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【セミナーレポート】これからのスポーツ業界におけるファンマーケティングについて考えるワークショップ

2023年、ほぼすべてのスポーツシーンは新型コロナウイルスによる制限がなくなり、新しい時代を迎えました。声出しが解禁となり、マスク着用義務もなくなりました。

それまでの数年間は、ただ制限があっただけでなく、その影響から社会は変わり、とくに消費者の行動は変わってきています。その行動はどのように変化し、これからどのように発展していくのでしょうか?

スポーツにおける応援シーンでも、失われた応援の文化が戻るだけでなく、新たな文化が創られることを期待されています。これからの文化を作っていく若い世代、とりわけスポーツへの関心が高い大学生とともに、今後の未来について考えてみたいーー。

『感動創造』を掲げ、プロ野球(NPB)球団をはじめとした多くのプロスポーツチームのグッズ企画・製作を手掛けてきた株式会社ヒロモリとともに、新たな「応援文化」をスポーツグッズから考えるオンラインワークショップを開催しました。

ヒロモリSDGs
【経営者インタビュー】セールスプロモーションとは!ヒロモリが伝える商品の想いセールスプロモーション(SP)。商品やサービスの売り上げをのばすためのマーケティング活動のことで、生活者の購買意欲や流通業者の販売意欲を引き出すために、広告だけでなく景品(インセンティブ)やキャンペーンなどその手法は多岐にわたります。 昔の景品と言えば、貴重なフィギュアやお菓子のおまけのカードなどは、誰しも喜んで買っていたはずです。しかし現在、そうしたセールスプロモーションにおいても環境への配慮などが求められる時代になりました。株式会社ヒロモリ(東京都港区、以下ヒロモリ)では、セールスプロモーションを『販売促進』だけでなく、『感動創造を通した動機付け』と位置づけています。...

スポーツエンタメ業界におけるセールスプロモーション

ヒロモリが行うセールスプロモーションの中で、スポーツチーム向けの営業をしているのが、御子柴明さん。(以下、御子柴)

御子柴)スポーツチームが収益を上げるためには、多くのファンを増やす必要があります。
そのためスポーツ業界における販売促進には、来場者プレゼントやファンクラブ特典、限定グッズなど多くの仕掛けがあり、観戦が盛り上がりワクワクするといったエンタメ的な要素が非常に重要です。

アフターコロナの現在では、入場規制や声出しの解禁により、ファンの方も観戦を待ち望んでいます。今までのコアなファンの方だけでなく、初めてスポーツ観戦をするお客さまも増えていて、若年層のファンの獲得、長期的な来場につながる新しいグッズを作りたいというスポーツチームの声が多くあります。

hiromori

学生がスポーツ観戦に行くモチベーションとは?

スポーツチームの近くで、スポーツチームとともに業界を盛り上げる株式会社ヒロモリ。プロモーション事業部の松浦昭重部長(以下、松浦)や御子柴さんから、学生がスポーツ観戦に行くモチベーションなどを聞いていきます。

松浦)アフターコロナとなり、約3年ぶりに観戦に来場する若者が増えてきています。学生のみなさんのスポーツ観戦へのモチベーションや、行く理由やきっかけ、楽しみにしていることなどを教えてください!

学生A)サッカーが好きなので、誘われればスタジアムに行きますが、自分が誰かを誘うとなるとハードルの高さを感じています。まわりの友人は、サッカーの興味は日本代表と海外サッカーがメインで、「Jリーグに誘ってもいいのかな」と感じてしまうからです。
ですが、私の地元のJリーグチームが行っていた人気タレントとのコラボは、来場者が多く反響があったと話題になっていました。ユニフォーム配布のイベントの際に友人から声を掛けられた経験もあるので、来場のきっかけとして魅力的なイベントやグッズは重要だと感じます。

学生B)普段そのスポーツを見ていない友人を誘いやすいイベントやグッズなどのきっかけは声かけのしやすさに繋がると思います。ただ、一度観戦して楽しかった経験から、来場回数を重ねて“チームのファンになる”という部分に関しては、また一段階大きなハードルがあるなと感じています。

御子柴)スポーツチームとのセールスプロモーションの視点でも、基本的には初回来場だけではなく、長期的な来場を目指しています。来場者の分析からみても、一度のグッズ配布イベントに長期的な来場の効果は感じられず、告知方法を根本的に見直すなど改善の余地がまだありますね。

松浦)誰かを“誘う”というのは大事なキーワードですよね。どんなグッズがあるか、何を作るかという事は、集客にとって重要な事だと再認識させられました。皆さんは何があれば、誘いやすいですか?

学生C)スポーツの試合結果以外の楽しみがあることが重要だと思います。僕が友人をプロ野球チームの試合に誘うときは、「応援を楽しいと思ってもらいたい!」という理由で外野席に行く事にしています。仮に負けてしまったとしても、応援で一体感を感じると、プロ野球観戦の楽しさがわかってもらえるような気がするからです。
例えば、ペンライトでの応援のように、仮に応援歌を知らなくてもリズムに合わせて一緒に振ることで、一体感を感じられるようなグッズがあれば魅力的だと思います。

学生D)イギリスで女子サッカーを観戦した際、応援歌を誰かが指揮をとって歌うのではなく、自然発生的に歌うスタイルでびっくりしました。自分と同年代の女性も多かったのですが、日本と違って試合以外のイベントや来場グッズなどの配布イベントなどもなく、サッカー以外を求めてる人が少ないと感じました。スポーツの種目によっても、国や地域によってもスポーツ観戦に求めるものの違いがあり、おもしろいですね!

地方から好きなチームをどう応援する?

学生)私は奈良県在住で、関東の野球チームのファンクラブに入っています。ホームスタジアムに行って応援することは年1回くらいなのですが、実はファンクラブ特典ではチケットであったり、スタジアムでグッズを配布してくれたりするものも多くて、遠方の僕のような人はメリットを感じないことも多いのかなと思います。

松浦)そうですよね。必ずしもそこに住んでいる方や、アクセスしやすい方々だけがお客様ではないですからね。

学生)いまはグッズなしのファンクラブに入っていて、そうした中で、「遠方でも応援できるグッズ」であったり、「初めて見る!」ようなグッズがあると嬉しいなと思います。

松浦)そうした離れたところにいても、チームのファンに届けることができることもグッズのいいところですよね。

御子柴)私たちも、コアなファンは球場に足を運んで応援するもの、という思い込みがあったのは大きな気づきですね。球場に来れない人も大切なファンとして大切にするようなグッズ提案を私たちもしていこうと思います!

ファンづくりと社会貢献

松浦)ファングッズと社会貢献という視点についてはどうでしょう。社会貢献という要素はファンづくりに寄与するでしょうか?

学生)社会貢献型のグッズはコストもかかり、製作のハードルが高いイメージがあります。コストをかけてでも製作する理由があるのでしょうか?

松浦)とくに社会貢献型のプロモーションでは、売上を主軸に置くのか、ほかの点を重要ととらえるのかはスポーツチームによって異なる事が多いです。

例えばJリーグ・横浜FCは“熱中症ゼロへ”というプロジェクトに特に力を入れています。真夏の試合で保冷剤や塩分補給できる飴を無料配布したり、利益度外視で精力的に活動されていますが、それは屋根のないスタジアムを保有していることが大きな理由です。
夏場に来場される方への安全配慮に関して、“クラブとしてこの活動に注力していることを伝えたい”という意図もあり、コストも承知の上でプロモーションに取り組んでいます。

※横浜FC/オリジナルネッククーラー配布イベントの概要はこちら

社会貢献型のグッズは、人集めのためにというだけではなく、明確な理由があって努力して取り組む形が多いです。その為、同じ競技であっても、どのような球場を持っているのか?地域の課題などに応じて取り組みたいプロモーション(グッズも含む)が異なる可能性も大いにあります。

また、何を作るかも大事ですが、数量を作りすぎてしまうと無駄な消費になり、反SDGsにもなります。コストも承知だから多く作っても大丈夫というわけではなく、緻密な分析や見極めも重要なのです。

アップサイクルはコストが大きい?

松浦さんの説明の中では、ヒロモリさんと大手ドラッグチェーンの活動についてのお話も。未使用の前デザインのユニフォームをアップサイクルする取り組みについて、学生からも自身の学んできたことと絡めての質問があります。

学生)学校で「アップサイクルはコストのほうが大きくなる」と聞いたことがあります。その場合、企業として勇気のいる企画だと感じますが、結果としてどのような効果があったか教えてください。

松浦)おっしゃる通り、企業が取り組む際にネックとなるのはコストが高くなる点です。このキャンペーンでは、未着用の旧ユニフォームを国内の縫製工場で巾着に加工し店頭で配布しました。残った切れ端もサーマルリサイクルという形で燃やしてエネルギーに変え、無駄なくすべてアップサイクルしました。こうした丁寧な作業の一つ一つにコストがかかっているのは事実です。

しかし、コストに対する別の対価がきちんとあります。さまざまなメディアで取り上げられ、注目を浴びたことでのPR効果があったり、キャンペーンの当選者が、巾着を店頭での受け取る設計にすることで来店促進にも繋がりました。
また、見えない部分ではありますが、「SDGsに力を入れているドラッグストアで買い物をしたい」という消費者のファンを作るということも非常に大きなポイントですし、全国の従業員の方々へのSDGsに関しての一斉教育という点でも、このキャンペーンが力を発揮しました。

アップサイクルすることのコストに対し、直接的な売上以外のメリットも含めたリターン設計をすることで実現した1つの事例ですね。

まとめ

セールスプロモーションは非日常のものではなく、私たちの日常の中に企業や団体のさまざまな思惑が絡み合った仕掛けとして自然と溶け込んでいます。
多角的な視点を持って注目して見てみると、変わらない日常の風景もワクワクする光景に変わっていくのではないでしょうか。

参加した学生にとって大きな学びになっただけでなく、主催した株式会社ヒロモリ側にも新たな気づきが生まれたセミナーとなりました。

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