私たちの想い

「いのちのバトン」移植でつなぐ聖火リレー〜骨髄バンクに向けた想い〜

骨髄バンク 三井梢さん

Sports for Socialでは、骨髄バンク普及のために活動する方々の『想い』を取り上げ、発信しています。

今回は、静岡県浜松市で活動されている『造血細胞移植患者と家族の会 BANBi』を支援する、造血細胞移植コーディネーターの三井さんからの寄稿です。

普段、お互いの悩みや不安を共有したり、情報交換したりする会として活動しているBANBiとともに、三井さんが骨髄バンク支援の活動をした様子をご紹介します。

骨髄バンク 清水さん
癌になったからこその出会いとチャレンジ! 骨髄バンクに向けた想い vol.7~清水 敏明~Sports for Socialでは、骨髄バンク普及のために活動する方々の『想い』を取り上げ、発信しています。今回は、清水敏明さんからの寄稿です。 2012年の告知以降、多くの手術を経て舌癌を克服した清水さん。癌の患者さんは、骨髄バンクへの登録や献血を自身が行うことはできません。それでも『骨髄バンク登録説明員』としてだけでなく、ランナーとしてこの活動を多くの方に知ってもらうために大会にも参加されています。人と話すことが苦手になってしまった清水さんを変えた『骨髄バンク登録説明員』との出会い。社会のためにチャレンジする清水さんの想いを是非お読みください。...

「聖火リレーランナーになりきろう!」

はじめまして。浜松医科大学医学部附属病院 造血細胞移植コーディネーター三井梢と申します。造血細胞移植コーディネーターは、患者さんやそのご家族、ドナーとなられる方を支援し、移植医療をサポートする立場にあります。

「造血幹細胞移植(ぞうけつかんさいぼう いしょく)」とは、白血病などの血液の病気を発症し、正常な血液を作ることが出来なくなった患者さんのために、ドナーさんから提供された造血幹細胞を移植する治療のことです。造血幹細胞移植には骨髄移植の他にも末梢血幹細胞移植、さい帯血移植という方法があります。

私は、『造血細胞移植患者と家族の会 BANBi』の活動を医療者の立場から支援しています。BANBiは普段、互いの悩みや思いを共有したり、情報交換したりする場として活動しています。造血細胞移植を受けた日をセカンドバースデーと呼んでいることにちなんで、「Before And Now SecondBirthday ~造血細胞移植の前も今も私らしく~」という由来の『造血細胞移植患者と家族の会 BANBi』が誕生しました。患者さんたちは、「移植医療を受けた後も、自分らしくありたい」という思いを持ちながら生活を続けています。

2021年12月4日(土)、BANBi主催で骨髄バンク・造血細胞移植推進イベント『聖火リレーランナーになりきろう!』を開催しました。このイベントは、BANBiに所属する患者さんである後藤菜都美さん(2004年に骨髄バンクを介した骨髄移植を経験)が、東京2020オリンピックの聖火リレーランナーに選ばれたことを知り、患者さんやドナーさんとそのご家族、移植医療に関わる方々に、東京2020オリンピックの聖火に宿るパワーを届けたいと願いを込めて実現に至りました。

骨髄バンク

開催当日は移植後患者さんとその家族、骨髄バンクを介した骨髄採取を経験されたドナーさんとその家族、静岡骨髄バンクを推進する会のメンバー、浜松市保健所の職員さん、浜松医科大学医学部附属病院の医療スタッフ、中学生ボランティアなど幅広いメンバーが参加してくれました。

イベント当日は青空が広がり、冷たく強い“遠州のからっ風”が吹く日。
トーチは、太陽の光に照らされ輝き、夢と希望と思いと感謝がたくさん詰まったものに見えました。

骨髄バンク

参加者は、それぞれの思いを抱きながら、一歩一歩と確実に足を前に進めました。ちょっと照れたように走る皆さんでしたが、トーチを持ったとき、誰もがトーチに目を奪われ、後藤さんやトーチに宿る思いを感じ、そして自分の思いをのせ、次の方へとつなげていきました。

「一生に一度触れる機会があるかないかのトーチを家族みんなで持てる日がくるなんて・・・闘病中にこんなこと想像もできませんでした。」、「トーチを持ったとき、とても神聖なものに触れた気がしました。」、「仲間でリレーする姿は“いのちをつなぐ”象徴にも感じられ感動しました。」など、参加者からは感激の声が聞こえました。

骨髄バンク
骨髄バンク医師、BANBi代表、移植コーディネーターの3者で歩きました。

生きるチャンスをいただいて

東京2020オリンピックの聖火リレーランナーに選ばれた後藤さんは、2004年に骨髄バンクでドナーが見つかり、造血幹細胞移植(骨髄移植)を受けました。2003年、24歳の夏に骨髄異形成症候群と診断を受け、翌年春に急性骨髄性白血病に病気が悪化した後のことです。きつい抗がん剤治療の副作用に耐え、退院後も自宅療養をしながら骨髄バンクのボランティアに参加しました。その活動は静岡骨髄バンクを推進する会やNPO法人全国骨髄バンク推進連絡協議会理事を務めるなど多岐に渡り、骨髄バンクを患者経験者の立場から15年以上支えています。

後藤さんは、移植の経験について、「運良く骨髄バンクからドナーさんが見つかり、生きるチャンスをいただきました。」と語っています。
聖火リレーランナーへの応募については、「骨髄バンクのボランティアの経験や、患者会(BANBi)で元気になられた患者さんがたくさんいることを知って、普及啓発につながったらよいなと思い応募しました。」と教えてくれました。

ランナーに選ばれた時の気持ちを「まったく実感がわかない。」と話していた後藤さん。聖火リレー後は、「当選の翌年から新型コロナ感染症が広がり、直前までどのような感情で走ればよいのかわからずにいました。いざトーチをもらって現地で待機していると、沿道の方々が温かい声援をたくさんくださったので、純粋に楽しもうと思って走りました。感謝の気持ちとともに最後まで楽しんで走ることができました。応援はこんなにも元気をもらえるのだなと実感した貴重な経験でした。」と笑顔で話してくれました。

後藤さん後藤さん

知ってほしい、移植のこと

造血幹細胞移植は、ドナーさんがいることで初めて成り立つ移植医療です。ドナーさんから患者さんへ“いのちをつなぎ”ます。そのため移植医療は、“ドナーさんから患者さんへの「いのちのバトンリレー」”と表現されています。

造血幹細胞移植ドナーは、血縁者の他に非血縁者(骨髄バンク、さい帯血バンク)から探します。日本国内で血液の病気を発症する患者さんは、年間1万人以上と言われ、骨髄バンクを介する移植を必要とする患者さんは毎年2千人を超えています。そのうち、移植が成立する患者さんの割合は6割程度です。
これからの患者さんに「いのちのバトン」を渡すためには、ドナー登録者数を増やす必要があります。満55歳の誕生日でドナー登録は自動的に取り消しとなります。新たなドナー登録者が増加しないと、ドナーさんの登録者数は減少していきます。若い年齢の方にも骨髄バンクや移植医療のことを知っていただきたいと私たち医療者も活動しています。

一人の患者さんへ「いのちのバトン」を渡すために、多くの人がつなぎあいながら移植医療が成り立っています。私たち医療者は、移植を受ける患者さんにいのちのバトンを渡す大事な役割を担っていることを、常に感じながら仕事をしています。今回のイベントを通じて、造血幹細胞移植が多くの人や組織の力で成り立っていることを改めて感じました。

これからも行政(静岡県、浜松市や近隣市町)、ボランティア団体(静岡骨髄バンクを推進する会や献血関連の団体)や医療機関と協力し合いながら、移植医療のことを一人でも多くの人に知ってもらえるよう活動を続けていきます。

骨髄バンク

協同組合日本写真館協会作成の「新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン」に準じた対策を行い撮影しています

●関連リンク
□ 日本骨髄バンク https://www.jmdp.or.jp/
□ 造血幹細胞移植情報サービス
(骨髄バンク・さい帯血バンクポータルサイト)https://www.bs.jrc.or.jp/bmdc/index.html
□ 造血細胞移植患者と家族の会 Banbiのページ
https://www.facebook.com/BANBi.2nd.birthday/

 

編集より

BANBiさんのように、全国各地で骨髄バンク普及のために活動されている団体さんがいらっしゃいます。「いのちのバトン」を渡すために、病院などの医療者側の立場など、本当に多くの方の想いがあるのだと改めて実感しました。

私たちにも、私たちそれぞれの立場でできることがあるはずです。できる人が、できることをする。以前寄稿いただいた赤木晴香さんの言葉を思い出します。こうした発信が一人でも多くの方のアクションに繋がることを願っています!(柳井)

骨髄バンクランナーズ
骨髄バンクに向けた想いvol.2 ~骨髄バンク説明員・骨髄バンク応援ランナー 赤木晴香~骨髄バンク説明員であり、骨髄バンク応援ランナーの赤木晴香さんの記事です。兄が白血病になったことではじめた骨髄バンクの普及活動。できる人が、できる時に、できることをする。子どもから大人まで、できることはたくさんあります。...