私たちの想い

平和の担い手を育む〜JICAのスポーツを通じた途上国支援〜 後編

JICAのスポーツを通じた社会貢献活動についての連載です。
第一回は、JICAの南スーダンでの取り組みについて、前編・後編と分けて掲載します。
今回は、後編になります。

平和の担い手を育む〜JICAのスポーツを通じた途上国支援〜 前編衝突が起こり400万人以上が国内及び国外で難民・避難民になるなど、争いが長期化するとともに、暴力が繰り返される南スーダン。このような状況を変えるべく開催された「スポーツ大会の取り組み」について紹介する。...

2011年にスーダン共和国から独立を果たし、世界一新しい国として誕生した南スーダン。
しかし、2013年12月に政府軍と副大統領支持派武装勢力との間に衝突が起こり、国内の治安が大きく悪化しました。

それ以降、400万人以上が国内及び国外で難民・避難民になるなど(UNHCR Feb 2019, IOM Feb 2019)、争いが長期化するとともに、暴力が繰り返される中で、民族及び住民間の不信感・憎悪感が助長されました。

今回はこのような状況を変えるべく、南スーダンにて開催された「スポーツ大会の取り組み」について紹介します。

市民に浸透してきた「国民結束の日」の意味

ラジオ、テレビやSNSで大会の開催を告知すると、多くの市民から歓迎の意が伝えられ、大会と事前イベントを合わせると延べ約5万5千人もの人々が大会会場に詰め掛けました。経済状況の厳しい南スーダンにおいてこのような大規模の全国大会が行われる機会は他にありません。

スポーツ省のエドワード担当局長は、「継続して毎年この大会を開いていることで、ジュバや他の地域において国民結束の日の認知度は年々上がってきている。多くの人が、同大会に選手・スタッフもしくは観客として参加し、その体験を自分たちのコミュニティに持ち帰ることで、平和に向けた国民の姿勢を育み、結託し、平和への文化を創り出すことができる」と話します。

大会に訪れた観客へのアンケートからも、「この大会は社会的に意味があり、スポーツを通じて平和を促進できる」、「スポーツは文化・民族・性別を超えて共に成長できる大いなる可能性がある」などの、大会の意義を理解する声が多く聞かれました。子どもから大人まで、異なった部族・民族、出身地の人たちが一堂に会し、平和に向け結束した雰囲気のもとスポーツを楽しみました。

JICA_スポーツ大会

女性の活躍の場を広げる

スポーツは平和へのメッセージを伝える場になるとともに、ジェンダー主流化を促進する場にもなります。大会では、昨年に引き続きバレーボールや陸上の種目で女性の参加を促しました。南スーダンにおいては、女性が活躍する場は男性に比べて少ないですが、国民的スポーツ大会において、女性アスリートが活躍することによって、社会には「男性だけではなく、女性も参加するもの」という考えを広げることに一役買います。

身長や身体能力に恵まれている南スーダンの人々には、スポーツにおいて、男女ともに世界で活躍できる大いなる可能性があります。同大会をきっかけに、女性の競技人口が増えるとともに、世界で活躍する女性アスリートが現れると、南スーダン全土においてさらに女性の活躍の場が広がるでしょう。

来年度の大会開催に向けて、スポーツ省はさらに女性の参加人数を増やすことを目標としています。また、女性の活躍及び啓発の場を増やすことにより、性暴力や早期結婚・出産、女性の就学率の低さなどの社会問題の解決に貢献していくこともスポーツ省の目標です。

JICA_スポーツ大会

大会のその後

まだ大会を開催してから間もないですが、大会の後に参加アスリートたちからいくつか嬉しい報告が届いています。

まずは、陸上競技に参加した陸上選手4人が、ジブチ、ウガンダやタンザニアなど他のアフリカの国で行われる国際大会に招待されました。大会が平和と結束を促進するものであるとともに、才能のあるアスリートたちが世界に羽ばたくきっかけとなってきています。
南スーダン選手が2020年東京オリンピックに参加する可能性もあり、平和への期待と共にオリンピックムーブメントの高まりも感じられます。

また、大会で得た繋がりを元に、UNMISS保護下のジュバの避難民保護区域(以下「保護区域」)に暮らす若者が、保護区域を出て地元のサッカーチームに加わったりと、民族や出自に関わらず、異なった背景を持つ人々と共に同じチームでスポーツを楽しむようになりました。

今後も多数の関係者と共に、これらの大会の良い影響をさらに全国に浸透させるべく、大会及びスポーツを通じた平和促進事業の改善に向け、スポーツ省と共に取り組んでいきます。

JICA_スポーツ大会

◼️出典元:『平和の担い手を育む:第4回南スーダン全国スポーツ大会「国民結束の日」』)https://www.jica.go.jp/south_sudan/office/information/event/190320.html

◼️JICAとは?

独立行政法人国際協力機構(JICA/ジャイカ)は、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行っています。

JICAは、人々が明るい未来を信じ多様な可能性を追求できる、自由で平和かつ豊かな世界を希求し、パートナーと手を携えて、『信頼で世界つなぐ』というビジョンの下、活動しています。

スポーツとも強い繋がりを持ち、JICA青年海外協力隊事業などを通じて、開発途上国の個人や集団が持つ能力を高めたり、生活をより健康で豊かにするための協力を行っています。

◼️JICAについて
https://www.jica.go.jp/index.html

◼️「スポーツと開発」事業について
https://www.jica.go.jp/activities/issues/sports/index.html

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