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【対談】バドミントン・藤井瑞希×J-TEC~怪我・リハビリについて考える~(前編)

「再生医療をあたりまえの医療に」を掲げる株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(以下、J-TEC)と、再生医療とスポーツとの関係性を伝える本連載。(全4回)ここまでは代表の畠賢一郎氏(以下、畠)にお話を伺いました。

① 【経営者インタビュー・J-TEC】「再生医療」とはなにものか。
② 【経営者インタビュー・J-TEC】スポーツと再生医療~広まることで深まる知識~

第3回からは女子バドミントン・ロンドンオリンピック銀メダリストであり、先日の東京オリンピックでは解説も務められた藤井瑞希さんをお迎えし、『怪我』に関するリアルな部分を対談を通じて紐解いていきます。
藤井さんの大ケガの裏話や、怪我に対する俯瞰した考え方、アスリートの考えるリハビリや怪我の治療についてなど、表面上では知り得ないアスリートならではの深いお話が盛りだくさんです。

藤井瑞希

キレイに切れた前十字靱帯

ーー藤井さん、畠さん、よろしくお願いします。まず、藤井さんがバドミントンをやられていく中で経験した怪我について教えてください。

藤井)私は、実はありがたいことに25年間バドミントンをしてきて、大きな怪我をしたことが1度しかないんです。それが2012年の前十字靱帯の断裂でした。自分の中でもこれで引退という最後の最後で怪我をしました。怪我をした瞬間に、「これちょっとやばいな」と自分でも分かるくらい、今までにない感覚でした。

畠)私も改めて録画であのシーンを拝見しました。ご自身でも、これはまずいということがわかったのですね。

藤井)そうですね。経験したことのない違和感を感じたのですが、その後一度試合に戻ってるんです。それこそ決勝戦でしたし、それまで棄権をしたことがあまりなかったので、雰囲気的に決勝戦を棄権して良いのかどうかも分かりませんでした。プレーは続けられそうでしたが、膝の上の骨が下の骨の方にガクンといったのを確かに感じました。膝の前十字靱帯の切り方としては、100点満点の切り方だったと思います。友人からも怪我をしたときの映像が授業で使われていたよと報告を受けました。(笑)

畠)1歩前に踏みこんだときに膝が外に出たんですよね。

藤井)バドミントンはネットに当たってはいけないというルールがあるので、当たらないように避けて止まった瞬間にそうなったという感じでしたね。

ーー医師の診断では、前十字靱帯が切れている以外のことで何か言われましたか?

藤井)それがまったく言われなかったんです。私はすぐに試合をやめたので、それが良かったみたいです。前十字靱帯の他に損傷なく済みました。

畠)軟骨損傷と半月板損傷などの怪我がなかったんですね!

藤井)それがなかったのでよかったです。私はあの時、すぐにプレーをやめて良かったと思いました。

藤井瑞希さん

勝利のために体を痛めつける?

畠)全日本総合の決勝という点では、絶対やめたくない試合だったと思うのですが、その点はいかがでしたか。

藤井)私は選手としてもめずらしいタイプだと思うのですが、優勝とかにあまり興味がなくて、自分たちの力を出せれば良いタイプなので、その試合も怪我をするまでは完璧な試合ができていましたし、何より膝の違和感から試合続行不可能だなという気持ちの方が大きかったんです。ですので、棄権を決めて退場する時には悔しさはなくスッキリしていました。まわりのみんなは泣いているのに私だけ泣いていなかったんです。私としては、もう動けないのに、これ以上優勝するために無理して体を痛めつける理由がわからなかったですね。

畠)最後の引退セレモニーの際、スピーチで「一度全日本で優勝したかった」とおっしゃっていましたよね?

藤井)それも自分が、ではなく、パートナー(垣岩令佳さん)を優勝させたかったというのがあったんです。パートナーは負けず嫌いな選手でした。オリンピックを目指すときも、私がオリンピックに行きたいというよりは、もしオリンピックを目指すなら私も令佳とのダブルスで目指したい。令佳をオリンピックに連れて行ってあげたいというモチベーションで頑張っていました。引退セレモニーの際も、私個人としては全然心残りなかったんですけど、思い返すと、パートナーに日本一を取らせたかったなと。

J-TEC 畠社長

長期間のリハビリは厳しい?!

ーーJ-TECさんは膝軟骨を治療する再生医療製品を提供されています。藤井さんがご経験されてきたスポーツの現場では、怪我をしても無理して頑張るということがあると思うのですが、実際の現場では、周りの方は怪我に対してどのような対応をされていましたか?

藤井)そうですね。私の考えとしては、基本的に怪我をしたときには完治して復活するのがいいと思っています。しかし、実際は怪我をごまかしてやりつづけている方が多いと思います。サッカー選手の友人や団体競技の選手である友人と話していると、「ポジション争いがあるから」という理由で怪我をしたときでも、治療しないで続けて、さらに怪我をする選手を見てきています。個人競技の選手でも、契約やスポンサーとの関係もあって、ごまかしながら競技を続けている人が多いような気がします。

ーー藤井さんのダブルスパートナーであった垣岩令佳さんも怪我に悩まされてきたと伺いました。

藤井)そうですね。私のパートナーも膝軟骨の怪我をしていて、今も足を引きずって歩いているくらいです。今は選手をやめてコーチをしているのですが、「手術しないの?」って質問しても、やっぱり手術しないんです。膝が痛くてうまく歩けない状態になっていても、現役を退いているので、わざわざ手術するのは、という思いがあるのだと思います。

畠)選手として、リハビリに1年や1年半かかる手術を受ける決断をすることは、難しいですよね。

藤井)そうですね。さすがに1年間リハビリに時間を使うっていう選手は、ほぼいないと思います。やはり手術をしても3ヶ月から半年で現場に戻りたいというのはあると思います。

畠)そうすると、完治していなくても、ごまかしながらやっていくという感じになるのでしょうかね。

藤井)そうですね。リハビリと並行しながら、70%程度の回復で我慢してやっていく感じだと思いますね。

畠)我々が提供している膝の再生医療は、どうしてもアスリートにとってはリハビリ期間が課題だと思います。

藤井)プロやセミプロの場合、1年半かけて治療した後のことを期待して休ませてくれるチームがあるかどうかというのが、大きなポイントだと思っています。契約を1シーズンずつ行っているケースが多いと思うので、1年間試合に出なくても今までと変わらない給料を出してくれるチームがあるかどうかが課題であり、そのような待遇はトップオブトップじゃないとなかなか受けられないと思います。やっぱりネックになるのはそこですね。

藤井瑞希さん

“コンディションが100%なら、100%の力を出す自信がある”

畠)ちなみに、バドミントンの選手の中には、怪我が慢性化している方って多いんですか。

藤井)バドミントンでは、私以外の人は大体みんな腰・足・首・肩・膝の怪我を経験していると思います。なのでみんな、今日は良い、今日は悪いと日によってコンディションが変わります。私は、「ちゃんと治してからやればいいじゃん」って思って見ていましたね。(笑)

畠)藤井さんがそう考えられる本質って何ですかね。

藤井)自分が100%のコンディションであれば、100%の実力を出せると思っているからですね。体が100%の状態であれば、100%の技術と能力を出せる自信があると思っています。万全の状態で挑んで負けたときの反省点は、技術的なものだと思うのですが、自分の体調が悪いときに出る反省点は、「体を治す」しか出てこなくて、練習してきた意味がないって思っちゃうんです。私の中には、これ以上練習をしたら怪我につながるっていうバロメーターがあったので、怪我をせずに済んだんだと思います。そこが選手生命にとってはすごく大事かなと思っていたので、「これ以上はやらない」ということを何度も選択してきました。

編集より

『自分が100%のコンディションであれば、100%の実力を出せる』

スポーツに真剣に取り組む人たちにとって、怪我というのは大なり小なり避けて通れないものです。さまざまな考え方の中で、上記の藤井さんの言葉はグッとくるものがありました。

アスリートと怪我の向き合い方、考え方という点で多くの気づきを与えていただきました。

次回は引き続き、藤井瑞希さんとJ-TEC・畠社長の対談をお届けします。アスリートとしてのお話、そして子どもたちに伝えたいメッセージなど、盛りだくさんです!(8/27公開予定)

J-TEC 畠社長
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