たちが昇格を掴み取るまでに目に見えてサポーターの数も増えていきました。改めて、クラブがこの地域にもたらす影響を感じましたし、ツエーゲンがサポーターの方の人生を豊かにする存在なんだな、ということにクラブの成長と共に気がつくことができました。

選手の人生をより豊かに。クラブができること

ーー今はクラブスタッフとして、同じように地域の活動にも関わっていると思うのですが、選手時代との違いは何かありますか?

辻尾)クラブが地域にあることの存在意義と言いますか、地域があって地域のみなさんがいて初めてクラブがあるということをより実感するようになりました。営業として、いろいろな方の意見を聞く機会が増えたこともあると思います。
地域の社会貢献活動だけでなく、クラブが地域の人やスポンサーの方たちに支えられているというのは、選手も含めたクラブに関わる人たちは知るべきだと思いますし、それを伝えるのもクラブの役割の一つなのではないかなと僕は思います。

辻尾さん
©zweigen kanazawa

ーー勉強会の話に少し戻りますが、辻尾さんの現役時代は、このようなクラブ全体での取り組みについて学ぶ機会はありましたか?

辻尾)僕が現役の時はなかったですね。これからの時代やっぱり必要になってくることなのかなと。「勉強会、面倒だな」と思っても、強制的に参加させられることでそれが何かのきっかけになると思いますし、いまでなくても1年後、2年後に何か気がつくこともあると思います。
今回の勉強会を通して、ツエーゲン金沢に関わる選手に対して、まずは所属している期間だけでも、より豊かな人生になるように、ピッチの上だけでない場面でもクラブが選手にアプローチしていくことはとても大事だと感じました。

ーー辻尾さん個人として、今回の『Kids Smile Project』に対してどんな想いがありますか?

辻尾)僕自身、このプロジェクトを通じて、地域の児童養護施設の現状など知らなかったことを知ることができています。元選手としてできることがもしかしたらあるかもしれないと感じましたし、新たなきっかけをいただけたので自分自身が積極的に行動していきたいなと思います。
また、現役の選手に関しては、試合に出てる出てない関係なくそれぞれの選手に本当に価値があって発信力も間違いなくあります。元選手という立場から僕がいろいろと伝えていき、選手からの発信でより多くの人たちにこの『Kids Smile Project』のことや、地域課題のことを知ってもらえる環境づくりをしていきたいと思います。

ーーありがとうございました!今後の活動も楽しみにしています!

編集より

今回、zoomで行われた勉強会を私も見学させていただきました。

印象的だったのは、選手たちが本当に真剣に話に耳を傾けていたこと。こうした新しい『学び』を求める選手が増えてきているのではないかと感じました。

辻尾さんのおっしゃるように、サポーターにとって選手の影響力・発信力は絶大です。と同時に、選手側もサポーターの力、地域の力を感じることができるようになれば、サッカークラブとしてより大きな力で社会・地域に貢献できるのではないか、ということをミーティングに参加しながら思いました。

今後のツエーゲン金沢さんの動き、そして選手との連携にも注目です!

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