アランマーレは、秋田・山形・富山の3つの地方で女性スポーツチームを運営し、地域での雇用機会の創出や楽しみの提供を目指しています。アランマーレは、東証プライム上場企業であり、各社のBPOを手掛ける株式会社プレステージ・インターナショナルの企業チームとして創設されました。
玉上進一社長(以下、玉上)は「ゼロからチームを作り上げる」ことに覚悟とこだわりを持って、地域に根付いた活動を展開してきました。女性スポーツ特有の課題やコロナ禍での困難を乗り越えながら、地域と深く結びつき、地方で女性スポーツチームが定着し、強くなることを目指す姿についてインタビューでお話を伺いました。
『地方』×『女性スポーツ』に挑む理由〜地方に雇用と楽しみを〜
ーー2015年から秋田・山形、2016年から富山という地方でスポーツチームを始められた理由を教えて下さい。
玉上)私たちプレステージ・インターナショナルでは、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業を通し、グループ全体で若者が地方に定着し、仕事に就くことを目指してきました。私たちだけでなく県や市など、地方自治体とも同様の志を持って動いてきました。
秋田・山形・富山など、私たちが進出している地域は人口流出が進んでしまっており、一度就職しても若者が定着しづらいという傾向があります。そこで、地域に合ったスポーツチームを作り、“楽しめるコンテンツ”を提供することで、地方においても若者が定着しやすい環境に近づける必要があると考えました。
ーーそうした理由で秋田ではバスケットボール、山形ではバレーボール、富山ではハンドボールと、各地で盛んなスポーツのチームを作ったのですね。すべて女性チームのスポーツというのも何かねらいや想いがあるのですか?
玉上)地方において、女性の定着は非常に重要だと考えています。また、スポーツビジネスは男性スポーツを中心に発展してきましたが、あえて女性スポーツに焦点を当て、会社全体で応援することで発展させていこうというチャレンジの側面もありました。
しかし、女性スポーツ特有の課題など、チーム運営の難しさは日々感じていました。こうした難しさに直面するたびにルール作りを行い、私たちの考えに共感する選手を一人ずつチームに迎え入れる形で、一歩ずつチーム作りを進めてきました。
ゼロから作り上げたアランマーレ|社長の覚悟が生んだ唯一無二の強みとは?
ーー『地方』『女性』という2つのテーマを見てもチーム運営が難しそうな印象を受けるのですが、玉上社長は3つのチーム、女性スポーツに取り組む上で“こだわったこと”はありますか?
玉上)「ゼロから始めて積み上げる」ということです。どこかのチームを事業継承したりすることもスポーツ界ではよくある話だと思うのですが、長期的に取り組む覚悟があるからこそ「どうせならゼロから始めよう」という考えで、すべてのチームをゼロからスタートさせました。
監督を探し、選手を集めるところからスタートすることは大変なことですが、ゼロから始めるということはその過程で“人を育てる”必要があります。アランマーレにおいても「本当にこれでいいのか?」と事業について何度も深く考えてきました。
これは弊社の別事業でも同じなのですが、新規事業においてこうした「ゼロからつくる」プロセスがチームワークを生み出し、組織としての成長につながると私は考えています。単にお金儲けだけを目指すのであればほかのやり方もあるかもしれませんが、一つ一つピースをそろえていくという努力のプロセスがあるからこそ、ぶれることなく、覚悟と想いを持って最後まで取り組むことができるのです。
会社として2003年に秋田県にBPO拠点を初めて開設した際もゼロから社員を集めてスタートした経緯があります。アランマーレ立ち上げにおいても、「ゼロから始めることに意味があるのだ」と株主も含めて納得していただきました。
ーーこのエピソードからも玉上社長の覚悟を感じますね。さらに、ゼロから始められたチームがトップカテゴリーまで昇格していることは本当にすごいですよね。
玉上)「どうせやるなら一番上を目指してやろうよ」ということをスタートのときから旗を揚げてやってきました。そういった高い志を持ってスタートできたことが、2022年度のアランマーレ山形(バレーボール)のV1昇格、SVリーグ参戦などにも繋がったのかなと思います。これからは、トップカテゴリーでいかに勝っていくかが課題ですが。
ーー素晴らしいですね。ただ、上を目指していく中で選手を入れ替えたり、さまざまな難しい事象が出てくるのではないかと思います。そのあたりはどのように考えてきたのでしょうか?
玉上)まっすぐ努力している選手に対して、選手としての評価だけでなく、セカンドキャリアも含めて会社と一体になって考えています。スポーツの世界では、実力主義や結果主義が重視され、ときにはお金で問題を解決することもあります。しかし、私たちは選手やそれを支える人々がその地域に定着し、ともに成長していくことを目指しており、その過程で築かれる人間関係や経験の積み重ねから生まれる歴史を大切にしているので、できるだけチームのメンバーとは一緒にやっていきたいと思っています。
ーー3つのチームそれぞれスポーツは違いますが、地方に定着してチームを作るということはアランマーレに共通する文化ですね。
スポーツがつなぐ地域と子どもの未来
ーーアランマーレと地域は、BPO拠点の運営も含めて非常に強い繋がりがあるのではないかと感じます。
玉上)そうですね。一番わかりやすいところでいうと、アランマーレの壮行会やホームゲームには知事や市長にもお越しいただいています。「アランマーレを応援している」という共通言語によって、地域の横のつながりが増えてきたなと感じますね。プロスポーツチームの運営において、自治体や周辺企業を巻き込んでいくことは必要不可欠なことです。
これからは、今の形に加えて何かプラスアルファで価値を生み出していくことが必要だと思っています。
ーーどのような価値をアランマーレが生み出したいと考えていますか?
玉上)もちろんどのチームも勝利を追い求めてやっていきますし、勝つことで観客が増えてさらに盛り上がることをこれからも目指していきます。それだけでなく、選手の元気なプレーを見て、地域の子どもたちに夢や希望を与えていくことは大切だと思っています。そういう機会を試合だけに限らず増やしていきたいですね。
ーー選手がそういった活動にも積極的に関わっていく印象があります。
玉上)これまでは、多くの選手が会社内で業務を行っていましたが、アランマーレ秋田(バスケットボール)、アランマーレ山形(バレーボール)では選手の役割を変え、アランマーレの選手として社会貢献活動に積極的に取り組むようになりました。具体的には、ビーチクリーンや子ども向けのスポーツ教室・クリニックの運営などです。選手に適した仕事を行えていますし、会社の地域への貢献にもつながっているので、会社にとっても大きなプラスになっています。
アランマーレが目指す未来~地方でも女子チームが強くなれる~
ーー地域とのつながりの中でチームを運営していく方向性の中、コロナ禍は多くのご苦労があったのではないでしょうか?
玉上)対外試合ができないことが本当につらかったです。選手やスタッフの中で一人でもコロナに感染すると試合ができない状況で、目標を見つけることも難しく、多くのストレスを抱えて苦労していました。さらに、試合会場はもともと小さく、選手と観客との距離が近いので、試合が行われると選手と観客に接点が生まれることが当たり前でした。そのため、選手と観客の接点がなくなり、孤独感を感じることもつらかったです。
こうした経験から、地域とのつながりや、応援してくれる人たちへの感謝を忘れず、大切にしていきたいと改めて強く思い直しました。
ーーつらかったコロナ禍を乗りきって、ようやく制限なくいろいろと進めることができるようになったと思うのですが、これからのアランマーレが目指す未来について教えてください。
玉上)経済力が弱い地方でも女性のプロスポーツチームが定着してやっていけるということを証明したいです。さらに、女性のプロスポーツは男子に比べるとまだまだ発展途上なので、女性スポーツの発展にも貢献したいです。
そのために、ファンやスポンサーが増えて、良い選手が育ち、チームとして成長するというサイクルが確立されることが重要です。その結果、冒頭で述べたように若い人たちにとっての楽しみや雇用を地方に創出することができて、地域に定着して人口減の解消にも繋がると思います。
ーーゼロから作り上げられたアランマーレの成長がこれからも楽しみですね。
玉上)そうですね。私たちの会社のチームから、“地域のチーム”にするということを大切にし、これからもアランマーレ全体で一生懸命に取り組んでいきたいです。
ーーありがとうございました。