特集

【#女性のコトを考える】働き方を考える~育児休暇と会社のコト~

野村HD

多様になっていく『働き方』。一緒に働くメンバーの働き方をどう理解し、寄り添いますか?

この連載では「#女性のコトを考える」をテーマに、女性だけではなく、男性が“女性”のことを知る・理解するための対談をお届けしています。
今回のテーマは『働き方』です。女性は出産というライフイベントや、育児についても中心的な役割を果たすことが多く、男性の育児休暇の制度も整い始めたものの、その利用率は12.65%(2021年、厚生労働省)と、政府目標に届いていないのが現状です。

日本の企業は、こうした『女性の働き方』についてどう考えているのでしょうか?
1つの事例として、野村ホールディングス株式会社(以下、野村HD)サステナビリティ推進室ダイバーシティ&インクルージョン推進課の大谷英子さん(以下、大谷)と北村裕介さん(以下、北村)にお伺いしました。大谷さんは野村證券株式会社に入社してから30年、2人の娘の出産、子育てを経験しながら現在も働いています。
その話には、1つの会社としてというだけでなく、1人の人間としてどう男女の働き方に向き合えばいいのか、そのヒントが多く隠されていました。

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30年、明らかに変わった「仕事を続ける」価値観

山﨑)大谷さんは、会社勤めを始めて30年とのことですが、この30年で大きく世の中は変わり、特に女性の働き方については多くの議論が繰り返されてきたと思います。
入社したときと今、どう変わったのか、もしくは変わっていないのか、そのあたりをまずはお伺いできますか?

大谷)変わってきたという意味では、もう明らかに変わっていますね。私は一般職という職種で入社しました。
入社して3年ほど経つと、支店のカウンターにいらっしゃったお客様から「そろそろお年頃だからお嫁に行くんじゃない?」などと言われます。
当時すでに、育児休暇なども制度としては整っていました。私自身が子どもを授かったときにはすごく迷いましたが、仕事を続けられる環境がせっかくあったので、そこで続けようと決心したことで今があります。

今では出産して育児休暇に入るのも「普通のこと」として捉えられ、仕事を続けることを前提として話がされるようになっているのは大きく変わった点だと思います。

山﨑)そういった意味では本当に大きく変わっていますね。

女性の育児休暇を受け入れること

山﨑)産休、育休を取得すると、それまでの役職、ポストはどうなるのでしょうか?

大谷)会社としては同じ職種に同レベルで戻す形になっていて、あとは本人の希望によります。
もしリーダーなどの役職の場合には、職場復帰をする際に、同じところに戻るか、同じレベルの仕事に戻る形になります。

山﨑)なるほど。今の時代は移り変わりも早く、1年前と今だと取り組んでいることもトレンドもまったく違う状況になる中で、すんなり戻れるのかな?という点が気になります。

大谷)私自身は2回、約1年ずつ休んで戻っています。山崎さんのおっしゃった不安は、当時の私でも思っていました。「もうついていけないんじゃないか?」って。

山﨑)実際戻られたときはいかがでしたか?

大谷)思っていたよりもすんなりと戻ることができました。ベースとして、もともと仕事をしてきているということは大きかったと思いますし、その中で『わからないことを聞く』ことさえできればあっという間に吸収することができます。聞くことに関しては、育児を通じて復帰するときにあまり引け目を感じなくなっていることも多いです。この点は多くの女性も同様なのではと思います。

山﨑)社内の教える側も、聞かれることに対してウェルカムな雰囲気になるのでしょうか?

大谷)そうですね。育児休暇から復帰する事例が増えて、その人たちをスムーズに戻すために周りがどう対応すればいいのかわかってきていますし、気にならなくなってきていると思いますね。
もちろん、最初からトップギアで仕事に取り組むのは難しいので、リハビリ期間は必要です。そこにやはりサポートしてくれる人への感謝の気持ちを持って取り組むことで乗り越えていくことができますね。

昇進機会が減っても育児から得られるものも

山﨑)ただ、チャンス・機会という意味では、1年間外れてしまうと当然減ってしまうのではないか、とも思います。

大谷)もちろん「チャンスや機会が減ることがまったくない」とは言い切れないですよね、1年いないので。でも仕事の面での成長や昇進機会などとは違いますが、育児の経験、そして育児復帰後の仕事との両立を経験することで人生の価値観というか、考え方や視野について、それまでとは全然違うものが手に入ると思います。

山﨑)なるほど。大谷さんご自身は、どういったものが手に入ったとお考えですか?

大谷)そうですね。私の中で大きなものの1つは、『オンとオフの切り替え』です。会社で働く時間と家の時間、ここを明確に使い分けています。昔は仕事のことで気になって、帰宅したあとや休みの日にも落ち込むことがありました。
ですが、これができなくなります。家に帰るとやることがたくさんあり、スイッチを切り替えなければいけません。これは気分転換にもなり、自分としてもいいことだと考えています。私の場合は、化粧をしたら会社モード、地元の駅の階段を下りたら家モード、という感じでルールを決めて、オンオフの切り替えに取り組んでいました。

『タイムマネジメント』も大きく得られたことの1つです。いかに要領よく、限られた時間の中でやるのかということに注力することになります。働くママさんたちは段取りのいい人が多いです。先回りして準備して、できることは今やって、と。あとは地域の方々とのコミュニケーション』。この3点が私の効果として大きいと思っています。

誰かの力を借り、『対話』による理解を

山﨑)大谷さんのお話を伺っていると、すごく明るくてパワーある方だなと思うのですが、「女性がみんなそんなに頑張れるのか?」ということも一方で思ってしまいます。逆にマネジメント層は『女性の社会進出』という課題を頭に入れているので、子どもを産んでも戻ってきて頑張って!というようなバックアップをする。それが頑張れない女性にはプレッシャーになってしまうこともあるのではないかな?と思っています。その点はどう思われますか?

大谷)女性側の心構えとして、「背負いすぎ」なのではないかなとは思います。仕事においても、子育てにおいても誰かの力を借りることが大事です。いくら熱量と想いはあっても、1人の人間ができることは限られています。そこに対してどのような優先順位で自分が取り組むのかという整理は必要です。肩に力が入って「あっちもこっちも頑張らなきゃ」となってしまっている人もいます。でも私も職場復帰した1年目はそんな感じだったんですよ。

山﨑)なるほど。私としては、「産みなさい」「家のこともやりなさい」「働きなさい」という女性への要望は、負荷がすごくあるものなのではないかと感じていて、そこを男性のマネジメント側の方でわかっていない方も多いでしょうし、まわりにいる男性がどのようなサポートをしていく必要があるのか、という点はすごく気になっています。

大谷)制度面でのサポートは、既にいろいろなものが十分にあります。野村證券でも看護のための休暇制度やお子さんの看病のための休暇制度など、通常の有給休暇以外の特別な休暇として柔軟に使えるものがあります。そういった制度を『使いやすくする』『使える環境を整える』ということが会社としてのサポートではないかと思っています。

あと、マネジメント層がわかっていないという意見もありますが、子育てしたことがない、関わりが薄かった人に対して、その人に今の自分の現状をわかってもらうという『対話』が必要だと思います。今私がどうなっているのか、どんなサポートを必要としているのか。
それは個々に異なります。勝手な思い込みでの過剰な配慮は、仕事への意欲を阻害することになってしまうかもしれないし、その点マネージャーと部下の対話は重要ですよね。

山﨑)なるほど、しっかり聞いてあげることが大事なのですね。

大谷)聞くだけではなく、『対話』としてメッセージを出してあげることも大事です。マネージャーとして「あなたには将来こう働いて欲しい」という思いを伝えることも大事かなと思います。

山﨑)たしかに、対話として状況を聞くこと、求めることを伝えることは大事ですね。今はキャリアだけを考え、いかにチャンスを与えるか、という議論になりがちな気がします。

大谷)会社としても当然ながらこれまで育ててきて、こうあってほしいと期待することはあると思います。対話をしながらその必要なサポートをして、長期目線で育てていくことが重要です。
家庭も充実していなければ、仕事にも大きな影響があります。会社での最高のパフォーマンスを出してもらうには、プライベートの充実も大事です。
『最大の財産は人材である』ということを企業としてもよく言いますが、1年や2年という短期間ではなく、長期的にどう育っていってほしいのか、という思いを込めてサポートしていくっていうことは必要なんじゃないかなって思います。

編集より

『女性の働き方』について、多くの場所で議論がなされています。男性の育児休暇、女性管理職の登用、ジェンダーギャップ指数・・・。

多くのキーワードが出てくる中、その意味や意義について、まだ理解できていないという人もいるのではないでしょうか?野村ホールディングスさんのお話から、女性の働き方に関して考えるきっかけになればと思います。

次回は、男性が感じる『育児』の価値についてお話していきます。是非あわせてお読みください。

女性のコトを考える 野村HD02
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