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野人・岡野雅行に聞く!『野人プロジェクト』と鳥取の魅力とは?

ガイナーレ鳥取

流通に乗ることの少なかった地方の特産品も、きっかけを掴むことで産業自体の発展にも貢献していくことができる。
そんなきっかけを作り出したサッカーJリーグ、ガイナーレ鳥取(以下、ガイナーレ)の『野人プロジェクト』。今回はプロジェクトの発起人、ガイナーレ鳥取・代表取締役ゼネラルマネージャー(以下、GM)の岡野雅行さん(以下、岡野)にプロジェクトの想い、これからに期待するものを伺いました。

野人プロジェクト©GAINARE TOTTORI

『野人プロジェクト』のきっかけ

――まず、このプロジェクトが始まったときのことを教えてください。

岡野)私がGMになった2014年に、代表取締役社長の塚野と営業で鳥取県・境港に行きました。そこで漁師さんに「支援はできないけれど、魚とカニは余るほどあるよ。」と言われたことがきっかけです。世間では、ちょうど『ふるさと納税』が始まっていて、それを真似できないか、という考えもありました。

ご支援金を何に使おうかと考えてみると、少ない強化費で選手を探していることが課題として挙がりました。当時のガイナーレはゴールが取れない、ストライカーがいない、という悩みがあったので、その資金を強化費に充てることにしたのです。

――プロジェクト発足当初、印象に残っていることはありますか。

岡野)私が漁師の格好をしてSNSで拡散したら、それがすごい反響で。「野人・岡野が漁師になった!」と、勘違いされたんです。ニュースにもなって、皆さん調べてくれて。最初の3日間で1,000口以上お申込をいただきました。その後、朝の情報番組など、全国的にも宣伝させてもらい、多くの人に伝えることができました。

その最初のプロジェクトのご支援金で、フェルナンジーニョというブラジル人選手と日本人選手2人を獲得しました。そうしたら、フェルナンジーニョが加入して5試合で7得点くらいの大暴れを見せて、これに皆さん大喜び!カニを買ってくれた皆さんが、「俺のおかげだよね」という雰囲気ができました。

クラブとしては、皆さんのおかげで選手を獲得することができた。支援してくださった方たちは、美味しい蟹が食べられて、しかも獲得した選手が活躍してすごく満足。win-winの関係でした。今思うと、フェルナンジーニョに活躍してもらえていなかったらこのプロジェクト自体続いていませんでしたね。(笑)

野人岡野
©GAINARE TOTTORI

宣伝しないのはもったいない

――『野人プロジェクト』が7年も続いている要因として、やはり最初のインパクトが大きいですか?

岡野)もちろんそれもあります。しかし、いろいろな方が間に入って協力してくださっていることが大きいと思います。このプロジェクトから境港がものすごく有名になり、組合の方にも喜んでいただきました。

鳥取って来たことない人が多いと思うんです。でもすごく良いところで、たくさん美味しいものがあるので、宣伝したいという想いがありました。『野人プロジェクト』を通して、「こんな食べもの売ってるんだ」と興味を持っていただいて、「あ、ガイナーレって鳥取のサッカーチームだったのか」と。

――入り口はサッカーでなくてもいいということですね。このプロジェクトを続けていくなかで何か印象的な出来事はありましたか?

岡野)あるとき、多額のご支援をいただいた神戸の企業さんに、塚野と2人で境港で獲れた大きなクロマグロを氷詰めにして車に積んでご挨拶に行ったことがあります。道中、サービスエリアでマグロのために氷を足しながら、「もうこれサッカークラブじゃないですよね」みたいな話をしていました。そして運んだマグロでその企業さんがクロマグロの解体ショーをしてくれたりしました。

普通、サッカークラブの営業は、「こういうチームです、ご支援お願いします」という話をすると思うじゃないですか。だけど魚の話ばかりすることもありましたね。塚野に関しては、「何メートルの深さにいる蟹が一番美味しいです。」みたいな話を1時間くらい話して、「本日はありがとうございました」と言って帰っちゃうこともあるくらい。(笑)
そのような形で、サッカー以外の面で企業さんとの接点ができるのはおもしろいところですね。

――『野人プロジェクト』がきっかけで、今までにない企業との繋がりも増えてきているのですね。

岡野)本当に増えましたね。もともと、鳥取には宣伝力がないと言われてきました。本当に良いものがあるのにも関わらず、他県に持っていかれてしまうような。
鳥取の魅力を知ってもらうことさえできれば、たくさんの人が来てくれるのではないかと思うくらい、よいものがたくさんありました。
魚や蟹以外に加わったシャインマスカットも大人気で、組合の方や、ご協力していただいてる皆さんもすごく喜んでくれました。「こんなに申し込んでくれた。自分たちの商品がガイナーレさんの役に立った」と。関わってくれる皆さんが笑顔になれるプロジェクトでありたいと思っています。

ーー実際の商品提供者さんからはどんなお声をいただいているのですか?

岡野)商品提供してくださる方々からは、「新たな人たちや企業に自分たちの商品を知ってもらえた」「流通の方法を整えて、ギフト対応ができるようになった」といったようなお声をいただいています。このプロジェクトが鳥取の生産者さんたちのお役に立てていることを感じます。

野人岡野
©GAINARE TOTTORI

「選手取りたいんです!」

――実際『野人プロジェクト』の御礼品を見てみると、すごくお得だな!と思うような商品も多いのですが、ちゃんとガイナーレさんの資金にはなっていますか?(笑)

岡野)多分、安いのが普通なんだと思います。周りの方にもよく、「こんな安くて良いの」って言われることがありますね。でもちゃんと私たちの資金になっています。(笑)
最初の『野人プロジェクト』は、一口5,000円でした。そのとき蟹を5枚くらいセットで送ったので、事務所に電話がかかってきて。「これ、あなたたちのお金になるんでしょ。こんなに安くて良いの?」と。本当に安いので、平気なんです。

――相手がそう思えるくらい商品としては充実しているんですね。

岡野)そうですね。鳥取の生産者の皆さんから、「うちもやらせて」と言ってくださるので、本当に感謝していますし、生産者さんのためにももっと宣伝力をつけないといけない、というのもあります。

――「強化費に充てる」というのが『野人プロジェクト』の特徴だと思います。その点は開始当初、周囲の反応はいかがでしたか?

岡野)強化費に関しては皆さん大賛成でした。「皆さんのおかげでこの選手を獲得できました!」というのは目に見えるじゃないですか。

それで、「ちょっと試合も見てやろうかな」となる。本当にそのために使ったんだな、というのが皆さんにわかりやすい。逆に営業しやすかったりもしますね。「選手取りたいんですよ!」と言えるので。

――強化費だからこそみんな納得感が出るのですね。

岡野)J3リーグで最下位にいるときに獲得したブラジル人選手に、レオナルドという選手がいました。「ブラジル人選手を獲ります!」と言って私がブラジルまで行って見てきた選手です。彼はJ3でいきなり得点王になり、J2、J1と個人昇格し、活躍しました。あんなに活躍してくれると、『野人プロジェクト』のおかげで選手が来てくれる、そこが一番宣伝しやすくなりますね。

――明確に見えるところが、サポーターの方も応援し続けられる理由になりますよね。

岡野雅行さん
©GAINARE TOTTORI

皆さんと作っていけることが一番良いこと

――サポーターの方からすると、自分自身の行動がチームの強化に関わっていると思える活動って嬉しいですよね。

岡野)そうですよね。サポーターの皆さんも「こんな選手取って欲しい」「ここのポジションが足りない」とか、感じることがあると思います。これで協力していただいて、その足りないところを強化させてもらいますと言うことができます。

――サポーター・地域・クラブが三者一体となれる活動だと思いますが、このような活動の価値について、岡野さんご自身はどのように感じていらっしゃいますか。

岡野)地方クラブは、クラブだけでは絶対にやっていけません。多くの方の協力がなければ活動できないのは間違いないです。

ガイナーレがガイナーレを育てるのではなく、「みんなでガイナーレを強くしませんか?」という気持ちが大切だと思っていますし、そういうクラブになっていかなければいけない、とも思っています。

――選手をされてた時の想いと今とで、変わった部分はありますか。

岡野)プロになって浦和レッズに入団して、浦和のサポーターの方々の密着度、アツさに驚きました。マクドナルドも試合中はシャッター閉めたりしてましたし。私は浦和が初めてだったので、プロではそれが当たり前だと思ってしまったんですよね。サポーターの方がボランティアという形で応援にも来てくれていたし、事務所の手伝いもしていたり、サポーターの集まる居酒屋さんではサッカーの話しかしない。

『サッカーの街』と言えるくらい、皆がクラブに興味を持っていて、「無くてはならない」存在になる。そんな感じが理想です。それを浦和で教えてもらいました。

――選手時代に過ごした浦和レッズからの影響は大きいのですね!岡野さんが鳥取でGMをされているのは、どのような背景があるのですか。

岡野)ガイナーレがJ3に降格してしまったときに声がかかりました。GMなんてなかなか経験できないと思ったので「自分ができることをとにかくやろう」と引き受けました。そうしたら思った以上にやりがいがある。勉強にもなりますし、たくさんの方と出会えました。
クラブの活動には多くの人に携わってもらっていて、彼らに恩返しするには昇格するしかないので、できる限り頑張りたいと思います。

ユニホームを着て学校に行ってほしい

――岡野さんが目指す、ガイナーレと地域の未来というのは、どのような形ですか。

岡野)ガイナーレは誰のものでもなくて、鳥取のものです。地域に愛されるクラブになるのが一番の理想です。昇格して、鳥取を活性化させたりだとか、「ガイナーレがあったからここまで来た」という企業さんや工場が増えたりだとか。「ガイナーレがあるから、俺らも手貸してやるか」と言われる、そんなクラブになったら、すごく幸せだと思います。
飲みに行けばガイナーレの話とか、小学生がユニフォームを着て、学校に行くとか。堂々とみんながユニホームを着て、「俺がガイナーレのサポーターだよ」と言う。そんな、みんなが誇りにするクラブにならなければいけないと思いますね。

――『野人プロジェクト』の話から、ガイナーレというクラブ全体の話まで、いろいろとお伺いできました。ありがとうございました!

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