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ウクライナへ届け、湘南からひまわりに想いを込めて

ウクライナへ届け、湘南からひまわりに想いを込めて

Jリーグ・湘南ベルマーレで行われた『ひまわりプロジェクト』。夏に慣れ親しんだひまわりは、戦時下にあるウクライナの国花でもあります。
ひまわりの種を配り、選手たちは特別なひまわりユニフォームを着用して試合を行いました。

2022年2月の開戦後、いまだにつづく戦争への想い。それに対して、私たちはどんなことができるのか。株式会社湘南ベルマーレ代表取締役会長の眞壁潔さん(以下、眞壁)にお伺いしました。

湘南ベルマーレ

「あなたが死んだとき、そこにひまわりが咲くのよ」

ーー湘南ベルマーレさんでは、4月からひまわりプロジェクトとして活動を行われました。このプロジェクトはどのようなきっかけで始まったのでしょうか?

眞壁)ロシア軍によるウクライナ侵攻のニュースを見ていて、「サッカー選手を目指していたけれど諦めて逃げる」と言っている子どもが映りました。ウクライナはサッカーでも実力のある国であり、ベルマーレにも昔ビタリー選手というウクライナ人選手が在籍していて、対岸の火事とは思えませんでした。

当初はすぐに終わるだろうという予測もあり、Jリーグ主導の募金活動を行っていましたが、長引きそうな様相を呈してきて募金以外の活動が必要だと感じていました。

ーーウクライナでの戦争は、私たちにも大きな衝撃を与えるものでした。

眞壁)もう1つ、今回のプロジェクトにもつながる印象的な話があります。戦争初期の頃、ロシア兵に向かって怒鳴りつける女性の映像です。ロシア兵が、「これ以上こちらに来ると対応しないといけない。来ないでくれ。」と言っている中、その女性はロシア兵に「私の持っているひまわりの種を持っていきなさい」と言います。「やがてあなたが戦場で死ぬとき、そこからウクライナ国花のひまわりが咲くのよ」と。

ーー非常に印象的なシーンですね。

眞壁)このシーンの印象は、私たちの活動の中でもひまわりの種を配ることになった1つのきっかけと言えます。

七夕ユニフォームをウクライナカラーで

ーー募金とともにひまわりの種を配るだけでなく、7月の特別ユニフォーム(七夕ユニフォーム)では、ウクライナカラーでひまわりをあしらったユニフォームを選手は着用しました。

眞壁)実はサポーターの中から、「この地域(湘南)の人たちにとって大事な七夕ユニフォームを、ウクライナ1つの支援のメッセージにするのはどうなのか?」というお話もいただきました。

ーー七夕ユニフォームは地域密着のため、という意識が強いのですね。

眞壁)そうですね。この地域で行われる『七夕まつり』に合わせたイベントになっています。ですが実は、『七夕まつり』は戦後復興の目的で始まったものなのです。スタジアムのある公園付近は、すべて戦時中は軍需工場であり、B29の爆撃の標的となりました。平塚付近の約8割は焼けてしまったと言われ、多くの方が亡くなっています。

被害が大きかったのですが、平塚の復興は国からの予算もついた影響で比較的早く進みました。やっと多くの人が安心して暮らせるようになった頃、1950年に『復興まつり』としてお祭りが始まり、明るいネーミングにということで『七夕まつり』に名前を変え現在まで続いています。

空襲によって多くの人たちが亡くなったこの地で、私たちはサッカーを中心に多くのことを楽しみ、暮らしている。そうしたことを私たちも含め、地域の人たちももう一度認識しなければならないと思いました。ウクライナに向けた取り組みも合わせて、次の世代に伝えていく機会だと思って取り組んでいます。

ーー多くの子どもたちの関わるベルマーレさんだからこそ、伝える役割も大きいですね。

湘南ベルマーレ

ひまわりの花が咲くたびに

ーー子どもたちには、このひまわりプロジェクトをどのように伝えているのですか?

眞壁)子どもたちにひまわりの種を渡す際、“すべてを細かく説明しない”ようにと各アカデミーのコーチたちには言っています。「なぜひまわりの種なんだろう?」と子どもたちだけでなく、若い世代の保護者の方も思うことでしょう。もちろん、中にはこうした戦争の話題に対して興味のない人たちもいます。そうした方々も含めてじわじわとメッセージを広げていきたいと思っており、そのためには説明ではなく、継続することで伝わっていけばと思っています。

ーー『継続』ということはとても大変なようにも感じますが、“ひまわりの種を撒く”というだけであればできそうな気もしますね。

眞壁)毎年4月〜5月頃、「ひまわりの種を撒く時期だな」と思い、同時に戦争のことに想いを馳せる。どんなに理不尽なことを言われても、戦争をしてはいけない、違うやり方で解決しなければならないということをしっかりと伝えていきたいです。戦争というものを身近に感じなくなり、テレビゲームでは人に向かって銃で撃つことも多くあるような子どもたちもいます。学校の教科書的な学びではなく、ベルマーレを通して伝わるものもあるのではないでしょうか。

ーー本当に大事なことですね。ひまわりの種を撒く際、マンション住まいの子などはどうしているのですか?

眞壁)メッセージを伝えるために、そうしたことは関係なく全員に配っています。一応、各自治体の皆さまには公園に植えてしまっても大丈夫、と言ってはいただいます。(笑)

🄫SHONAN BELLMARE

「ロシア出身の人たちも含めてケアしていきたい」

ーーこうした政治にも関わるメッセージを発信していくことに少し難しさを感じてしまうのですが、眞壁さんはいかがでしょうか?

眞壁)日本人の特性として、こうした活動へのやりにくさは感じるものです。なので、今回の活動に際して、私自身がホームタウンの各市長のところに訪問してすべて説明させていただきました。その中でもお伝えしたのですが、ひまわりという花にはもう1つテーマがあります。

それは、日本にいるロシア人の方々に対する想いです。大学への留学などもあり、ベルマーレのホームタウン地域にはロシア人の方も多くいらっしゃいます。政治のせいでこうしたことになり、ロシア人全員が悪いわけではないですし、これは第二次世界大戦中に日本人駐在員が経験したことの裏返しです。ひまわりはロシア人も好きな花で、第2の国花とも言われている花ですので、そうした方への応援メッセージにもなればと思っています。

ーーたしかに、配慮をしなければならないし、想像力を働かせなければならないことですね。

眞壁)私たちは小さなスポーツクラブではありますが、小さいからこそすぐに動けるし、こうした発信もすることができます。行政の方々に聞くと、なかなか発信できないこともあると聞きます。ベルマーレだからこそできる発信をしていきたいですね。
FIFAは政治的な発信を基本的に禁止しています。今回のウクライナの件は除かれていますが、停戦など解決に向かい始めたときには、また発信できなくなるかもしれない。ですが、ひまわりの種はいくら撒こうと止められることはありませんので。

ーーひまわりにメッセージを持たせることで、継続していくことができるのですね!

眞壁)そうですね。ですが、本当の意味で浸透していくために、ベルマーレが先導していくのは3〜5年を目処に考えています。僕たちの先導がつづくことで価値が薄れてしまうこともあります。まずは3〜5年で当事者になる人の数を増やし、想いを感じてくれる人の数を増やしていく。そうした人たちがひまわりを植え続け、また「なんでひまわり?」と思う人に繋がっていってほしいと思っています。

クラブとしても自然体でやっていくことが大事です。花が咲いたときに、「きれいだな」と思ってくれて、「そうだ、ウクライナのために活動していた」と思い出してくれれば、それだけでいいんです。

ーー眞壁さんの想いがとても伝わってきました。こうした活動が自然なものとして、大変な想いをされている方に勇気や元気を与え続けてくれたら嬉しいですよね。本日はお話しありがとうございました!

長期療養中の子どもたちの「味方」をつくる力に~湘南ベルマーレ『TEAMMATES』活動に込めた想い湘南ベルマーレでは、『NPO法人BeingALIVEJapan』が運営する、スポーツチームへの入団を通じて長期療養の自立を支援する『TEAMMATES』事業に、2019年から参画しています。Jクラブで初めてこの事業に取り組んだきっかけやクラブが大切にしていることは何なのかーー。...