『アセクシャル(エイセクシュアル・Asexual)』の意味は、「誰かに恋愛感情も性的欲求も抱かない人」のことです。診断テストを受けて自認することも多いとも言われるアセクシャルの意味や特徴、アセクシャルの結婚について解説します。LGBTQという言葉を耳にする機会も増えてきた今、多様に広がるジェンダーやセクシャリティへの理解を深めていきましょう。
「アセクシャル」とは
先程もお伝えした通り、「Aセクシャル」や「無性愛」とも呼ばれる『アセクシャル』の意味は「恋愛感情も性的欲求もない人」です。
しかしこれは「誰も愛せない人」という意味ではありません。アセクシャルは「家族愛」や「友愛」などの感情をもつ人がほとんどで、ただそこに「恋愛」というカテゴリーが存在しないだけなのです。
「友情と恋愛感情の違いがわからない」という違和感を感じていて言葉を知り納得した、あるいは診断テストを受けて自認した、というのがあるあるのようです。
「アセクシャル」は結婚できる?
アセクシャルは結婚願望がないと思われがちですが、実はそうではありません。ゲイの人でも「女性と結婚して家庭を築きたい」という意見があるように、アセクシャルも「結婚して家族は欲しい、でも性行為が前提の一般的な結婚は向いていない」と感じる人は多いようです。
ここで、性愛はなくても友情などの気持ちのつながりで婚姻関係を結ぶ「友情結婚」という言葉を知っていますか?言い換えれば、性行為の無い結婚です。
ビザ目的や金銭目当てなどの「偽装結婚」との違いは、気持ちのつながりがあるかという点であり、そのつながりは “恋愛感情” “性愛感情” に縛られません。近年「友情結婚」は知名度を上げており、専門の結婚相談所も存在します。多種多様なセクシャリティがある中で、自分らしく生きるための選択肢の一つなのです。
アセクシャルは性行為に関して嫌悪感を持つ人がほとんどですが、ただ欲求がないというだけで「相手が喜んでくれるならば」と思っている人もいます。ですので、アセクシャルの人でも性行為を伴うお付き合いをしているなど、人によって多様なあり方が存在します。
ですので、アセクシャルの人に対して「ずっと一人で寂しくないの?」というのは勝手な想像に過ぎません。恋愛感情や性的欲求を抜きにしても、誰かを大切に想ったり、想われたりすることの幸福は、アセクシャルもそうでない人も皆同じなのです。
「ノンセクシャル」との違いは?
アセクシャルと混同されがちなのが「ノンセクシャル(ノンセクシュアル)」です。ノンセクシャルは「恋愛感情は抱くが、性的欲求は抱かない人」のことです。恋愛感情を抱くか抱かないかという点で、この二つのセクシャリティは大きく異なります。
「性行為をしたことがないから、良さが分からないだけだよ」
「相手がかわいそうだ」
このような言葉は、アセクシャルやノンセクシュアルの人を傷つける一言かもしれません。自分とは異なる感情や価値観を尊重するために、まずは多様なセクシャリティの存在を知ることが大切なのです。
編集部より
今回は「アセクシャル」について取り上げましたが、同じアセクシャルの人でも考え方や感情はそれぞれ違います。セクシャリティを分類する言葉はとても有用ですが、そうした “ラベル分け” による偏見や誤解も存在します。LGBTQ当事者に限らず世界中の人々が、人の数だけ違うということを忘れず、目の前の誰かを尊重できることを願っています。