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長期療養中の子どもたちの「味方」をつくる力に~湘南ベルマーレ『TEAMMATES』活動に込めた想い

湘南ベルマーレでは、『NPO法人Being ALIVE Japan』が運営する、スポーツチームへの入団を通じて長期療養の自立を支援する『TEAMMATES』事業に、2019年から参画しています。Jクラブで初めてこの事業に取り組んだきっかけやクラブが大切にしていることは何なのか——。

約10年間、湘南ベルマーレに選手として在籍し、引退した現在は営業として忙しい日々を送りながらこの活動を担当している島村毅さん(以下、島村)に話を伺いました。

社長の即決で始まったJクラブ初の取り組み

ーーまずは『TEAMMATES』の取り組みの概要を教えてください。

島村)この活動は、長きにわたって入院や治療に当たっている「長期療養児」と呼ばれるお子さんに湘南ベルマーレの選手として入団してもらい、さまざまな活動を共に行っていく取り組みです。

『TEAMMATES』は『NPO法人Being ALIVE Japan』と協力した事業で、我々としての活動は、2019年シーズンからスタートしました。さまざまな人とのつながりを持つことで、理解をしてくれる仲間、子どもたちの「味方」をたくさん作り、学校や社会復帰する上での力になれたらと思い、活動しています。

――『TEAMMATES』に取り組み始めたのには、どういったきっかけがあったのでしょうか?

島村)フットサルのFリーグに所属する湘南ベルマーレフットサルクラブに、ガンと闘病しながら、2020年に亡くなるその年までプレーを続けた久光重貴さんという選手がいました。

久光さんは、ガンと診断されて以降、病院で療養する子どもたちにフットサルを教える支援などを続けていてました。そうした活動を通して『Being ALIVE Japan』の北野華子代表に知り合い、弊社の水谷尚人社長を紹介してくれることになりました。

北野代表との打ち合わせで、水谷社長は「やりましょう」と即決し、我々が『TEAMMATES』に取り組むことになりました。即決の理由を水谷社長に聞いたところ、「久光選手からの紹介なら、間違いないと思ったから」と話していました。

湘南ベルマーレ

――さまざまなスポーツチームが『TEAMMATES』の取り組みに参加している中で、湘南ベルマーレはJクラブで『TEAMMATES』に参画した一番最初のチームになりました。Jクラブではじめての取り組みにも、積極的にチャレンジできた理由は何でしょうか?

島村)湘南ベルマーレは、1999年に親会社が撤退し、一時は消滅の危機もあったクラブです。「この街からベルマーレをなくしてはいけない」と、地域の皆さんが支えてくださったからこそ今を迎えることができています。今、クラブがあるのは本当に地域の皆さんのおかげだと思っているので、「地域への恩返し」はクラブに根付いている考え方です。

「良い事業があるならやろう」というクラブのマインドも影響しています。社長が率先し、「どんどんチャレンジしていこう」「まずはやってみよう」という考え方を持っているので、即断即決にも驚くことはありませんでした。

選手たちの精神的な成長のきっかけにも

ーー2019年から取り組まれていて、これまで2人をチームで受け入れていますね。

島村)1人目の高田琥太郎(たかだこたろう)くんは、最初、なかなか自分を出せずにいたのですが、選手やスタッフが普段から温かい声をかけるなど交流を持ったことで、自らもどんどん成長していき、次第に慣れていくことができました。

また、「サインちょうだい!」と触れ合ってくれるサポーターもいて、1年の活動期間を終えた時には、いい顔で卒団していってくれたのが印象的でした。

そして、現在所属している橋本琉(はしもとるい)くんは2人目で、2020年11月に入団して、活動を共にしています。2人目ということで、私たちも活動をブラッシュアップするなど、より良い活動になるため努力しています。また、選手やスタッフがチームのメンバーとして受け入れることに慣れてくれたこともあってか、皆さん協力的で、できることが増えてきている印象があります。

湘南ベルマーレ

ーー活動に対する選手の皆さんの反応はいかがでしたか?

島村)選手たちは、普段から学校への訪問などに取り組んでいる選手ばかりなので、「これからこういう活動をします」と説明した際は、のみ込みが早く、すんなりと受け入れてくれました。特に2人目の橋本琉くんのときには、初日から「ルイくん、ルイくん」と積極的に声をかけてくれた選手が多く、どんどん仲良くなっていきました。

なかでも、名古新太郎選手は、自らスパイクをあげると言ってくれました。渡したタイミングではリアクションがそこまで大きくなかった琉くんでしたが、お母さんの話によると、帰りの車内では泣きながら喜び、家ではお兄ちゃんに取られることがないよう、けん制までしていたそうです。

受け入れる子どもの成長もそうですが、選手たちもこの活動をきっかけに精神的に成長できる、とても良い活動だと思っています。今後も我々でできることを増やし、より良い活動にしていきたいですね。

ーー『TEAMMATES』は、選手やサポーターなど多くの人に受け入れられている活動になっているのですね。

島村)『TEAMMATES』に参加している子どもたちが、ファンの皆さんの目にかかる機会は多いと思います。ホームゲームが開催される日には、スタジアムでポップコーンを売ったり、勝った試合の後には、選手とスタジアム内を一周してサポーターに挨拶もしています。

湘南ベルマーレ

サポーターから「ルイくんだ!」「頑張ってね」などと声をかけてもらえることも多く、皆さん受け入れてくださっているんだなと感じます。琉くん、琥太郎くんに向き合うことを大切に活動していき、それが巡りめぐって社会貢献になれば、という気持ちでやっています。その想いを今後もブラさないようにしていきたいです。

『TEAMMATES』は、理解や共感で成り立つ活動

ーー『TEAMMATES』は多くの人にを巻き込む活動であると、これまでお話を聞いていて感じました。

島村)この事業では、ベルマーレのオフィシャルクラブパートナー・東日本急行様にご協賛いただいています。同社の重松正利・代表取締役社長に協賛をお願いした時には、「すぐやりましょう」と言ってくださいました。私たちが、入団式やリリースでの露出をご提案しても、「本人のためになればそれでいいから宣伝は一切なくて大丈夫」「そういった活動も我々の使命ですから」と。

子どもにも、社員や社会に対しても「寄り添いが大事だ」と何度もおっしゃっている重松さんの姿から、「素敵な方々に支えられて、共感や理解していただいて、こういった事業は成り立っていくのだ」としみじみ感じました。

湘南ベルマーレ

ーーこれからの社会貢献活動について、考えていることを教えてください。

島村)大事なのは、一つ一つの「積み重ね」だと思っています。

『TEAMMATES』も、まだまだ始まったばかりの活動で、今は荒削りの状態ですが、私を中心にフロント、選手みんなで良い活動にしていきたいです。発信力があり、勇気や感動を与えることができるスポーツを通じて、目の前のことから一つ一つ積み重ねていければと思っています。

ーー『TEAMMATES』活動について、これからの展望を教えてください。

島村)湘南ベルマーレではまだ2人しか『TEAMMATES』で入団していませんが、これからもどんどん増やしていきたいと思っています。子どもたちとの関わりという面でも、1年間の活動で終わりではなく、長い付き合いをしていきたいです。

将来的に『TEAMMATES』の子どもたちみんなで集まるOB戦のような企画をおこなって、ひとりひとり「こんなに成長したのか」と感じることができたら嬉しいですね。スクールコーチという私の立場からしても、子どもたちの変化や成長を見ることができるのはコーチ冥利に尽きるので、受け入れた子どもたちの成長にずっと携わっていけたらと思っています。

ーーありがとうございました!