NECグリーンロケッツは、ラグビー『JAPAN RUGBY LEAGUE ONE(ジャパンラグビーリーグワン)』の開幕に向けて、2021年『NECグリーンロケッツ東葛』へとチーム名が変更されました。
選手や会社はもちろん、地域も一緒になって戦っていきたいという思いを込めて東葛地区(千葉県北西部)の「東葛」がチーム名に加わったこのチーム。今回は新しくなったグリーンロケッツについて、スポーツビジネス推進本部選手兼プロモーション担当の吉廣広征さん(以下:吉廣)にお話を伺いました。
ただ活動するだけでなく、前立腺癌の勉強も
ーーまず、昨シーズンまではどのような活動をされていたのか教えてください。
吉廣)チームとしてもともと地域に愛されたいという思いがありました。また、直近の2大会はW杯の日本代表にグリーンロケッツから選ばれていない中で、どのように注目してもらうか、知ってもらうか、興味を持ってもらうか、ということを考えながら活動してきました。
ラグビー教室に関しては、小学校に行ってタグラグビーをしたり、給食を食べたりすることはコロナ前には1か月に2~3校行っていました。特に東葛エリア中心に、教育委員会さんや小学校とも打ち合わせをして、チームとしてしっかり活動できていましたね。
SDGsに関わることでは、「HUNTING WORLD」さんとコラボしてチームのポロシャツを作りました。チームが常に身につけるもので何かSDGsに関わることをやりたいと思い、伊藤忠商事さんのRENU素材を使用することで、いらなくなった衣類を1から再生させてチームのポロシャツを作りました。
他にも、ラグビーのワールドカップのときに、南アフリカの選手が水着を着て精巣癌の啓発を行っているのを見て、私たちも何かしたいと思い、ブルークローバーキャンペーンという前立腺癌の啓発を行っているキャンペーンとコラボしました。(サムネイル写真)
少しでも前立腺癌に興味を持ってもらおうと思い、水着を来てキャンペーンに参加しました。選手たちもただ水着を着るだけではなく、チームとして勉強会を行い、しっかり前立腺癌についての理解も深めました。
ーー選手自身も社会貢献に対して積極的に動かれていたんですね。
練習も社会貢献もオフも全員で!
ーーラグビー教室については、学校の授業の一環として行われているのですか?
吉廣)ラグビー教室は2種類あり、1つは先生に向けたタグラグビー教室です。タグラグビーが、サッカーやバスケとは違い特殊なので、教える学校の先生たちもあまり自信がない場合もあります。なので学校の先生だけを集めたタグラグビー教室を行っています。
生徒向けのラグビー教室は、レベルによってやり方を変えています。部活レベルでタグラグビーを行っているのか、ボールに触ったこともないレベルなのか、事前に学校側と打ち合わせをしてラグビー教室の内容を考えています。部活レベルだと、選手と実際に対決をしたりしますし、タグラグビーの授業を初めてやる学校の場合は、楕円球に触ってもらって鬼っごをしたりしています。選手全員がタグラグビーのコーチの資格を持っているので、選手としてはもちろんですが、しっかりコーチとしてラグビーを教えられるようにしています。
ーー選手が教える資格をちゃんと持っているんですね!
吉廣)そうなんです。私たちのグラウンドに講師の方に来ていただいて講習をしていただき、選手の負担にもならずに資格を取得できています。むしろ選手たちにとっても、いきなり学校に教えにいくよりも、教えるスキルを身につけていた方がラグビー教室を行いやすいのでポジティブに捉える選手も多いです。
ーーブルークローバーキャンペーンなどの活動も含め選手が前向きに取り組んでいる印象があるのですが、選手全員が社会貢献や地域について考えて動かれているんですか?
吉廣)そうですね。「何かやろう!」という時にまとまることができるのが、グリーンロケッツの良さだと思っています。練習に限らず、コロナ前はオフのイベントでもまとまるので、社会貢献活動や、ラグビー教室にも同じように積極的にチームとして動けているんだと思います。
ーーラグビーチームは、企業スポーツの側面も少なからずあると感じますが、こうした社会貢献活動に関して選手・チーム自らの積極性というのが感じられます。
吉廣)そうですね。基本的には、コラボポロシャツ・ブルークローバーキャンペーンなど、チームとしてまずは動いています。やはり自分たちでやりたいとか、まわりに喜ばれるだろうと思ったことをしっかりやる方が相手に伝わると思いますし、今後もその自発的に活動していく気持ちは捨てずにやっていきたいなと思います。
コロナ禍だからこその「教えてロケッツ」
ーー『リーグONE』の動きや、NEC社内でもスポーツビジネス推進部が設立されていくなど、大きく変化しているタイミングかと思います。これからどういう活動をしていきたいと思っていますか?
吉廣)コロナもあるので、今後どのような活動ができるのかまだわからない部分もありますし、考えていかないといけないと思っています。その中で、10月中旬頃にはちば夢チャレンジに参加します。
ちば夢チャレンジは千葉県の主催する企画で、千葉県にあるトッププロチームが学校に行って授業を行うというもので、グリーンロケッツの場合はタグラグビー教室を行います。
リーグが変わったから急に気合いを入れて何かをするというよりも、今できる範囲で地域のためにできることをするというのが、私たちのマインドとしてはありますかね。
ーーちなみにコロナ禍で今まで活動が制限されていると思いますが、逆に何か新しくコロナ禍だからこそできた活動もありますか?
吉廣)これから「教えてロケッツ」という企画を始めます。ジュニア世代のラガーマンからSNSで個別で質問を受けて、それに対して選手が教える動画を作って配信していく企画です。オンラインでの指導など、いろいろと試してきた結果の取り組みで、コロナ禍だからこその企画だと思います。
「うちらのチーム」と呼ばれるために
ーーグリーンロケッツの活動では「地域」が一番のキーワードになっているんですか?
吉廣)もともとはSNSのフォロワーの分布とかを見ても、あまり地域というよりは、いろんなところに散らばっていて、地域色はあまりありませんでした。今回、「地域に愛され、必要な存在になる」と言うコンセプトを掲げたので、これからはもっと地域の人たちに知ってもらい、愛され必要とされるようなチームになっていけるようにしたいですね。
ーー「必要とされる存在」ということですが、地域の人たちから見たときにどういう形でグリーンロケッツを必要とすればいいのでしょうか?
吉廣)私たちのゴールとしては、『地域の方にグリーンロケッツと呼ばれないようになる』ことです。
ーーそれはどういうことでしょうか?
吉廣)チーム名でなく、「うちのチーム」「うちらのチーム」みたいに言われるのが理想です。地域の公園で会って声をかけてもらえる存在でありつつも、試合で見るとすごい憧れられるようなチームになりたいですね。
そういう「うちらのチーム」と言ってもらえる様に、ラグビー教室なども含め、地域の方のためになることを考え、信頼関係を作っていきたいです。
ーーラグビーチームだからこそできる社会貢献の形ってありますか?
吉廣)タグラグビーが一番象徴的だと思います。
タグラグビーは、男女関係なく子どもからお年寄りまで一緒に競技を行うことができます。野球やサッカーとの違いとして、子ども対大人の試合、男子対女子の試合も成り立ちますし、クラブで練習している子たちと私たち日本のトップリーグに参戦するチームが試合をしてもいい勝負になることもあります。
世代や性別を超えて楽しむことができ、協力できるのはラグビーだからこそなのかもしれません。
グリーンロケッツの目指す社会貢献のカタチ
ーー最後に吉廣さんご自身も選手としても活動されています。選手目線でのお話も含めて、今後のグリーンロケッツの目指す社会貢献のカタチを教えてください。
吉廣)私たちの良さは、『自発的に自分たちでやること』と『選手とファンの方の距離が近いこと』だと思っています。「教えてロケッツ」も実際にジュニアの子たちがどのような悩みを持っているか募集して、それに答える動画を選手が撮影し、編集して公開しています。今後は今まで以上に組織としてしっかりしていかなければならないですが、自分たちで企画をするなど選手のスタンスとしては今までと変わらず、自分たちにできることはやっていきたいです。そこは地域にこだわらずに全国の方にも届けられたらと思いますし、選手全員そう思っていると思います。
ーー貴重なお話ありがとうございました!
写真提供=NECグリーンロケッツ東葛