『ベジタリアン』とは、19世紀頃にイギリスで使われるようになった「健全な、新たな、元気のある」という意味の言葉です。ベジタリアンと似た言葉として、『ビーガン』という言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。
今回は、ベジタリアンとは何なのか、ビーガンとの違いや、ベジタリアンの中にも多く存在する種類などについて解説していきます。
ベジタリアンとは?
『ベジタリアン』とは、肉や魚介類などの動物性食品を食べず、野菜などの植物性食品を食べる人のことです。日本では『菜食主義者』とよばれています。起源は、産業革命中(19世紀)のイギリス・マンチェスターの聖書教会の会員が行った、肉や魚、卵製品、乳製品を食べず、「野菜・豆類・穀物」などの植物性食品を中心にした食生活を行う運動とされています。(卵製品、乳製品は本人の判断に任せられていました。)
ベジタリアンの定義する植物性食品には、野菜だけでなく、豆類や穀物も含まれています。
ベジタリアンになる理由・動機
近年、さまざまなきっかけでベジタリアンになる人が増加してきています。なぜ人々はベジタリアンになるのか?一度ベジタリアンになる理由・動機を整理してみましょう。
宗教
日本では馴染みの薄い宗教ですが、世界には菜食主義を奨励している宗教が存在しています。代表的なものにはヒンドゥー教とジャイナ教があります。いずれもインド発祥の宗教で、ヒンドゥー教では牛が神聖な動物とされ、牛肉を食べないという背景も影響しています。
健康
「ベジタリアンでいることは健康に良い」と言われていることも理由の1つとされています。がん、高血圧、糖尿病、肥満などの生活習慣病や認知症などを引き起こすリスクが減少するという研究結果も報告されています。
しかし、食生活が極端になってしまうことから、かえって健康に良くないという考えも指摘されており、一概に健康に良いとは言い切れません。
環境保護
SDGs(持続可能な開発目標)の考えが広がっている現在、ベジタリアンであることも地球環境の問題解決に効果があると考えられています。肉の消費量を減らすことが畜産業界の二酸化炭素(CO₂)、メタンガス(CH₄)の排出、輸送における大量の二酸化炭素・メタンガスの排出、放牧のための伐採による森林破壊、糞尿の不適正処理による水源汚染を抑制することにつながると考えられています。
動物愛護
肉や魚介類を食べることは、動物愛護の考えに反するということもベジタリアンになる理由の1つです。ペットを飼い始めたことがきっかけでベジタリアンになるという人もいるそうです。
ベジタリアンとビーガンの違い
ベジタリアンと近い言葉として、『ビーガン』という言葉があります。ベジタリアンは、定義として卵製品と乳製品を食べるか食べないかが本人の判断にゆだねられていますが、『ビーガン』は肉や魚介類のほか、卵製品や乳製品、蜂蜜を含めた動物性食品を一切口にしない人のことを指しています。これを日本では「完全菜食主義者」とよんでいます。
ビーガンの人のなかには、肉や魚介類などの食品だけでなく、衣類や生活用品も動物性のものを使わない人もいます。
ニュアンスとしては「ベジタリアン」よりも「ビーガン」の方がより強い表現ということになります。
ベジタリアンの種類
ベジタリアンは、卵製品と乳製品を食べるかどうかは本人の判断に任せられています。つまり、ベジタリアンにはいくつかの種類に分けられているということです。
ベジタリアンの種類について、内容も含めて解説していきたいと思います。
ベジタリアンの種類
- ラクト・ベジタリアン (ラクト=乳【ラテン語】)
肉や魚介類、卵は食べず、植物性食品と牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品を食べる人のことです。 - オボ・ベジタリアン (オボ=卵【ラテン語】)
肉や魚介類、乳製品は食べず、植物性食品と卵製品を食べる人のことです。 - ラクト・オボベジタリアン
肉や魚介類を食べず、植物性食品と卵製品・乳製品を食べる人のことです。 - ポーヨー・ベジタリアン (ポーヨー=鶏肉【スペイン語】)
植物性食品と魚介類、卵製品、乳製品、鶏肉を食べる人のことです。鶏肉以外の肉は食べません。 - ペスコ・ベジタリアン (別名:ぺスカタリアン =魚【イタリア語】)
肉を食べず、植物性食品と卵製品、乳製品、魚介類を食べる人のことです。 - オリエンタル・ベジタリアン(オリエンタル=オリエント[東洋]の形容詞的表現)
基本的には「ビーガン」と同じで、肉や魚貝類のほか、卵製品や乳製品、蜂蜜などの動物性食品を一切食べません。違いは、五葷(ごくん)とよばれる、匂いが強くて、精力をつけるといわれる野菜をを食べない人の事です。五葷には例えば、にら、にんにく、ねぎ、らっきょう、あさつきなどがあります。 - セミ・ベジタリアン
日本語では「準菜食主義者」とよばれています。セミ・ベジタリアンの「セミ」はラテン語で「半分」という意味で、基本的には植物性食品を食べますが、ある程度であれば動物性食品を食べる人のことです。自由にということではなく、ある程度の制限を必要としており、その時々の柔軟な判断が求められることから、「フレキシリタン」とよばれることもあります。
ビーガンの種類
ベジタリアンよりも厳格で、「完全菜食主義者」とも呼ばれるビーガンの中にも種類があります。
- フルータリアン
日本では「果実常食者」とよばれています。フルータリアンの「フルー」は、「フルーツ」のことです。フルータリアンは肉や魚介類、卵製品、乳製品、植物性食品を食べず、果実・種子類を食べる人のことです。植物性食品も食べないことから「ビーガン」よりも厳格な「菜食主義者」ともいわれています。 - ロー・ビーガン (ロー=生[なま] 【英語】)
「ビーガン」と同じく肉や魚貝類のほか、卵製品や乳製品、蜂蜜などの動物性食品を一切食べません。では何が違うのかというと、「ロー・ビーガン」は基本的には生のものを食べる人のことです。また火を通すとしても、口にする食べ物は基本的に46度以上には加熱しません。
ベジタリアンの今後
現在、「ベジタリアン」の概念はその注目度が上がってきています。背景としては環境問題や食糧問題などの社会問題があります。これらの問題を解決するために、個人でも実行できる行動として「ベジタリアン」は今後もますます注目されていくと思われます。
実際の動きとして、ベジタリアンやビーガン(完全菜食主義者)向けの食品に適合する日本農林規格(JAS)の新設を目指す農林水産省や東京都、NPO法人「日本ベジタリアン協会」などでつくるプロジェクトチームが立ち上がるなどしております。
現在では、このプロジェクトチームに、小売り大手企業も加わり、今後、「ベジタリアン」や「ビーガン」の食品や料理がより近くに感じるようになり、多くの人に広がっていくことが予想されます。
(日本ベジタリアン協会:https://www.jpvs.org/menu-info/)