3月1日から始まった2022年シャレン!アウォーズの投票も3月15日で締切を迎えます。
Sports for Socialではシャレン!アウォーズ特集として「シャレン!ってなに?」「2021年度受賞クラブトーク!」を掲載してきました。
第三弾となる今回はJクラブと協働している企業の想いを軸に、Jクラブと企業が共にシャレン!活動を行う意義についてお話を伺います。
「シャレン!って言っているのはクラブだけなのでは?」
「企業から見てシャレン!の取り組みってどんな価値があるの?」
そんなことを少しでも考えたことはないでしょうか?
今回は、実際にシャレン!活動を行った企業さんからお話を聞き、Jクラブ・地域との協業、それを起点とした社会貢献に対する想いを伺います。
お話を伺った皆様
<株式会社NTTドコモ>
コンテンツビジネス部 スポーツ&ライブビジネス推進室 パートナー協創担当課長
田中洋市さん(以下、田中)
<鹿島アントラーズ>
マーケティングディビジョン 地域社会連携グループ DMO兼務チーム
堀之内寛さん(以下、堀之内)
マーケティングディビジョン パートナーグループ パートナーセールスチーム
福島顕さん(以下、福島)
通信技術を用いて、スタジアムの雰囲気を届けたい
ーー2020年のシャレン!アウォーズに『特別支援学校でのサッカービューイング』という内容でエントリーされていた、NTTドコモさんと鹿島アントラーズさんにお話を伺います。まずドコモの田中さんから、活動の概要を教えていただけますか?
田中)カシマスタジアムから約3km離れたところに鹿島特別支援学校があります。そちらの子どもたちは、「サッカー観戦に関心があってもいろいろな不安からスタジアムに足を運びづらい」という課題を抱えていました。「子どもたちにアントラーズの試合の面白さや高揚感を届けたい!」という想いで、鹿島アントラーズさん、地域の方々とこの活動を企画し、実行しました。ドコモの通信技術を用いて、学校にいながら子どもたちにスタジアム体験を届け、保護者も含めた特別支援学校の皆さまに楽しんでいただきました。
ーー活動のきっかけはどのようなことでしたか?
田中)私たちは2019年に鹿島アントラーズのパートナーになりました。NTTドコモの5Gネットワークなどの技術を使うことで試合観戦の満足度がさらに高まるようにと思い提携しました。特別支援学校に通う子どもたちも含め、多くの子どもたちにスポーツのおもしろさを少しでも伝えられないか、という思いも同時に持っていて、それをアントラーズさんに話したところ「自分たちもぜひ協力をするし、ニーズは学校サイドにもあるのではないか」と賛同してくださり、学校の先生方にも話をしたというのがきっかけです。
ーーアントラーズさんとしては、ドコモさんとそういったお話ができたことはいかがでしたか?
福島)非常にありがたかったです。ドコモさんの高い技術力を使って観戦体験の場を広げるということはファン拡大やJクラブの可能性をスポーツ界に証明できる事例に繋がると思いました。
ーー「特別支援学校の子どもたち」との関わりについては、以前から取り組まれていたのですか?
堀之内) 過去に、ホームタウン5市の小学生と特別支援学校の皆さんが無料で全試合観戦することができる『キッズパス』というものを提供しました。ただ、年間で来ていただく特別支援学校の方が4名くらいだったんです。「スタジアムに来る」ということの難しさを感じていた時に、新しい環境への抵抗感や音の大きさといった子どもたちの不安をドコモさんの技術でカバーすることが出来ると知り興味が湧きました。
スタジアムから届く声・雰囲気
ーードコモさんの技術を使うことによって、具体的にどういう形でスタジアムに近づくような体験ができるんですか?
田中)取り組み自体はコロナ禍前の実施でしたので、お客さんは声援を上げることができました。そのため、スタジアムのお祭りのような雰囲気を学校に届けるためにさまざまな技術を駆使しましたね。学校とスタジアムでタイムラグのないコミュニケーションを取るためにドコモの通信技術を用いました。他にも、アントラーズのマスコットの『しかお君』とハイタッチをするアクティビティには、画面にタッチすると本当にタッチしたような振動が手に伝わる「ハプティクス(触感)」技術を使用しました。
また、技術というわけではないのですが、学校の先生方4名にインタビュアーとしてスタジアムグルメなどの紹介や生徒とのQ&Aセッションを設けたり、グラウンドまで降りてウォーミングアップしている選手の様子をレポートする企画を行いました。日頃身近にいる先生達が現地に行きスタジアム状況を届けてくれるので、企画面からも生徒たちの不安を解消することでより楽しめる環境を作りました。
クラブと企業、お互いの強みがあってこその活動
ーードコモさんとアントラーズさんが一緒に活動を作っていったというところに、どのような価値を感じてますか?
田中)私たちだけですとアントラーズの試合やファンの応援といった部分は伝えることができません。アントラーズが作り上げるスタジアムの雰囲気があってこその取り組みだと思いますし、地域の子どもたちに対する活動を積極的にやられているクラブが賛同してくださったことは非常に大きかったなと思っております。
ーーアントラーズさんとして、実際にやってみたときの地域の皆さんの反応はいかがでしたか?
堀之内)この取り組みは、普通のパブリックビューイングにはない、双方向のやり取りがあったことが非常に良かったと思っています。実際、選手よりもスタジアムの先生が映った時が一番盛り上がったのではないかと(笑)。「〇〇先生、スタジアムでスタジアムグルメを食べてる!」というような。双方向ならではの安心感のもとでサッカー観戦ができたり、ハイタッチしたりできたというのは、子どもたちにとって大きな経験だったのかなと感じます。
ーードコモ、鹿島アントラーズ、特別支援学校の3つが協業することによって、それぞれの特徴が出ている活動ですね。
田中)そうですね。それと、通信技術を活用するためにはどうしてもお金がかかります。そのため、社会貢献活動の継続にはクラブとパートナーが持続的な形を共に考えていくことが大事だと思っています。その点で、アントラーズさんには 社会貢献に繋がるような取り組みをされているパートナーがたくさんいらっしゃり、私たちも他のパートナーさんに刺激を受け、ドコモとしては映像と通信で取り組みをさせてもらいました。
ーー「サッカービューイングを通して子どもたちの社会参加のきっかけになってほしい」という校長先生からの言葉が印象的でした。
堀之内)先生方にも喜んでいただけましたし、一緒に参加した保護者の方にも喜んでいただけました。親子で参加していただいた目的として「お子さんの喜ぶ姿を見て一緒に盛り上がってもらう」という点がありました。その経験が外に出て歩いてみたり、スタジアムに行ったりしてみようというきっかけになったらいいなと。
ーー福島さんは営業という立場で、パートナー企業さんとのお話で最前線に立たれていると思います。企業さんからのシャレン!に対するご要望、あるいは期待のようなものは感じるのでしょうか?
福島)取り組み内容は企業さんの強みなどによってまったく異なり、ニーズ自体も非常に多種多様になってきたと感じます。また、企業さんも社会貢献活動をされているのですが、その取り組みを広く伝えるというところで困っている方が多いなと感じています。そういった時に我々の強みである集客力やSNSなどを用いて、企業様の広報周知の場としてもお役に立てるかなと思っています。
ーー企業とJクラブがお互いの得意分野や強みを考えながら、一緒にシャレン!の活動、社会のための活動を作っていくのは非常におもしろそうですね!
田中)そうですね。話していると本当に当時の記憶が蘇ってきます。最後は楽しさで乗り越えましたが、取り組みをする中での失敗や苦労はありました。例えば、お客さんがたくさんいて通信が不安定になったときは中継の場所を変更したり、学校の体育館に回線を繋げる際には先生方がアイディアを出してくれたりしました。初めてのことでしたがいろいろな人の協力で成功したと思います。あと、始めはなかなか参加者が集まらなかったんですよね?
堀之内)そうなんです。募集をした当初は4組だけでした。やっぱり活動の内容がよくわからないことと保護者の方も自分の子どもが騒いでしまったらいけないなどの心配があったみたいで。そこで、PTAの方が集まる時にアントラーズのタオルマフラーを提供して「一緒にタオルを回しましょうよ」という話をさせていただきました。また、お子さんが飽きた時のためにレクリエーションルームやスタッフを設けることで不安に対応しました。一回トライすることで、参加する皆さんに大丈夫だと思っていただくことがすごく大事なのかなと学ばせていただきました。
通信技術を通した試合観戦をより多くの人に
ーードコモさんとしてアントラーズさんと今後一緒に取り組みたいことを教えてください!
田中)NTTドコモの映像や通信の技術力を活かして、新規ファンの獲得やより楽しんでもらうための工夫ができたらと思います。特別支援学校に限らず、スタジアムに行きたいけど行けない人はいらっしゃると思うんですね。そういった方の心理面などの不安を解消して通信で届けるということはこれからも一緒にやっていきたいなと思っています。またアントラーズは都内にも多くのファンがいらっしゃるので、都内でのライブビューイングや離島での試合観戦ができるようにするなどのお話もしています。ですので、今後もアントラーズの試合やスタジアムの雰囲気を届ける取り組みをぜひ一緒にやらせていただければなと思っております。
ーー個人的に社会貢献活動の面とビジネス面での兼ね合いの部分がすごく難しいなと感じていました。
田中)アントラーズさんとのパートナーシップの中で、企業のビジネスに繋がる部分を追うということは避けて通れない事であると思います。ですが、その中でビジネス活動と社会貢献活動の両方をどのように続けるのかということが企業にも今求められているものだと思っています。ドコモはJリーグのトップパートナーでもあります。Jリーグの百年構想にある地域に根差したクラブと連携し社会課題を解決していく、地域とともに成長していくという理念に共感しています。そういう点で一緒に取り組ませていただけるJリーグ、そして鹿島アントラーズさんは非常にありがたい存在です!
ーーありがとうございました!