特集

「地域が一緒に盛り上げる」ダンロップ・スリクソン福島オープンの意義を地域の立場から考えると?

ゴルフ大会主催は、広告宣伝だけではなく、地域振興にもつながる。

もちろん主催する企業側はそう言うだろう。では、実際に地域の人はどう思っているのか?そんなことが気になって、ダンロップ・スリクソン福島オープンの会場であるグランディ那須白河ゴルフクラブにお邪魔し、白河市産業部観光課主任主査兼観光推進係長の十文字政成さん(以下、十文字)にお話を伺いました。

白河市役所 十文字政成さん白河市役所 十文字政成さん

ゴルフの街 白河の魅力を伝えたい

ーー十文字さん、本日はよろしくお願いします。まず、このダンロップ・スリクソン福島オープンには、白河市としてどのような関わり方をしているのか教えてください。

十文字)基本的には後援という形で関わっています。優勝者の副賞として贈呈している白河だるま(白河市の伝統工芸品)を提供したり、市のバスをシャトルバスとして提供したり。陰ながらというか、後方支援のような形で協力させていただいています。

ーー十文字さんのご担当の観光という面ではどう関わられているのでしょうか?

十文字)この大会には福島県県南地域の9市町村が中心となって関わっています。県南地域には、新白河駅を中心にゴルフ場が数多くあり、この地域に来ていただく観光資源の1つとして元々ゴルフを考えていました。このダンロップ・スリクソン福島オープンでは、会場内に観光誘致のためのブースを出させていただいて、観光パンフレットを配るという形で大会の盛り上げに協力させていただいています。(2021年はブース出店は中止)

東北唯一の男子プロゴルフの大会なので、他県からも、白河に来られるため、こういった集客力あるスポーツ大会を通して、福島の県南地域の魅力をどうやって伝えるかということも考えています。

ダンロップ・スリクソン福島オープン多くの福島県の企業が協賛しており、この看板も地元企業の制作(写真提供:住友ゴム工業)

ーー白河市のゴルフの魅力ってどんなものですか?

十文字)私もゴルフをするのですが、リーズナブルで気軽にプレーできるところも人気があるんです。白河の地域では、大会の会場にもなるグランディ那須白河ゴルフクラブが代表的なコースとなっており、春は桜が咲いて秋は紅葉がきれいな、自然豊かなゴルフ場がたくさんあります。

2018年には白河のゴルフの魅力をPRするために、フリーマガジンを作成したりもしました。そのときにも実は地元の企業ということで、白河市内に工場のあるダンロップさんに、工場長と白河市長のゴルフ対談という形で誌面に登場いただきました。今年は隣の那須町との連携でフリーマガジンを発行し、大会観戦シャトルバスの乗客の方々を中心に配布しました。このような形で、この大会を通してたくさんの観光への誘客をさせてもらっています。

バズゴルフ2018年発行のフリーペーパー

『感謝』復興へのメッセージ発信の大きな意味

ーーダンロップさんに、地域への貢献や復興支援ということをこの大会を通して実現するとおっしゃっていただいていますが、行政の立場からこの取り組みに対してどう思われていますか?

十文字)もうただただ感謝だけです。今年は東日本大震災から10年目という区切りの年ですが、震災の記憶が風化してしまわないかという点が心配事になっています。復興もまだまだ途上の段階なので、こうした大会を福島でやっていただけて、プロの方からも震災復興へのメッセージを発信していただけることは本当に大きな意味を持つと感じています。石川遼プロや松山英樹プロにもメッセージを発信していただけて、この大会の持つ意味は非常に大きいです。松山英樹プロからは「なかなかダンロップ・スリクソン福島オープンに出場することはできませんが、アメリカでいいプレーをしてがんばります」といった動画メッセージをいただきました。

松山英樹選手松山英樹選手からも応援メッセ―ジ(写真提供:住友ゴム工業)

地域が『一緒に』盛り上げる

ーーこの大会の特徴として、看板製作などの細かなところでも福島県の地元企業がやる「地産地消」の大会だと伺っています。

十文字)地元の関係者からは非常に喜ばれていますね。看板もそうなのですが、そもそもこうしたスポーツの大きい大会自体が私たちの地域では少ないので、そうした意味で数少ない大きなイベントに協力しよう!という雰囲気もありますし、みなさん毎年待ち望んでいます。

この地域でやるものは、この地域のみんなで支えよう・盛り上げよう、という雰囲気は随所に感じられますね。

ーー十文字さんから見て、この大会に関わる地元の関係者の中でとくに印象的な会社はありますか?

十文字)福島交通さんですね。大会期間中にギャラリーを主要駅から会場まで運ぶシャトルバスの運行、管理などを本当に一生懸命にやってくれています。通常、シャトルバスって並んで待たされたりとかする場面が多いですよね?早く会場に行きたいとか、バスは何分にくるんだとか、クレームが出てもおかしくないと思うんです。でもその点、福島交通さんがお客様への声掛けや誘導など、素晴らしいケアをしてくれて、この大会でそうした苦情はまったくないんです。ちょっとした一言なんですけど、そうすることによってお客様は安心してバスを待っていられるし、本当にプロのおもてなしの仕事だなぁと思っています。

ーー本当に心から協力している感じがしますね。

十文字)そうですね。なかなか会場にはこれない裏方の立場の方々ですけど、大会の成功にはなくてはならない存在です。こうした姿勢でみなさん協力してくださるので、すごく助かるなぁと思いますね。

ーー白河市(県南地域)としてみんなで頑張ろうよ!という雰囲気があるのですね!

大会を通した未来への種まき

ーー白河市として、ゴルフ観光を盛り上げたいということですが、大会期間以外での取り組みはありますか?

十文字)スナッグゴルフ全国大会や全日本小学生ゴルフトーナメントがそれにあたると思っています。ダンロップさんからもジュニア育成のお話がありましたが、スナッグゴルフやゴルフのジュニア大会を通して小学生の頃からゴルフに興味や関心を持つ子ども達が増えてきている印象があります。

スナッグゴルフ全国大会は、県南地域のゴルフ場が舞台となって開催されています。

ーー市としてはどのように関わっているのでしょうか?

十文字)スナッグゴルフの普及活動自体は日本ゴルフツアー機構(JGTO)が中心となっています。私たちとしては全国から集まる子どもたちに東日本大震災のことを学んでいただくため講師を派遣するなどして教育の部分で関わらせてもらっています。またゴルフでは日本女子プロゴルフ協会(LPGA)が中心となって全日本小学生ゴルフトーナメントを開催しています。

ーーもう今の子どもたちだと、震災後に生まれた子や記憶のない子も多くなりますよね。

十文字)そうですね。将来のプロ選手になるたまごたちが、「あ、福島っていつか大会で行ったことある」とか、「こういう話聞いたことある」とか、なにかしら福島とつながりを持っていただければ嬉しいなと思っています。松山選手がメッセージを出してくれているように、将来的に福島のことを気にかけてくれる選手が増えてくれればいいのかなと思い、活動に取り組んでいます。

ーースナッグゴルフをプレーする子どもたちを見ていかがですか?

十文字)すごく楽しそうだし、実際に楽しい!と言いながらやっていますね。スナッグゴルフだと、最初から簡単にボールに当てることができるので、「またやりたい」「もっと広いところでやりたい」という反応になるんです。これは今後、もっと広がっていく可能性があるんだろうなぁと思っています。

スナッグゴルフ2019年スナッグゴルフ体験会の様子(写真提供:住友ゴム工業)

ダンロップさんへの恩返し

ーー大きな工場がある地域であるとは言え、この大会をダンロップさんだけで取り仕切って地元の協力を得るとなると厳しいですもんね。

十文字)2018年に制作したフリーマガジンでは白河市側からダンロップさんと一緒に何かやりたいという思いがきっかけとなりました。そうしたことを考えるくらい、この大会を開催してくださり、続けてくださることへの恩返しができたらという思いがあります。市としての広報活動の中で、1つの企業だけを取り上げるのはなかなか難しいことなのですが、ダンロップさんの場合にはそうした声は一切上がらなかったですね。ダンロップさんの工場長と白河市長の誌面対談でも、工場長が白河ってこういうところなんですってPRしていただいて、逆に市長がゴルフの魅力をPRするような、本来と逆のような内容になっていました。(笑)

地域のボランティアの方も同じような気持ちだと思います。

毎年優勝者に甲冑だるまを副賞として差し上げているのですが、その甲冑だるまを作っている方もボランティアとして会場に来られます。地元の人からすると、子どもが憧れるというより子どもも大人も関係なくプロ選手やプロの大会に憧れて、少しでも関わりたいという気持ちが大きいのだと思います。

ーー今年こういう形で制限がありつつも開催できているのはありがたいですね。

十文字)本当にありがたいですね。今後は新たなステージに変わっていくんだろうなと思っています。今年はコロナ禍でもなんとか続けることができてよかったなと。今後もたくさんの人がこの地域に来るような日になることを信じつつ、市としても新しい形で地域の魅力や観光を打ち出せるように、この大会と一緒になってやっていきたいと思います。

ーーありがとうございました!

白河だるま

編集より

大会2日目には雨天にも見舞われ、ティーグラウンドの白河だるまも避難した今大会。取材の日は見事に晴れ、ゴルフ大会の素晴らしい風景を体験することができました。雄大な自然、1ショット毎に静寂が訪れる緊張感のある雰囲気。これは子どもたちもプロゴルファーに憧れずにはいられないでしょう。

住友ゴム工業株式会社の山本社長のインタビューから、ゴルフ大会協賛への想いを追ってきました。今回の十文字さんのお話を伺うと、地域としてこの大会があることへの感謝をひしひしと感じるとともに、ともに作り上げていこう、地域を盛り上げていこう、という両者の一致した想いを感じることができました。

東日本大震災からの復興という意味でも、この大会のこうした想いが続き、未来の子どもたちへゴルフ大会を通して伝え続けていってほしいです。

十文字さんおすすめの白河ラーメンもいただきました!食べ物もおいしく、自然豊かでゴルフも楽しめる白河地域、また是非訪れたいと思います!

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