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「想いをくみ取ってくれてありがとう」〜鹿児島ユナイテッドFCの「SDGs」

「自分はオチをつけるだけです」。
そう笑って話すのは、Jリーグ・鹿児島ユナイテッドFCのホームタウン担当として、SDGsを推進している小林浩宣さん(以下、小林)。
「スポンサー企業からみるSDGs」など、SDGsの発信に力を入れてきているクラブの取り組みについて話を伺いました。

鹿児島ユナイテッド2クラブマスコット「ゆないくー」と小林さん(©KAGOSHIMA UNITED FC)

「これから生きていく上で必要だ!」社長の意識が取り組みの原点

ーー鹿児島ユナイテッドFCさんは最近特にSDGsについての活動や発信に力を入れているイメージがあります。何かきっかけなどがあるのでしょうか?

小林)「SDGs」については、これまでも意識していましたが、本格的に取り組みを始めたのは2021年からになります。
きっかけは、弊社の徳重剛社長が「これからの生きていく上で必要だ」という意識から環境問題に関心を持っていたことです。こうした考えから、2018年からはマッチデープログラムを一部電子化したり、2020年には、ホームゲームで配布物を入れる袋を、ビニール製から紙製のものに変更しました。

ーーマッチデープログラムの電子化や紙袋の使用など、環境のための取り組みを早い段階から行われていたのですね。

小林)これらの取り組みは、やはり徳重社長の考えは大きいと思います。多くの人が当たり前に思っていることに対しても「それって本当にそうなのか?」という視点を持っている人だと感じます。
マッチデープログラムの電子化についても、試合終了後に紙のプログラムがゴミ箱に捨てられているのを見て、「これってどうなんだろうね」と言っていたことから電子化に切り替えることにしました。

食品ロスから、「完食したんだ!」という文化に

ーーホームゲームでのグルメ屋台「ユナマルシェ」では、必要な分だけ食材を仕入れていると伺いました。この取り組みには、サポーターをはじめとした多くの人の理解が必要ではありませんでしたか?

小林)屋台の商品が早めに売り切れてしまう場合があることについては、お客様に理解をいただく必要があります。実際、試合の前半途中や試合前に、売り切れてしまったときもありました。
ですが、サポートの皆さんには、逆転の発想で「完食してやったんだ!」「自分たちは、食品ロスを出さなかったんだ!」と誇りを持っていただけるように、新しい文化を作っていきたいと思っています。

鹿児島ユナイテッド3「ユナマルシェ」の様子(©KAGOSHIMA UNITED FC)

ーー「新しい文化」というのは大事な視点になりますね。

小林)大量生産・大量消費というこれまでのスタイルをすぐに変えるのはすごく大変なことだと思います。ですが、食品ロスの削減のためには少しずつでも、そこに向かっていく姿勢が大事だと思っています。
「ユナマルシェ」から地域の新しい文化を作っていき、スポーツクラブとしての役割を果たしていければ嬉しいです。

こうした取り組み全てがお金に直結する取り組みではないと思います。しかし、長い目で見ればとても大切なことです。行政や地域の企業さんからご支援いただく身として、「地域にお返ししている」と示していきたいです。

コロナ禍で改まった認識「クラブ全体としてやることだよね!」

ーークラブとしては「SDGs」について、どのようなものとして認識しているのですか?

小林)サッカークラブでSDGsというと「ビーチクリーン活動」のように、地元で“活動をすること”をメインに考えてしまいがちです。ですが、2020年のコロナ禍によって活動が制限されたとき、ホームタウン活動に携わる部署だけでなく、前述のようなプラゴミ、紙ゴミの削減のように「クラブ全体としてやることだよね」と考えるに至りました。

そして、取り組みをきちんと知ってもらって初めて意義があることだという認識も持ち始めました。正直な話、サッカーチームがゴミを拾っただけでは、集められるごみの量など目に見えるインパクトは小さいと思います。でも、クラブの地域における発信力やブランドを使えば、活動の効果はより大きくなるのではないでしょうか。
だからこそ、情報発信という面にも力を入れて取り組んでいこうと考えました。

ーーこれまで伺ったような取り組みを続けてきたなかで、ファンやサポーターの方からの反応はいかがですか?

小林)今やっと、“意識の芽”が出始めたくらいだと思っています。
これまでは勝つか負けるかがクラブの評価のほとんどでした。もちろん一番大切なことですが、「それだけが鹿児島ユナイテッドFCの価値ではないよね」というファンが増えてきた印象があります。地域で関わってる方は特にこうした取り組みへの理解があり、活動をきっかけに「ユナイテッドの応援に行きます」と言ってくださる方も多くなってきました。

鹿児島ユナイテッド4ビーチクリーン活動(©KAGOSHIMA UNITED FC)

クラブの発信力を活かす「スポンサー企業を通して見るSDGs」

ーーさまざまな取り組みをされてる中でも、「スポンサー企業を通して見るSDGs」(https://kufc.co.jp/2021/09/15/sdgs_sponsor/)は印象的だと感じました。どのような思いからこの取組をはじめたのですか?

小林)鹿児島ユナイテッドFCの職員だけでできることはたかが知れていますが、パートナー、スポンサー企業という枠まで広げると約400社にもなります。

SDGsという言葉だけでは分かりづらくても、胸スポンサーの「さつま島美人」には興味を持つかもしれません。「ユナイテッドだから見てくれる」というクラブの発信力を生かし、それを通じた取り組みをしたいと思い、この取り組みをはじめました。

鹿児島ユナイテッド5©KAGOSHIMA UNITED FC

ーー取り組みを始めて、パートナーさんやスポンサーさんからの反応はいかがですか?

小林)始める前には「いいですね。ぜひやってください」という意見が多く、実際に掲載して以降も、企業さんからは「こういう感じで紹介してもらえるのだったらぜひ!」という声をいただきました。
なかでも、「“想い”を汲み取ってくれてありがとう」とおっしゃっていただいたことが印象的でした。鹿児島に対する“想い”、SDGsに取り組んでいる“想い”、鹿児島ユナイテッドFCへの“想い”――。そうした部分をきちんと整理して掲載したことで、「皆さんに分かってもらいやすいかたちにしてもらえて、ありがとうございます」とおっしゃっていただけました。

ーー名前を出すだけではない取り組みのかたちが実現したのはすごく良いことですよね。

「活用したくなる存在に」

ーーこうした活動を、これからどのように取り組み続けていきたいですか?

小林)SNSなどを見るとサポーターの方からも、クラブの取り組みに対して全体的に好意的な反応をいただいています。「このような軸もあるんだ」と感じていただけていると思います。
選手たちも、ファンの温かさによって鹿児島のこと好きになってくれていて、「鹿児島のために何かしたい」と思ってくれている選手が多くいます。これまではコロナ禍ということで、選手にはあまり関わってもらっていませんが、今後は選手たちにも啓発などで活躍できる仕組みを作っていきたいと思っています。

ーー今後、クラブとしてどういう方向性を目指していかれるのでしょうか?

小林)「J1を制する」というクラブの目標を達成するためには、鹿児島の地域が健全に成長し、それに相応しい街にならなければなりません。目指すのは、サッカーだけの理解ではなく、他のスポーツや文化、芸能、多様性への理解がある街です。

そういう夢を実現するため、“使っていただける存在”、“活用したくなる存在”になることが、私たちの目下の課題だと考えています。

ーーありがとうございました!

写真提供=鹿児島ユナイテッドFC

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