Sports for Socialでは、骨髄バンク普及のために活動する方々の『想い』を取り上げ、発信しています。
今回は、田中一道さんからの寄稿です。
聴覚障がいのある田中さんは、骨髄バンクに登録をして2度の骨髄提供をされました。骨髄バンクランナーとしても活動され、フルマラソンも完走されています。
そんな田中さんが抱える骨髄バンク提供への想い、そこからの骨髄バンク説明員として活動を広めていく想いについて、寄稿いただきました。
骨髄提供後すぐのフルマラソン
2019年11月、2回目の骨髄提供が完了して初めてフルマラソンに出走しました。
骨髄バンクを応援する「骨髄バンクランナーズ」メンバーとして横浜マラソンへのエントリ
ー。神奈川県内や青森などから骨髄提供者、骨髄移植者の家族や友達が集まり、黄色いタスキを担いでマラソン大会に臨みました。骨髄移植者がフルマラソン完走したことに感動し、2回目の骨髄提供をしたばかりの私が7 年ぶりのフルマラソンに挑戦しました。
「骨髄バンクランナーズ」メンバーが周りのランナーに笑顔で会釈し、沿道の観客とハイタ
ッチ(コロナ感染が拡大する前なので問題なし)しながら骨髄バンクをPRしました。「骨髄バンクランナーズ」メンバーがほとんど無事に完走しました。(私のタイム:4時間22 分台)
本大会がきっかけで骨髄バンクドナー登録が増え、1人でも多くの患者さんに「いのちのバ
トン」を渡せたら・・・と願いました。
「生きる」という希望を与えたい
2014年に先輩が白血病で亡くなったことがきっかけで骨髄バンクドナー登録しました。
天国に旅立った先輩のように血液疾患で苦しんでいる患者さんを1人でも助け、患者さ
んの家族と、たくさん泣いて、たくさん笑って、たくさん怒ってたくさん思う存分話し合え
るように、「生きる」という希望を与えたいと思いからの行動でした。
骨髄バンクドナーに登録してすぐ、1ヶ月後に患者さんとの適合通知が届き、その5ヶ月後に無事に見知らぬ患者さんに「いのちのバトン」を渡しました。患者さんは骨髄移植が成功し、私の骨髄液で健全な血液を作れるようになり、旅行に行けるところまで回復したという手紙をいただき、心の中でガッツボーズしました。
2回目の「いのちのバトン」
5年後の2019年にも、2回目の「いのちのバトン」が完遂しました。
骨髄バンクを介しての骨髄提供は2回までなので、今後は骨髄採取による人助けが出来
なくなりました。なので、私が説明して骨髄バンクドナー登録を増やし、血液疾患の患者
さんを1人でも多く助けたいと強く思い、骨髄バンクドナー説明員の資格を取得しました。
私は聴覚障がいがあり、発音が苦手でお客様の口話をうまく読み取れないという二次障
がいがあるため、説明方法を工夫しています。説明マニュアルとほぼ同じ内容の説明カードを作成し、口話とカードを併用して説明し、質問があれば電子ボードに記入してもらうようお願いすることで、皆さんとコミュニケーションを取っています。聴覚障がいのある方には手話で説明してドナー登録してくれたことがありました。
いま、2021年1月に開設したオンライン手話教室、野球大会サポート等のボランティア
活動の幅が広がり多忙になりましたが、健康維持のために野球とジョギングを楽しんでいます。また是非黄色いタスキを担いでフルマラソンを走る日を楽しみに、日々活動を続けています。
編集より
聴覚障がいがあると、こうした説明員として活動されるのも億劫になってしまうのではないか?と勝手ながら想像していました。しかし、それを工夫で乗り越えるほどの想いが田中さんにはあります。
きっかけは先輩が亡くなられたこと、そこから多くの同じ苦しみを抱える方に想いを馳せ、走り続ける田中さんをこれからも応援したい、と感じる寄稿です。
田中さん、ありがとうございました!