特集

「お姉ちゃんの理想の介護をつくろう」〜セヌーがつくる介護での働き方〜

介護

少子高齢化が進み、高齢化率(65歳以上の人口の割合)が30%に迫ろうとしている日本において、介護に関する課題は危機迫るものになっています。Sports for Socialでは、『介護』の現状について正しく知るため、『#介護の未来を考える』と題した連載を行います。
ネガティブなイメージも少なくないけれど、日本の未来に必要である介護。興味を持ち、知ることから、介護の未来を一緒に考えていきましょう。

今回お話を伺うのは、Jリーグ・栃木SCに所属するプロサッカー選手の瀨沼優司さん(以下、優司)と姉の瀨沼愛さん(以下、愛)。神奈川県相模原市出身の2人は、2021年9月に『株式会社セヌー』を立ち上げ、2022年2月から在宅介護サービスを展開します。
現役のプロサッカー選手と長年介護職に従事されている姉・愛さんが立ち上げるこの事業に関して、設立の経緯や会社の方針について話を伺いました。

瀬沼栃木SC所属 瀨沼優司選手

ひいおばあちゃんの介護の時に感じた悔しさ

ーーまずはじめに、株式会社セヌーの事業内容について教えてください。

愛)2月1日から株式会社セヌーで始める訪問介護サービスでは、介護保険法による訪問介護サービスと介護予防訪問型サービス、要介護/要支援の方へのサービスを行います。それと同時に、障がい者の日常生活を総合的に支援する居宅介護という、障がい者のためのサービスも行う予定です。

ーー愛さんは長年介護職として仕事をされてきました。どのようなきっかけで介護の世界に興味を持たれたのでしょうか?

愛)私たち家族は、おばあちゃんとひいおばあちゃんを含む7人家族でした。私が高校生の時、ひいおばあちゃんの介護が必要になったのですが、介護をすると言っても何をしたらいいのか何を手伝えばいいのかなどが分からず何もできませんでした。そのときに悔しい思いをしたのが大きなきっかけです。
「次に大切な人の介護が必要になったときには手伝いができるようになりたい」と、大学在学時にヘルパーの資格を取得しました。

ーー優司さんは、ひいおばあさんの介護が始まった時のことは覚えていますか?

優司)僕は当時小学6年生で、正直ひいおばあちゃんの介護にはノータッチでした。学校とサッカーが楽しくて、とにかくそっちに夢中でした。
ひいおばあちゃんの部屋には、たまに元気か確認しに行くくらいで、介護に触れることもなく、家族としてただ一緒に過ごしていた感覚でしたね。そのときはまだ「介護」というものを全く知らず、「自分以外の家族がひいおばあちゃんの面倒を見ている」という認識でしかありませんでした。

ーーそんな無関心だった優司さんが、介護に興味を持つようになったきっかけは、やはりお姉さんの影響ですか?

優司)そうですね。姉が介護の仕事に就いて、頑張って働いている姿を見ていました。介護の仕事は簡単な仕事ではないし、働く時間も長い。それに、家にいる時間もほとんどありません。姉とは何でも話せる間柄で、たくさんの時間を一緒に過ごした関係だったのですが、介護の仕事をし始めてからは一緒に過ごす時間が減ってしまいました。改めて、大変な仕事なんだなと思ったことがきっかけで興味を持ち始めました。

瀬沼家家族写真瀨沼家の家族写真。(右:愛さん、真ん中:優司さん)
左に写る愛さんの妹さんもHP制作などで関わっています。

お姉ちゃんの理想の介護を俺と一緒に作ろう

ーー株式会社セヌーを立ち上げることを決めたのは、どのような経緯があったのですか?

愛)私自身、今後の自分の人生を考えていた時に、優司が「お姉ちゃんは介護の仕事大好きなんだから、お姉ちゃんが思う事業所を俺と一緒に作ろう」と言ってくれたんです。それがきっかけで思い切って会社を立ち上げることにしました。
優司から「地元の相模原が大好きなので、感謝の気持ちをこめて地域に恩返しがしたい」という気持ちはずっと前から聞いていました。そのときは、「サッカーでの恩返しなのかな?」と漠然と捉えていたんです。
そんな優司の想いにも応えて、しっかりとしたものを作りたいと思いました。

優司)僕はずっとサッカーしかしてこなくて、それだけが自分の強みでした。本当にたくさんの方々のおかげでプロサッカー選手になることができて、キャリアを進めてきたのですが、その中でも、自分の原点は相模原だとずっと思っていました。大学で地元を離れてから、その想いがより一層強くなり、「できるとしたらサッカーでの恩返しだよな」と僕自身も考えていました。そんな中、いつも通り家族で会話をしていた時に、会話の流れで自然と、「お姉ちゃんの理想の介護をつくろう」という言葉が出てきました。僕の相模原へ恩返ししたいという想いと、姉の人生を考えるタイミングが合致したのだと思います。

朝早くから夜遅くまで働いて帰ってくる姉の姿をずっと見てきて、正直心配に思っていたこともあります。素晴らしい仕事であるとは思うんですが、体も酷使する仕事なので、そうした心配を家族としてどうよくしていこうと思っていたところから出てきた言葉でもあります。

ーー株式会社セヌーが考える「理想の介護」について教えてください。

優司)私たちの会社では、『働く時間をコントロールする』ということを大事にしたいと思っています。それは、従業員の方には身体や心が無理をしてしまうまでは働いて欲しくないという思いがあるからです。介護職で一生懸命働いてきた姉や、その姿を見てきた僕が作る会社だからこそ大事にしたい部分です。もちろん、頑張らなければいけないときはあるとは思いますが、心がいっぱいいっぱいになるまで働かなくても良いような会社を作ることを目指していきます。
そのためにも、会社に所属する全員の心と体の健康を、自分だけではなく社員全員でお互い守っていけるようにしたいと思っています。自分で守るだけではなく、お互いに守りあえるような環境が理想です。健康で無理しすぎることなく働ける環境を整えていきたいなと思っています。

経営理念株式会社セヌー 経営理念(HPより)

ーー経営理念を拝見しましたが、サッカーの要素も入っているように思えますね!

優司)はい、僕が全部考えました!カズさん(三浦知良 選手)からいただいた、僕の好きな言葉も入れています。

ーー優司さんがサッカーで学んできたこと、それを介護の世界でどのように活かしていくのか!とても楽しみです。

編集より

『#介護の未来を考える』の連載がスタートします。

介護で働くことに対するネガティブなイメージを変えたい、もっと介護を身近なものに感じたい、そう考えて瀨沼さんにお話を伺いました。愛さんと優司さんの姉弟の仲の良さ、そして愛さんの介護という仕事への想いに心打たれます。

後編では、株式会社セヌーが大切にしている『チーム』で働くこと、そして愛さんや優司さんの想いについてさらに迫っていきます。是非後編もあわせてお読みください!

セヌー
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