『電動車いすサッカー』とは、フットガードを取り付けた電動車いすで行われるサッカー競技のこと。障がい者であれば老若男女問わず誰でもプレーできるパラスポーツで、2023年10月にはワールドカップの開催も予定されています。
この記事では、 『電動車いすサッカー』のルールや魅力について分かりやすく解説します。
電動車いすサッカーとは
『電動車いすサッカー』は1978年にフランスで誕生したパラスポーツです。日本では1982年に北米でパワーサッカーと呼ばれていたスポーツを参考にアレンジされ、その歴史が始まりました。
重度の身体障がい者でも車椅子を操作できれば老若男女だれでもプレーできることから、徐々に全国に広がり、現在では約500人の競技者が活動しているとされています。
日本電動車椅子サッカー協会(略称:JPFA)が主催する『日本電動車椅子サッカー選手権大会』や『パワーチェアーフットボールブロック選抜大会』、Jクラブである横浜F・マリノスが主催する『横浜F・マリノスカップ』などの複数の大会が国内でも開催されており、全国の競技者がしのぎを削っています。
電動車いすサッカーのルール
概要
人数はGKを含む4人。公式大会は5歳以上で要障害者手帳を持つ競技者しかプレーできませんが、それ以外では電動車椅子を操作できる方は性別問わず誰でもプレーできます。
試合時間は前後半20分計40分。コートは14~18m×25~30mで、主にバスケットコートで行われます。ゴールは2本のゴールポストを6m幅で設置したものを使用します。
交代はサッカーとは違い、アウトオブプレーであれば何度でも交代して再度プレーに参加することができます。
競技用の車いす
電動車いすサッカーで使用されるのは、フットガードのついた特別な電動車いすです。通常よりも小回りも利いてパワーもある競技用仕様のマシンも販売されています。障がいの症状は人それぞれであるため、操作方法は問いません。競技者は「手・足・口・顎」などの自らが使いやすい部位でジョイスティック型のコントローラーを操作し、フットガードでボールを蹴り、ゴールを狙います。なお、最高時速は10kmまでと制限されています。
3パーソンと2対1(2-on-1)
電動車いすサッカーには『3パーソンと2対1(2-on-1)』というサッカーにはないルールが存在します。
3パーソンは「ペナルティエリアにディフェンスが3人以上入る」ことを防ぐルールです。車体の一部でもエリア内に入っていると反則となってしまいます。もし3パーソンが認められた場合は、相手チームに相手チームに間接フリーキックが与えられてしまうため、注意しなければいけません。
2対1(2-on-1)は「相手守備者はボール保持者の半径3m以内のエリアに2人以上入ってはいけない」というルールです。しかし、GKにはこの2対1(2-on-1)は適応されません。
この2つのルールは、スペースを埋めてプレーを邪魔したり、試合が膠着するのを防ぐために設けられたもので、ポジショニングや試合展開を読む技術が求められます。
電動車いすサッカーの魅力
電動車いすサッカーは大胆かつ繊細なスポーツです。
電動車いすを回転させて勢いよく放たれるシュート、フットガード同士が激しくぶつかり合う一進一退の攻防。彼らがプレーするたびに、ズドン!という激しい音が会場に響きます。狭いピッチの中で常にボールが動くため、ゲーム展開も早いです。サッカーという名はついていますが、その迫力とスピード感はまるでラグビー。大胆で力強く、間髪入れず進んでいく試合には見ごたえがあります。
また、常にボールと選手が動き続けることから、繊細な操作と試合展開を読む能力が求められます。3パーソンや2対1(2-on-1)にならないように動かなければいけませんし、他の選手にぶつからないようにパスを出さなくていけません。身体では電動車いすでプレーする都合上、サッカー以上に高い難易度が求められるでしょう。その中で繰り広げられるドリブルやパス、ポジショニングなどの華麗なプレーも魅力の一つです。
電動車いすサッカーにも”W杯”がある!
2022年11月にカタールで開催されたFIFAワールドカップでは日本代表が大きく躍進。国内でも大きな注目を集めました。そして、2023年は電動車いすサッカーがそれに続きます。2023年10月にはオーストラリアで電動車椅子サッカーの世界一を競う『FIPFAパワーチェアフットボールワールドカップ2023』が開催されます。
第一回は2007年に東京で開催され、アメリカ、ベルギー、フランス、デンマーク、イングランド、ポルトガル、日本の7か国が参加。日本はここで現在までの最高成績である4位という結果を収めました。第二回、第三回はともに5位と、今大会はこれまでを上回る結果に期待が集まります。
しかし、今大会は新型コロナウイルス感染症により大会が延期。感染対策などにこれまで以上に費用がかかってしまいました。そこで今大会では、W杯本戦出場に向けた「日本代表候補合宿・日本代表合宿の費用」を募るため、クラウドファンディングを開催。目標金額である330万円を集め、代表チームの強化を図りました。いつもよりもたくさんの人の気持ちを背負って戦う今回のワールドカップ。この記事を読んだ皆さんも、電動車いすサッカーと日本代表を是非応援してみてはいかかでしょうか。