『バイオミミクリー』とは自然界の仕組みから学んだことを技術開発に活かすことをいい、別名『生物模倣』とも呼ばれています。
「バイオ(Bio)」は生物、「ミミクリー(Mimicry)」が模倣を意味しており、これらを合わせてできた言葉が『バイオミミクリー』です。近年では大学でバイオミミクリーについての授業が行われたりなど、広がりつつ考え方でもあります。そこで今回は『バイオミミクリー』が実際にどのように活かされているのかについてわかりやすく説明していきます。
バイオミミクリーとは
『バイオミミクリー』とは自然界の仕組みから学んだことを技術開発に活かすことをいいます。直訳すると『生物模倣』と訳されます。「模倣」とは既に存在しているものをマネをするという意味であり、「生物」をもとに模倣(マネ)したものをバイオミミクリー(生物模倣)といいます。
実は私たちは、普段の生活でバイオミミクリーの考えによって生み出されたものを活用しています。しかし、このことを詳しく理解している人は多くありません。バイオミミクリーによって実際にどのようなものが作られ、私たちの生活がどのように豊かになっているのでしょうか。
バイオミミクリーの実践例
実際にどの生物のどの部分を模倣(マネ)して、何が作られたのかについていくつか例を挙げて説明していきます。
新幹線 – カワセミのくちばし
新幹線の先頭形状は、「カワセミのくちばし」を元に作られました。新幹線は高速で走行するため空気抵抗を受けやすく、その騒音が問題になっていました。そのため、空気抵抗を受けにくくしようと「カワセミのくちばし」を模倣した形状を先頭部分に採用しました。カワセミは餌を取る時に水中に飛び込みますが、その時に水しぶきがほとんど飛び散らない特徴があります。この特徴を元に500系新幹線では、空気抵抗を受けにくくし、騒音問題を解消することができたのです。
マジックテープ – オナモミの実
身近にあるものでは、「オナモミの実」を模倣して作られた「マジックテープ」があります。オナモミの実の先端のフック状の繊維を元に、マジックテープという何度も貼ったり剥がしたりできるものが作られました。
ヨーグルトが付かない蓋 – ハスの葉
「ヨーグルトの蓋」は「ハスの葉の水をはじく構造」を模倣し、ヨーグルトが蓋につかないような作りになっています。
テニスラケット – サメの鱗
「テニスラケット」の構造は、サメの「抵抗を低減する鱗」を模倣しているため、最大限、空気抵抗を受けないような作りになっています。
これらは実践例の一部です。
このほかにもたくさんの『バイオミミクリー/生物模倣』が私たちの世界には存在しています。
バイオミミクリー建築
バイオミミクリーの考えは建築にも大きく影響を与えています。
デザイナーが新たなアイデアを思い浮かべるために、さまざまな写真やWEBサイトを参考にすることも多いですが、そのなかにも生物の特徴を参考にすることも多くあります。
バイオミミクリーの考えを活用して作られた建造物の例としては、フランスのパリにある『エッフェル塔』があります。
エッフェル塔の構造は人間の大腿骨(だいたいこつ)を模倣して設計されたといわれています。人間の大腿骨は、疲労を散らす補強構造になっており、加えて骨は網目状の骨梁からなる海綿質になっていることから、強度も高く、軽量化を実現する大きなヒントとなりました。
世界的に有名な建造物が私たち人間の構造が元となって造られたことを知ると、どこか不思議な気持ちになりますね。
バイオミミクリーのこれから
バイオミミクリーについて知ることができたでしょうか。これまでの説明から、「バイオミミクリー」は実は昔から存在していて、私たちにとっても身近なものだということが理解できたのではないでしょうか。
近年はSDGs(持続可能な開発目標)の考えが求められていますが、バイオミミクリーの考えはSDGsにも通じるものです。そのため大学の授業で取り扱ったり、研究室のテーマとしてもバイオミミクリーが扱われています。これからの世界のためにも、老若男女問わずに『バイオミミクリー』の考えが広がっていくことを期待したいですね。