一般社団法人Sports Cares(スポーツケアーズ)代表の木村勇大(たけひろ)です。
弊社は「アスリートの力で社会を元気に」という理念を掲げており、アスリートが社会貢献活動に取り組む事を当たり前にしたいと思い活動しています。
Sports Caresの活動や、ともに活動させていただいた方々がどんな想いでどのような事に取り組まれているのかについて発信しています。
今回は公益財団法人日本骨髄バンク広報部の鈴木慶太さん(以下、鈴木)、水口詞代さん(以下、水口)にお話を伺いました。
ファンへの感謝を伝えるとともに啓発活動を実施
木村:Sports Cares)まず6月3日に開催した「ラグファン大感謝祭2023」にご協力頂きましてありがとうございました。
ラグビーファンの方々に感謝を伝えるためのイベントでしたが、骨髄バンクの皆さんにご協力いただけたおかげでより意味のあるイベントになりました。
鈴木:日本骨髄バンク)こちらこそラグビーファンの方々に骨髄バンクについて周知いただけて本当にありがたかったです。
選手の方から発信していただくことで、我々だけだとなかなか声が届かない人たちに知っていただく機会になっており本当にありがたいです。
木村)競技や選手を入り口に骨髄バンクについて知ってもらう事が僕たちアスリートにできることの一つなのでこれからも続けていきます。
若年層の間で下がり続ける骨髄バンクの認知度
木村)骨髄バンクについて知ってもらう上で苦労していることについてお伺いします。
声が届かない場所が多いというお話がありましたが、特にどのような点が挙げられますか。
水口)やはり認知度が低いことですね。骨髄バンクについてまったく知らないという方も多く、2021年に実施された内閣府の調査では18歳から29歳の世代では認知度が約50%ということが明らかになっています。
木村)その世代の半分は骨髄バンクという名前すら知らないということですよね。
水口:日本骨髄バンク)そうなんです。2017年の同じような世論調査での認知度は75%だったんですが、数年で2割以上減少してしまいました。
木村)その原因はどのようなところにあると思いますか?
水口)情報を届ける方法にあると考えています。骨髄バンクを何で知りましたか?と聞くと、多くの方がテレビやラジオ、新聞雑誌と答えています。ACジャパンさんからテレビ、ラジオ、電車報告などのマスメディアに骨髄バンクの広告を掲載していただいているのですが、テレビを見ない人もかなり増えてきているため、そうした世間の方々の傾向にどう合わせていくかというのが一番の課題だと認識しています。
特に若い世代の方々はインターネットやSNSから情報収集をすることが多いので、その世代にどのように届け、興味を持ってもらうかが課題ですね。
木村)たしかにそれはありますね。僕もテレビは実家に帰ったときや、ラグビーの遠征で泊まったホテルなどの限られた機会でしか見ないですし、新聞に関してはもう何年も見ていません。さらに若い世代はより顕著にその傾向があるのかもしれませんね。
ドナー登録のリスクとは
木村)骨髄バンクについて「よくわからない」とか「怖そう」などのイメージを持っている人は多いと感じます。僕が以前所属していたラグビーチームの同僚たちに、どのように登録をするのか等いろいろと聞かれた事があります。
その場にいた4人全員が骨髄と脊髄を混同して認識していて、「損傷すると危ない部分を提供するの?」という質問をされたことが僕としては驚きでした。
鈴木)ドナー登録会で登録をご案内する時もやはり「背骨を削るんじゃないですか?」という質問や、「提供すると亡くなる可能性高いんですよね」「歩けないくらい痛いんですよね?」などとよく聞かれます。まだそういったイメージが強くあって、我々の広報活動の努力不足を痛感する瞬間でもあります。
木村)実際に骨髄提供するときにはどのような方法で行うのですか?
鈴木)骨髄液の採取方法は2種類あります。
1つは機械を使って血管から血を作る細胞だけを採取する末梢血幹細胞提供という方法、もう1つは麻酔をかけてうつ伏せの状態でボールペンの芯ぐらいの針を腰骨に刺して直接骨髄液を吸引する骨髄提供という方法です。
骨髄液をうつ伏せで採るときは腸骨というお尻の骨からです。腸骨には骨髄液など血を作る細胞がたくさん入っているのでそこに針を刺して採取していきます。麻酔によって痛みはまったくありません。
麻酔が切れた後も全然痛くないという方もいれば、腰あたりに尻餅をついたみたいな鈍痛や重みを感じると言われる方もいらっしゃいます。日常生活に戻れないような方が何人もいる、ということはありません。
木村)ごく稀にドナー提供した後に体調が悪くなるケースがあるのは知っていますが、その稀なケースを「当たり前に起こる事」のようにイメージされている方が多いのかもしれませんね。
より深く知るきっかけとしてのドナー登録
木村)ドナー登録することに対して敷居が高いと感じる人も多いと思います。「とりあえずドナーに登録してみよう」というのはダメなのでしょうか?
水口)そうした方も大歓迎です。登録することをきっかけに骨髄バンクについて考えていただいたり、家族や友人と話していただく機会にしていただけると嬉しいですね。
ただ、本当によく考えてからドナー登録してくれた方がドナー適合時にお断りされる可能性が低いので理想ではあります。
一部の献血会場では、骨髄バンクのボランティア(説明員)を派遣してドナー登録会も併せて開催しています。その現場では登録希望者の方にお声掛けをしてドナー登録に関する説明を5分程度させてもらっています。
木村)僕もその説明を受けて、不安なく納得して登録できました。骨髄バンクの100%を理解できているわけではないですが、登録することで自分ごとになってより詳しく知っていくみたいな感じですね。
アスリートの持つ”自分ごとにする力”
木村)僕がドナー登録したきっかけは、当時5歳のラグビー少年が再生不良性貧血になりドナーを必要としていた事です。友人から何かサポートしてほしいと連絡を受けて、これはもう登録しないといけないと思いました。
ドナー登録をした事がその先でどういう人の役に立っているのかが見えると、やる意味が明確になったり一歩踏み出す理由になると思います。
水口)ドナー登録自体を“自分ごと”として感じづらいというのはどうしてもあると思います。
それが自分の家族や友達、好きな人がドナーを必要とした時に初めて自分ごとになるので。アスリートや著名人の方には、自分ごとに引きあげる力というのがあると思います。
応援しているアスリートが啓発活動に取り組んでいるのを見て興味を持ってくれたり、自分もやろうと思ってくれる人もたくさんいると思います。
木村)なるほど。“自分ごとにする力”ですか。
水口)はい。骨髄バンクの方でも一人でも多くの方が自分ごとに感じてくれればと思い、経験者の声、特に若い世代の方の声を中心にホームページに掲載しています。
木村)今後僕たちSports Caresを含めアスリートにどのようなことを期待されていますか。
水口)本当にアスリートの方は力を持っていると思います。プレーの躍動感だとか、それに感動したり、応援してるファンの方がいらっしゃる。そのアスリートの方が骨髄バンクを応援している姿を見せたり、発信をしていただけたらそれに勝る事はないと思っています。
好きな選手などの関心がある人から情報を得ようという人は多いと思うので、アスリートの皆さんが発信していただくことが知るきっかけ、考えるきっかけになる事を期待しています。
木村選手たちのように積極的に発信してこういう形で行動を進めてくださっているのが最強だと思っているのでやっていただければと思います。
木村)ありがとうございます。
直近では9月16日(土)に骨髄バンクドナー登録の啓発イベントを予定しています。
弊社Sports Caresの共創パートナーである一般社団法人Joynt様と共に「おとなラグビーコミュニティー」を開催します。
一人でも多くの方が自分ごととして考えてくださるように引き続き行動していきます。
本日はありがとうございました。