JICAのスポーツを通じた社会貢献活動についての連載です。
第一回は、JICAの南スーダンでの取り組みについて、前編・後編と分けて掲載します。
2011年にスーダン共和国から独立を果たし、世界一新しい国として誕生した南スーダン。
しかし、2013年12月に政府軍と副大統領支持派武装勢力との間に衝突が起こり、国内の治安が大きく悪化しました。
それ以降、400万人以上が国内及び国外で難民・避難民になるなど(UNHCR Feb 2019, IOM Feb 2019)、争いが長期化するとともに、暴力が繰り返される中で、民族及び住民間の不信感・憎悪感が助長されました。
今回はこのような状況を変えるべく、南スーダンにて開催された「スポーツ大会の取り組み」について紹介します。
平和への期待と結束の必要性
争いや暴力が繰り返される状況の中、JICAの協力のもと、南スーダン文化・青年・スポーツ省は、第4回全国スポーツ大会「国民結束の日」を開催しました。
大会は、南スーダンの首都ジュバにおいて、2019年1月26日から2月3日の9日間にわたり、「平和と社会的結束」のスローガンのもと開催されました。
国民の交流、友好と結束を促進し、市民レベルからの平和と社会的結束を後押しするべく、JICAはこの大会の開催を2016年の第1回大会から継続して協力しています。
本大会では、前回に比べて支援の輪が更に広がり、国連機関(UNMISS,UNDP,IOM, UNAIDS)や他国政府(スイス開発協力庁)、民間企業など、12の機関・団体が大会の趣旨に賛同し、資金や物資調達の協力がなされました。
大会には、全国から事前予選及び選考プロセスを経て選抜された、300人を超える20歳以下のアスリートが、男子サッカー・女子バレーボール・男女陸上で、フェアプレーの精神と共に日頃の練習の成果を披露し、熱い試合を繰り広げました。
選手の選考に関しては、公平・公正で透明性のある選抜を目指し、同国の治安の影響で制約はあるものの、全国からより包括的に選手が参加し活躍できるよう、スポーツ省と各地方政府とともにプロセスを進めました。
平和の担い手を育成
開会式と閉会式では、若きアスリートたちが平和への祈りや結束の必要性など、それぞれの思いを込めたメッセージボードを掲げて入場行進しました。
また大会期間中には、全国から集まった民族背景の違う人たちが交流を深め、信頼を構築するとともに、地元コミュニティに戻った後に「平和の大使」として活躍できるように、平和構築ワークショップやジェンダー・HIV/AIDS関係の啓発活動も行いました。
また、コミュニティに平和と結束を呼びかける事前イベントを3回開催し、大会期間中及び前後には、南スーダンの公営テレビ放送やラジオ局を通じて平和へのメッセージを全国に広げました。
選手からは、「スポーツを介してそれぞれの違いを忘れることができ、平和と結束のために共に学ぶことができた」、「民族・部族の違いに関係なく友だちを作れた経験を、地元に帰ってコミュニティで広めたい。
それが南スーダンの平和に繋がると信じている」との声が聴かれました。それぞれの地元に戻って、スポーツを通じた平和構築活動を自ら進めたいとの声も多く、大会を通して、アスリートたちの平和と融和に向けた姿勢が育まれました。
後編へ続く https://sports-for-social.com/?p=304
◼️出典元:『平和の担い手を育む:第4回南スーダン全国スポーツ大会「国民結束の日」』)https://www.jica.go.jp/south_sudan/office/information/event/190320.html
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