2022年6月7日(火)〜 6月9日(木)にかけて行われる、スポーツ×社会貢献のオンラインイベント「Sports for Social Summit 2022 summer」。その見どころをセッション毎に紹介していきます。
Session.2は「貧困や格差問題に対してスポーツができること」。
登壇者の小池純輝さん(一般社団法人F-connect代表理事)・水野勇気さん(秋田ノーザンハピネッツ株式会社 代表取締役社長)・廣井友信さん(現役Jリーガー・ツエーゲン金沢所属)との事前打ち合わせの様子を紹介します。
常設のこども食堂を継続していくために
ーー秋田ノーザンハピネッツが行う「みんなのテーブル」について、水野さんからご紹介いただけますか?
水野)「みんなのテーブル」は、週4回稼働する常設のこども食堂で、2021年の10月にオープンしました。5年ほど前から所属選手に栄養価の高いものを食べて欲しいという思いで食堂の計画を進めていました。しかし、常設の食堂を作る場合、バスケットボールは所属選手がサッカーなどに比べて多くないことや、独身の選手の割合を考えるとコストバフォーマンスや効率が悪いという課題がありました。
そこで、「こども食堂」を作ってそこに選手が食べに来るというシステムにすればいいのではという発想がきっかけで、秋田市内にオープンしました。
ーーこども食堂を運営する上で、どのようなことを大切にされていますか?
水野)秋田県内ですと、ひとり親、特に母子家庭の世帯年収が低いという統計があります。そのような環境で子育てをしながら、明るい気持ちで家庭を築くことは大変なことだと思っています。だからこそ、「明るい子ども食堂」というコンセプトのもと、集まる人たちが笑顔になるということを目指しています。
また、ここに来ればご家庭での料理の片付けがなくなるので、家事負担の軽減にもつながります。
ーープロスポーツチームとして、『常設』でのこども食堂は初の取り組みです。運営していく上での課題はどのようなところに感じられていますか?
水野)今感じている課題は、『選手へ提供する食事の栄養面』と『継続的にやっていく上での資金調達』の2つです。提供されている食事のメニューは管理栄養士の方に作っていただいているのですが、当初目指していた「プロアスリートの食事」となると現状のメニューでは不十分なのではと感じています。
また、資金調達の面では、ここからどのように継続していくかという課題があると思っています。私たちが運営しているのは「常設」のこども食堂ですので、やり始めた以上はやめられないし、やめるつもりもありません。協賛を募るのも良いのですが、「農業」という新しい事業に視点を移して考えていることもあります。
ーー「農業」に関連することとは具体的にどのような形なのでしょうか?
水野)こども食堂を運営してわかったことなのですが、秋田の米農家にはかなりのお米が余っているということです。寄付でお米を積極的に募集しているわけではないのですが、すぐに600キロほど集まりました。これを本気でやったら相当な量の米が集まると感じています。現時点でも、そもそも使いきれない量なので、このみんなのテーブルを起点に物を集め、全国のこのような活動している場所に販売していくような活動ができるのではと思っているところです。
ーー協賛だけでなく、自走できる形を目指されているのですね。
児童養護施設の訪問で気がついた“大きな課題”
ーー水野さんが農業について話されていましたが、小池さんが代表理事を務められているF-connectでも農業に関わる活動をされています。
小池)私は、現在「F-connect」という一般社団法人で活動をしています。F-connectは、「フッドボールで繋げる、フッドボールが繋げる」をコンセプトに、児童養護施設の子ども達を支援する活動をしています。
施設訪問や試合招待を中心に活動をしてきたのですが、2021年度からは、「プロサッカー選手がつくる畑で児童養護施設の子どもたちと泥んこになりたい」をテーマに長野県飯綱町で『エフコネファーム』をスタートしました。
私はもともと農業に興味があり、以前の所属チームでは農家の方の助けも借りつつ、畑を借りて農業を体験させてもらっていました。行くたびに隣の家の方とバーベキューをしたり、地域の人との交流があったりして、同じ様な経験をできる場所をつくりたいというのがスタートになっています。
ーー農業という新しい事業をスタートしたことでの気づきはありましたか?
小池)やはり、活動をしていく上で活動費の問題は生まれてきます。
最初はボランティアでやってるからみたいな気持ちが強かったんですけど、継続して子どもたちに対して何かをする為にはやはり資金が必要だということに気がつきました。今は、パートナーさんや賛助会員さん、グッズの収益などが主な活動費になっていますが、私や関わるメンバーのプロサッカー選手としての収入があるからできているというのも現状です。そうした意味でも、事業性のあることに取り組まないと継続が厳しいと感じています。
ーー農業の事業と、これまで行ってきた児童養護施設への訪問とはどのようなつながりになるのでしょうか?
小池)児童養護施設にいる子どもたちの課題の1つに、18歳までしか施設にいることができず、早くに自立をしなくてはならないということがあります。児童養護施設訪問の活動をスタートさせたときは、私自身こうした課題には気づいておらず、子どもたちが笑顔になるきっかけや夢を持つきっかけを作りたいという想いで活動していました。
取り組んでいくうちにそのような課題に気づいたのと同時に、現状の仕組みでは18歳になったときに十分なサポートが子どもたちにされているかと言うと、難しい部分もあるのではと感じています。
子どもを招待して一緒に収穫体験をするということがまずは最初になりますが、この『エフコネファーム』の事業が成功すれば人手も必要になり、18歳を過ぎた子どもたちを労働者として受け入れることも可能になるのではという想いでチャレンジしているところです。
ーーやはり継続していくことの中心には資金の問題があるということをお二人の話を聞いて感じますね。
選手全員で取り組む「Kids Smile Project」
ーー廣井さんから、ツエーゲン金沢で行われている「Kids Smile Project」について教えていただいてもよろしいですか?
廣井)「Kids Smile Project」では、フードバンクを含めた子どもの貧困をテーマに、養護施設の訪問や、チーム全員での勉強会などの活動をしています。この活動は、緊急事態宣言でサッカーがプレーできなくなったことがきっかけでスタートしました。プロサッカー選手として何ができるのかと考えていたときに、コロナ禍でひとり親や生活困窮者の食材が減っていて、その食材をツエーゲン金沢が寄付しているという新聞記事を見つけました。「何かしたい」と思い、初めは有志の選手、監督、コーチでフードバンクへの寄付活動を始めました。
自分自身も一人の子どもを持つ親として、お腹を空かせている子どもたちがいるのはつらいことだと感じますし、子どもたちにはお腹いっぱいご飯を食べてもらいたいという想いが強くあります。
ーー現在は選手全員がこのプロジェクトに関わり、勉強会に参加されていますよね。
廣井)そうですね。私がいつ引退するか、移籍するのかもわかりませんし、フードバンクを始めた7人の選手がいなくなったあともこのチームとしてしっかり活動を続けていって欲しいという思いがあり、このような選手全員が関わることのできるプロジェクトを立ち上げました。
その中でも、やはり想いの強弱はあると思っています。プロ3年目ぐらいまでの選手はコロナ禍でサッカー選手がスタートしているので、サポーターも含め、外の人と触れ合う機会がほぼありませんでした。そのなかで昨年勉強をして、実際に児童養護施設へ足を運んだ新人の選手たちは感じるものが多くあったようです。「もっとできることがあった」「もっとたくさんの時間を設けていればよかった」など、前向きな意見を言ってくれていました。学ぶと同時に実際に現場に行ってみることがすごく大事なのだと思います。
ーー3人のお話から、活動に対する強い覚悟を感じました。当日はそれぞれの活動をさらに掘り下げてお話を伺っていきます。
▼チケットはこちらから
https://sports-for-social-summit2022summer.peatix.com
▼特設ページはこちら
https://www.sports-for-social.com/summit/
◆Session.2 概要
6月7日(火) 18:00〜18:50
タイトル「貧困や格差問題に対してスポーツができること #こども食堂 #児童養護施設 #フードバンク」
登壇者:
小池 純輝(一般社团法人F-connect代表理事)
水野 勇気(秋田ノーザンハピネッツ株式会社 代表取締役社長)
廣井 友信(現役Jリーガー・ツエーゲン金沢所属)