2022年6月7日(火)〜 6月9日(木)にかけて行われる、スポーツ×社会貢献のオンラインイベント「Sports for Social Summit 2022 summer」。その見どころをセッション毎に紹介していきます。
Session.5は「パラアスリート集結!パラスポーツの魅力を語り尽くす!」。
登壇者の廣瀬順子さん(パラ柔道)・小須田潤太さん(パラ陸上・パラスノーボード)・豊島英さん(車椅子バスケットボール)との事前打ち合わせの様子を紹介します!
見えない部分にある面白さ
ーーまず廣瀬さんにお聞きします。東京パラリンピック2020大会はいかがでしたか?
廣瀬)試合自体は無観客でしたが、前回大会よりも試合前後の応援メッセージを非常に多くいただき、たくさんの方に応援していただいていることを実感しました。
ーー健常者の柔道と視覚障がいの柔道は、どのような違いがあるのでしょうか?
廣瀬)視覚障がいの柔道の大きな特徴は、互いに組み合った状態から試合が始まるということです。それ以外のルールですと、場外に近づくと審判が声で教えてくれたり、試合中にどちらかの選手の両手が離れると試合を中断し開始姿勢に戻ることも違いとして挙げられます。
ーー視覚障がいの柔道だからこその魅力などはどのようなところにありますか?
廣瀬)組んだ状態から試合が始まるため、開始という合図の直後に技のかけ合いが始まり、健常者の柔道に比べて一本がとりやすいという面白さがあります。最後の数秒まで逆転の可能性があるので、終了ギリギリまで楽しめる競技だと思います。
ーーなるほど、健常者の柔道で行われる組み手争いは、視覚障がいの柔道ではないんですね。
廣瀬)実は、組んだ状態から始まりますが、見えない組み手争いが行われています。本来は持つ場所が決められているのですが、少しでも有利な場所を掴むようにお互いに駆け引きがあるのです。
ーー日本において、視覚障がいの柔道をする環境は十分に整っているのでしょうか?
廣瀬)体験会というのは年に何度か開催されています。ですが、継続して視覚障がいの柔道に取り組もうと考えると、現状の環境では不十分だと思います。視覚障がいの柔道選手は各地にいますが、各々が柔道クラブや高校・大学の柔道部にお邪魔して練習を行っています。そのため、新しく柔道をやりたいという子に教えてあげる場所がないというのが競技人口が増えない一番の課題だと思います。視覚障がい者が柔道を行うには、危険から守ってくれる人がどうしても必要になるので、視覚障がいに対する全体の理解度を上げていくことが重要かなと思います。
ーー組んでから始める柔道は、視覚障がい柔道だからこそのおもしろさなので、それが広まっていくといいですね!
「生きていく上で走ることは必須ではない。でも、義足だからこそ走る必要がある。」
ーー次は小須田さんにお聞きします。東京2020パラリンピック大会に出場された感想はいかがですか?
小須田)すごく楽しかったです。陸上競技は基本的に練習も地道で反復的なので、楽しいと思える瞬間はあまり多くありません。ですが、パラリンピックはそうした辛い練習をするだけの価値があると思えるほど、楽しいものでした。また、私自身東京大会が初めての世界の舞台だったので、目の前でトップ選手が競技している姿にも非常に刺激を受けましたね。
ーー小須田さんは夏季は陸上競技、冬季はスノーボードでパラリンピックに出場されていますが、2つの競技にどのように取り組まれているのでしょうか?
小須田)特に意識して分けているということはありません。陸上競技は冬季にしっかりと練習をして力をつける必要がありますし、逆にスノーボードは夏季に雪のある海外に遠征に行ったりするので、常に両輪を回してる感じですね。ですが、冬季は怪我がどうしても多くなります。私の場合は、冬季に足首を怪我して、一度も走れなかったこともあるので、そのようなリスクは多少あると思います。
ーー健常者の陸上競技とパラスポーツの陸上競技の違いはどのような部分にあるのですか?
小須田)クラス分けがあることが大きな違いだと思います。また、健常者の陸上競技は、基本的に自分の身体のみを使って競技しますが、パラスポーツの陸上競技では、義足や車いすなどの道具を用いて競技します。パラスポーツは、そのような道具と体をアジャストさせていく作業も面白い要素だと思っています。
ーーパラスノーボードの魅力はどのようなところにありますか?
小須田)やはり義足ですかね。基本的には健常者のスノーボードと変わりません。板もビンディングもブーツも健常者と同様の物を使用します。また、私はスノーボードクロスという4人で一斉にスタートし、誰が最も早く滑り降りれるかを競う競技をメインに行っているのですが、常にギリギリの勝負となるので、そのような部分での面白さもあると思います。
ーー小須田さんは、下の世代にパラスポーツを普及していく活動など何か取り組まれていることはありますか?
小須田)2015年に義足で走るのが初めての方向けのランニングクリニックイベントに参加して、パラ陸上に出会い、それがきっかけでここまで来ることができました。そのような自身の経験もあって、パラスポールの普及には意識して取り組んでいます。2021年には、普段一緒に陸上競技の練習に取り組んでいる山本篤選手・前川楓選手と一緒にブレードアスリートアカデミー2021というランニング講習会を開催しました。その際にも、初めて義足で走るという方が多くお越しくださいました。やはりそのように機会・場を作るということは大切だと思っています。
ーー初めて義足で走るという方も参加されるというお話がありましたが、義足を使ってスポーツをすることを躊躇する方もいらっしゃるのではないでしょうか?
小須田)そうですね。もちろんいらっしゃいます。私自身も義足で初めて走ったのは、義足になってから3年後のことでした。正直、生きていく上で走ることは必須ではないと思います。ですが、体を動かすことは生活を充実したものにしてくれますし、何より義足の人にとっては、走ることは歩きやすくなることにつながるので、ポジティブに捉えて取り組んでほしいなと思っています。
ーーパラスポーツ界がもっとこうなってほしいというような想いがあれば、教えてください。
小須田)最終的には健常者の方と一緒に競技する・クラス分けのない大会ができればいいなと思っています。それがボーダーレスな社会という意味では、最も理想形なのかなと思います。もちろん難しい部分はたくさんあると思うのですが、一緒にやっていこうと共生を目指すことはすごく大事なことだと思いますね。
ーースポーツが共生社会の象徴となれるといいですね!当日のお話も楽しみです!
変わりつつある、車いすバスケ
ーー豊島さんは、東京パラリンピック2020大会を終えていかがでしたか?
豊島)自国開催ということもあり、これまでの大会に比べても、非常に注目度の高いものになったなと思います。特に男子バスケットボールに関しては、すべてテレビ・ネット配信をしていたので、応援してもらえる環境が整っており、日に日にファンの方が増えていくのを感じました。また、結果としても勝ち進めていけた部分で注目していただけたかなと思います。
ーー東京大会では、準優勝という結果を収めていますが、結果が残せた要因などは何かありますか?
豊島)車いすバスケはずっとパラリンピックにおける花形競技と言われ続けてきましたが、これまで結果が出せず悔しい想いもありました。ですが、東京大会では自国開催というメリットや戦術としてプレースタイルを変えて戦ったことが結果につながったのかなと思います。
ーー豊島さんから見て、車いすバスケの魅力はどのようなところにあると思いますか?
豊島)バスケットボールは多くの方が学校での体育などで一度は経験したことがある競技だと思うので、広く親しみやすいスポーツなのではないかなと思います。障がい者スポーツを初めて見る方には、どうしてもクラス分けのルールが理解しにくいと思うのですが、逆に障がい者同士、互いにできないことをカバーし合ってチームを作っていくという部分に面白さや感動を感じていただける方も多くいらっしゃいます。また、単純に車いすバスケは激しいので、見ていて面白いと思いますね。
ーー海外と日本での普及の違いなどはありますか?
豊島)日本はリーグ制を導入していないため、海外のリーグ制のある国に渡る選手がいます。そういった点では日本は少し遅れていると言えるかもしれません。ですが、2013年にパラリンピックの開催が決まり、その後から日本でも企業におけるアスリート雇用が増えてきているなど、競技力を伸ばす環境としては整いつつあると思います。
ーー車いすバスケは、子どもたちがプレーする環境は整っているのでしょうか?
豊島)全体としては不十分だと思いますね。小学生だけ、などカテゴリーごとにプレーできる環境が十分にあるわけではないので、子どもも大人と同じ環境に飛び込んでいくことになります。当然一緒にプレーできるわけではないので、隅でボールを触る程度で楽しめずに帰ってしまう子もいると思います。ですが、環境面に関しては現在、変わろうと取り組んでいる段階にあると思います。チームによってばらつきはありますが、同世代で楽しみながら競技できるような環境は増えつつあります。アメリカでは、NBAのチームが車いすバスケのチームを配下に持っており、同じ組織下でプレーできる環境が整っているのですが、日本ではまだBリーグの配下として存在するチームは少ないので、もっと一緒になってプレーできる環境を整えていきたいと思います。
ーーそのような環境を作っていくために取り組みたいことなどはありますか?
豊島)現在も学校訪問やさまざまなイベントで車いすバスケを知ってもらうための活動を行っています。しかし、どれも単発的・一時的なもので終わってしまっているように感じています。そのため、東京大会の盛り上がりだけで終わらないように、継続的にアプローチできるような活動を行っていきたいと思います。
ーー3人のお話から、パラスポーツは障がいを持ってる方が行うスポーツではありますが、単純に競技自体の面白さをすごく感じることができました!ありがとうございました!
▼チケットはこちらから
https://sports-for-social-summit2022summer.peatix.com
▼特設ページはこちら
https://www.sports-for-social.com/summit/
◆Session.5 概要
6月8日(水) 17:00~17:50
タイトル「パラアスリート集結!パラスポーツの魅力を語り尽くす!」
登壇者:
廣瀬順子(リオオリンピック柔道女子57kg 銅メダリスト)
小須田潤太(東京パラリンピック出場/株式会社オープンハウス所属)
豊島英(東京パラリンピック車いすバスケットボール銀メダリスト/株式会社WOWOW所属)