『エイジズム』とは年齢に対する固定観念や偏見のことです。「年を取ったから物忘れが多い」や「いい年して〜するなんて」などといった言葉は無意識的な年齢差別に当たります。今回はどのような表現が『エイジズム』に当たるのかやその対策について具体例を交えながら解説していきます。
エイジズムの意味
エイジズムとは「年齢に基づいた偏見や固定観念のこと」です。年を取ることに対するネガティブな表現であり、ステレオタイプや差別用語の一種でもあります。
1969年にアメリカの医学者ロバート・ニール・バトラーによって提唱され、「エイジズムとは、年をとっているという理由で高齢者たちを組織的に1つの型にはめ、差別すること」と定義しました。
エイジズムの例
高齢者を子ども扱いする
看護や介護の現場において、名前ではなく「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼んだり、赤ちゃん言葉のような口調で話したりすると、利用者は人としての尊厳を感じにくくなります。
高齢者は~だと決めつける
「老人は若者に立場を譲るべきだ」や「高齢者は頑固である」といった固定観念は人権侵害に当たります。
失敗を年齢のせいにする
物忘れやちょっとした身体の不調を「年老いたからだ」などと発言することもエイジズムに当たります。
エイジズムの問題
無意識な人権侵害に当たる
自分の考えがエイジズムであると気づかずに発言することは相手を深く傷つけたり、高齢者の新たな挑戦や取り組みの妨げに繋がります。
人としての尊厳を感じなくなる
デイサービス事業所のことを託児所になぞらえて「託老所」と呼んだり、利用者に対し「預ける」「預かる」という言葉を家族やスタッフが使ったりすることも、自立した大人としてみなしていないという連想をさせてしまいます。
将来の自分を苦しめることになる
「老い」は誰もが経験することであり、今あなたが高齢者に対して持っている固定観念は将来の自分にも当てはまることになります。
エイジズムに向けた対策
EU
すべての加盟国に対し年齢差別を禁止する法律を制定(2006年)
アメリカ
「雇用における年齢差別禁止法 (ADEA)」 を制定し、40歳以上への年齢差別の規制(1967年)
日本
「募集・採用時の年齢制限の緩和」という取り組みがありますが、実際には義務ではないため効力があまり強くありません。そのため、今後もエイジズム対策を進めていき、高齢者の可能性を広げていく社会システムが必要です。
また、教育現場においてもさまざまな年齢層に対する誤解や偏見を減らしていくような機会の提供もエイジズム対策に繋がります。
私たちにできること
エイジズムを無くしていくためには、一人一人が「人権侵害・差別用語」であるという認識を持つことが重要です。
まずは自身の固定観念に気づきエイジズムを無くしていくことで、身近な高齢者や将来の自分にとって住みやすい世界を構築していきましょう。
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