スポーツ

大学生が若い感性で届ける!ユニフォームから始まる「サッカー×ファッションの新たな未来」

2025年。新年を迎え、Jリーグ各チームの新体制発表が行われ、新シーズンの練習が開始されました。この時期には、新しく入団したメンバーの顔ぶれとともに、新しい“ユニフォーム”にもサポーターの関心が集まります。昨シーズンとは一味違うデザインに心躍る各チームサポーターの声がSNSにあふれる一方で、毎年この時期になると「これまで着ていたユニフォームはどうしようかな?」という思いが頭の中を巡る方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そんな疑問に“新しい答え”や“新しい価値”を投げかけてくれるイベントが、大学生の手によってオフシーズンに行なわれました。

『Uni-Formless Show~学生が紡ぐ、サッカー×ファッションの新たな可能性~』と称する新しい提案型のファッションショー。主催したのは上智大学公認学生団体「シャクル」。大学生の若い感性で、新たな価値を芽吹かせるというフレッシュかつ意義深い活動は、いったいどんな取り組みなのでしょうか?

デフリンピック
アスリートにも負けない、デフリンピックにかける情熱~筑波技術大学学生によるエンブレム制作~2025年に東京開催が決まった聴覚障がい者のスポーツの祭典、デフリンピック。そのエンブレム制作を担当するのは、筑波技術大学に通う学生です。 筑波技術大学は、世界でも珍しい聴覚障がい者、視覚障がい者向けの4年制大学であり、これまでも多くの方が学び、社会で活躍しています。 世界的な大会のエンブレムを制作できる貴重な機会に、デザインを学びながら自らも聴覚障がいの当事者として生活する学生たちはどんなメッセージを込めるのか? 筑波技術大学総合デザイン学科4年 多田伊吹さん(以下、多田)に、これまでの人生やデフスポーツについての話も絡めながら伺いました。...

上智大学公認学生団体「シャクル」とは?

「サッカーの1つの象徴であるユニフォームを軸にサッカーへの情熱や想いを新たな形で世に伝え、ユニフォームの可能性を広げる。」という目的のもとに、上智大学キャンパス内でファッションショーが開催されました。

毎シーズン新しいデザインに刷新されるユニフォーム。売れ残ってしまったものや、何年もサポーターの手元にたまっていったものに新たな価値を吹き込むこの活動は、サステナブルな視点でも重要な意味を持ちます。

今回は、ユニフォームファッションショーの意義、シャクルの活動について、上智大学公認学生団体シャクルの前代表の長谷川陽大さん(以下、長谷川)、新代表の金子葵さん(以下、金子)へのインタビュー、イベントの取材をさせていただきました。

ーーまずは「シャクル」についてお聞かせください。

金子)シャクルは社会課題や共通のテーマに、地域の人・企業や団体・自治体・学校などと提携して、Jリーグ・Jクラブが取り組む「シャレン!(社会連携活動)」の活動ビジョンに共感して、共生社会のためのさまざまな活動に取り組んでいる上智大学の公認学生団体です。

シャクルの主な活動としては、ウォーキングサッカー、講演会、マネーリテラシースクールなどのイベント開催、サッカークラブやその他企業と連携しながらのシャレン活動といったさまざまな取り組みを行なっています。

ーーちなみに、金子さんは大学入学前からシャクルの存在を知っていたのですか?

金子)入学するまで、まったく知りませんでした。

どのサークルに入ろうか考える中で、「サッカーとボランティアという組み合わせがおもしろくて、他にあまりないな」と思ったこと。あとは私自身がスポーツ観戦をとても好きなこともあって、直感的にピンときました!

ーー普段はどのような活動をしているのか聞かせてください。

金子)シャクルにはさまざまな部門があり、2024年度はウォーキングサッカー部門や私が所属するマネーリテラシースクール部門など、6部門に分かれて活動しました。先輩方から引き継いだ活動もありますが、毎年のようにメンバーで内容のブラッシュアップを重ねながら進めています。普段は部門ごとの活動が中心ですが、今日のファッションショーは全部門のメンバーが総出で行なっています。

シャルク1シャクル新代表の金子葵さん

ユニフォームの可能性を広げる新しい提案の誕生秘話

ーー今回のファッションショーは前代表の長谷川さんが企画されたと伺いました。どんなきっかけからこの素晴らしい企画が生まれたのでしょうか?

長谷川)今年度の活動の中で1つ大きなイベントにチャレンジしたいねという話をしていたので、今回の企画が形になって嬉しく思っています。

直接的な企画のきっかけとなったのは、シャクルのユニフォームを春先に作ったことです。その制作過程で、あらためてユニフォームの意味、価値というものを再認識しました。最近だとファッションのトレンドとしてユニフォームを着たり、サッカーを知らない人が普段着使いで着ていたり。

サッカー好きのサポーターの人たちは、日常着として着ていたり、好きで応援していることを表現している。そんなことをいろいろと考えていくうちに、課題も見えてきました。クラブチームは、シーズンごとにユニフォームのデザインを新しくして販売しています。そうすると、前のシーズンのユニフォームが売れ残ったら廃棄するしかありません。さらに、サポーターの人たちは新しいユニフォームを買うので、それまでのものはクローゼットに眠っているといった課題です。

そこで、クローゼットに眠っていたものや廃棄されるユニフォームに新しい価値を見出せないかなと、みんなで考え始めました。例えば、普段着使いのファッションアイテムにするとか、リメイクして自己表現に活かすとか。

そうやってイベントの形がだんだんでき上がっていきました。

ーー長谷川さんからはユニフォームについてもそうですが、何より「サッカーへの熱量」を感じますね?

長谷川)僕は静岡県出身で、父と兄とともにサッカー漬けの日々を過ごしてきました。大学ではプレーはしていないのですが、プレーの価値以上のものを届けていきたくて、シャクルの活動を続けています。

今はドイツ語学科にいるのですが、地元出身の長谷部誠選手の影響が大きいです。体験ブースのコーナーに展示してあるユニフォームは、それぞれが日常使いとしてスタイリングした写真を添えています。長谷部選手の直筆サインをもらったユニフォームもあるので探してみてください(笑)。

ーー今、体験ブースというお話も出ましたが、どのようなイベントになっていますか?

長谷川)『Uni-Formless Show』は、2部構成のファッションショーと体験ブース&展示コーナーを用意しています。1部テーマは「ユニフォームを普段着に」として、サッカー観戦はもちろんですが、普段着のアイテムとしてのコーディネートを提案します。

スペシャルゲストに元プロサッカー選手で、解説者として活躍中の林陵平さんをお招きしました。「元Jリーガーの視点で語る、ユニフォームとサッカーの魅力」と称して、トークセッションを行ないます。

2部のテーマは「ユニフォームの新しい物語」。不要になったものやクローゼットに眠るユニフォーム。持ち主ゆかりのエピソードを活かしてリメイクし、物語性のあるユニフォームファッションショーを行います。

ーー体験型ブースもあるんですね?

長谷川)そうですね。フットゴルフ、ユニフォーム展示、フォトブース、編み込みブレスレット作りなどもあるので、ぜひ、ファッションショーの合間に体験してみてください!それでは、トークセッションの準備に行ってきます。

不要になった衣類をアップサイクルして、オリジナルのブレスレット作りに挑戦!

長谷川さんにご案内頂き、メイン会場のイベント前に体験型ブースで、編み込みブレスレット作りを体験してみました。好きな色を選んで、シャクルのメンバーがレクチャーしてくれた通りに、編み込み、いい感じに仕上がりました。同じテーブルで製作していたみなさんの作品も見せていただきました。

新しい価値に触れられる体験に!

最初に手渡されたのは、細長い紐状に加工された「不要になった衣類」。ていねいに編み込んで完成したブレスレットには、なんだか愛着が湧いてきました。みなさん素敵な表情で作っていたのが印象的でした。

シャルク2編み込みブレスレットのレクチャーをするシャクルのメンバー
シャルク3手作りで、アップサイクルを体験。リストバンド完成!

ユニフォーム展示では、先ほどの長谷部誠選手のユニフォームのコーディネートもチェックして、いよいよメイン会場へ。

シャルク4長谷部選手のユニフォームを日常使いにコーディネートした展示

提案型の新しいユニフォームファッションショーが開幕!

観客のみなさんの拍手の後、スペシャルゲストの林陵平さんが登場。トークショーから幕を開けました。選手時代のエピソード、ユニフォームにまつわる思いやこだわりについて語られていきました。解説者らしいキレの良い語りに、会場のみなさんも引き込まれていきました。

ユニフォーム交換の話になり、林陵平さんが手元で見せたのは、世界トップレベルで活躍するネイマール選手のユニフォームでした。観客がどよめき、ファッションショーに向けて、一気に盛り上がりを見せました。

シャルク5企画発案者の長谷川さん(左)とゲスト林陵平さん(右)

続いておこなわれたのは「ユニフォームを普段着に」というテーマのファッションショー。サッカー観戦で応援しているチームの「ユニフォームを着る」ことはもちろんですが、今回は、普段着のコーディネートにユニフォームを取り入れることで、「普段着としてのユニフォームの着こなし」を提案しています。上智大学チアリーディング部の学生さんが、さまざまなチームのユニフォームを着こなし、素晴らしいチアダンスも披露して、ショーを盛り上げます。
こうしたコーディネートを通して、サッカーやユニフォームをより身近な存在に感じてもらえるような工夫をこらしていました。

シャルク6それぞれの自分らしさをユニフォーム・コーディネートで表現しながら歩く

1部と2部の幕間には映像作品も上映

今回、2部でリメイクを行なった東京家政大学の服飾デザイン系の学生さんとユニフォーム提供者との対談、リメイクの作成過程が映像で上映されました。ユニフォームと提供者の物語。そのストーリーからインスピレーションを受けた東京家政大学の学生さんが、それぞれのストーリー、ユニフォーム、提供者、そして、クラブへの敬意を汲み取りながらのリメイクが完成するまでのお話に触れることとなりました。

いよいよ映像から飛び出して、2部のファッションショーがスタート。テーマは「ユニフォームの新しい物語」。使えなくなったもの、不要になったユニフォームが、ゆかりのストーリーを大切にしたリメイクされたファッションアイテムとなって、姿を現しました。

パンツスタイル、セットアップ、スカート、スタイリッシュなシャツなど、さまざまな装いに変身して、生き生きとしたアイテムとなって、新しい輝きを放っているように感じられました。

シャルク7さまざまなスタイルにリメイクされたユニフォームに身を包む

若い視点から見た、サッカー×ファッションの新しい未来

ショーを終えると、会場全体の空気感はあたたかく、シャクルのメンバーは明るい笑顔に満ちあふれていました。

今回のショーは、ユニフォームを真ん中に、サッカーとファッション、ユニフォームとファッション、サッカーを好きな人と知らない人との間において、新しい未来を指し示す一歩となったのではないでしょうか。

Jリーグ各チームでも、毎年デザイン刷新されるユニフォームが「売れ残った場合にどうするか?」といったことは課題の一つであるため、様々な工夫をすでに始めています。前年売上などを分析したり、背番号追加オプションのある受注生産といった工夫をしています。しかしながら、新しいシーズンごとに、新デザインのユニフォームを展開していくために、毎年の課題は続いていくものと想定されます。
余剰のユニフォームや手元に増えていくユニフォームの行く末に、リサイクル、リユースの新しい方向性を指し示す可能性を感じました。

シャクルのみなさん主導で行われたサスティナブルな取り組みから、リユースのしくみが構築される可能性もあり、スポーツ界を上げて大きなヒントにつながることを期待しています。

ーー上智大学公認学生団体「シャクル」のみなさん、ありがとうございました!

シャルク8上智大学公認学生団体シャクル、ショーに登場したみなさん
サッカーから学んだ“本気”の楽しさを伝える ~RB大宮アルディージャ濱田水輝選手が挑むキャリア教育~「何かに本気で取り組むことの素晴らしさを伝えたい」と語るのは、今季J3を制し、J2昇格を果たした大宮アルディージャに所属する濱田水輝選手(以下「濱田」)。濱田選手は、現役のJリーガーとして競技に取り組むだけでなく、セカンドキャリアを見据えた活動にも力を入れています。今年の10月には、クラーク記念国際高等学校さいたまキャンパスの高校生を対象にキャリア授業を実施しました。 今回は、現役Jリーガーである濱田選手が、なぜセカンドキャリアを見据え、高校生への授業に取り組まれたのか、その理由や想いについて伺いました。...
ユニタビ
サッカー観戦“だけじゃない”1日をユニタビ×藤枝から!|Jリーグ観戦レポートサッカーの試合を観るだけがサッカー観戦じゃないーー。 シーズン中、約2週間に1度のペースで訪れる地元サッカーチームのホームゲーム。地方...
verblitz
パートナー企業と取り組む『プラコップリニューアルプロジェクト』|ラグビー・トヨタヴェルブリッツの取り組みの裏側をインタビューラグビー リーグワンに所属するトヨタヴェルブリッツでは、2022-23シーズンよりホストゲームで使用したプラスチックコップを回収し、シー...
茨城県古河市の建設会社が avex ダンスチームのユニフォームスポンサーになった理由日本発・ダンスのプロリーグ『Dリーグ』。サッカー人口をも上回るといわれる国内ダンス人口(600万人)は、これから先若者世代を中心に大きな...

写真提供:上智大学公認学生団体「シャクル」

RELATED POST

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA