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WEリーガー常田菜那が考える女子サッカーの現状と未来~社会・地域に貢献する女子サッカー選手へ~

常田菜那

今回の記事では、なでしこリーガーを経てWEリーガーとなった私・常田菜那が、現在の女子サッカーを現役選手目線で考え、女子サッカーの発展に少しでも繋げていきたいという想いで発信していきます。

私がサッカーを始めた当初は、まだまだ“男子がやるスポーツ”というイメージが強く、まわりから珍しい目で見られることが多かった女子サッカー。その頃から私の夢は『なでしこジャパン』。2011年、なでしこジャパンがW杯で世界一になったときの興奮は忘れられません。
その世界一を機に世間は“なでしこフィーバー”に沸き、女子サッカーブームが到来しましたが、結果を出し続けられなかったからか、注目度や観客数は年々減少していきました。

学生カテゴリーから『なでしこリーガー』となり(現在WEリーガー)、「サッカー選手としての価値」について深く考えるようになりました。
いまの私は幼い頃に描いていた“女子サッカー選手”なのだろうか。現在の環境(仕事面や観客数等)の中、“女子サッカー選手”を目指したい子どもたちに胸を張ってその夢を応援することができるだろうか。と考えることが増えました。

世間や、身近な地域の人に夢や感動を与えてこそアスリートの価値があると感じるものの、そういった存在になるには「女子サッカーの認知」が必要だとも感じています。
より多くの人に周知・認知され、サッカーの魅力に触れてもらってこそ、サッカー選手としての価値が高まります。そうなることで「サッカーをやりたい!」と思う女の子が増え、もっと主流のスポーツとなり、女子サッカーを日常的に身近に感じられるものにしていきたいと考える私が、“女子サッカーの現状と未来”について書いてみました。

【現役なでしこリーガーが聞く!女性アスリートと社会課題 #1】女子サッカー選手とセカンドキャリア
【現役なでしこリーガーが聞く!女性アスリートと社会課題 #1】女子サッカー選手とセカンドキャリア女性アスリートに特化した社会的課題に目を向け、アスリート自身が抱えている悩みや、女性アスリートならではの課題に目を向けて、課題解決につながるヒントを見つけるこの連載。 今回のテーマは、「女性アスリート(特に女子サッカー選手)のセカンドキャリアについて」。 なでしこリーグ1部で長年活躍し、2021年に引退し競技生活を退いた後、現在は大阪府で飲食店を経営されている乃一綾さん(以下、乃一)に取材しました。...
【現役なでしこリーガーが聞く!女性アスリートと社会課題 #2】競技でも一流、社会でも一流な「プレイングワーカー」とは?女性アスリートに特化した社会的課題に目を向け、アスリート自身が抱えている悩みや、女性アスリートならではの課題に目を向けて、課題解決につながるヒントを見つけるこの連載。 今回のテーマは、「女性アスリートの社会的価値、地域へのクラブの在り方」。 現在、関東女子サッカーリーグに所属するFCふじざくら山梨(以下、FCふじざくら)は、女子サッカーチームの中でも地域貢献活動や、選手主体での競技以外の活動を積極的に行っているチームです。今回はFCふじざくらGMの五十嵐雅彦さん(以下、五十嵐)にお話を伺いました。五十嵐さんは10年ほどトップアスリートのマネジメントに関わられていました。そこで気がついたアスリートの社会的価値に対する課題をFCふじざくらのチームづくりを通し、女子サッカーの発展に繋げられています。...
常田菜那

女子サッカーの現状「プロリーグ発足も、まだまだ認知度が低い女子サッカー」

現在、日本国内において女子は男子に比べるとまだまだ競技人口もチーム数も少なく、環境面の違いや、観客動員数といった部分からも「認知度」の低さがわかります。

現在の日本の女子のカテゴリー編成は、トップリーグにWEリーグ(女子プロサッカーリーグ)、その下になでしこリーグ1部・2部(アマチュアリーグ)、さらにその下に各地域リーグがあります。

2021年に国内初のプロリーグである『WEリーグ』が発足され、男子同様のプロ・アマの分離が行われた結果、これまでなかった“女子プロサッカー選手”が確立されました。WEリーグは、発足後数年は昇降格なし、新規参入クラブを受け入れるのみのエキスパンション型をとっており、参入条件では「5,000人収容のスタジアム確保」「職員の半数以上を女性とすること(3年以内)」などが求められています。
WEリーグ参入を目指すものの、必要条件を満たすことが出来ないなでしこリーグのクラブも多く、参入に必要な条件が高いハードルになっている現状もあります。

半数以上の選手がプロ契約のWEリーグに対し、なでしこリーグの選手はほとんどの選手が“アマチュア選手”として、雇用先で日中は働き、夕方から練習というハードな競技生活を送っていることから、環境面での選手自身の負担の差も大きいです。

1試合平均5,000人の観客動員数を目標に発足したWEリーグでしたが、2022-23シーズンの観客動員数は平均1,401人に留まり、目標には程遠い結果となりました。
また、なでしこリーグ1部2023シーズンの前期第11節までの1試合平均観客動員数は374人と非常に少ないです。

女子サッカーの日本代表である『なでしこジャパン』では、2023FIFA女子W杯前の7月に日本で開催された国際親善試合の観客動員数は10,206人(vsパナマ/ユアテックスタジアム仙台)。コロナ禍前の2019年のフランスW杯後に行われた国際親善試合(vsカナダ/IAIスタジアム)とカップ戦(vs南アフリカ/北九州スタジアム)の2試合の平均観客動員数は8,288人であることから少しずつ増加傾向にあるが、男子に比較してみるとまだまだ少ない印象があります。(3月と6月に行われた男子日本代表のキリンチャレンジキリン2023の4試合の平均観客動員数は38,566人)

このことから、代表の試合でも観客動員数は伸び悩む厳しい現実があり、女子サッカー全体がまだまだ認知されていないことがわかるでしょう。

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サッカーを通じた女性活躍、SDGsの加速を~大和シルフィードの取り組み~「女の子でもサッカーを楽しみたい。」そんなシンプルな想いで1970年代後半から活動を開始し、1998年には大和シルフィードとしてクラブ化、現在まで続く女子サッカークラブである『大和シルフィード』。その活動は、なでしこリーグ1部での競技にとどまらず、育成年代の活動から、SDGsを意識した社会との連携の活動にまで及んでいます。神奈川県の事業にも参画する大和シルフィードの取り組みには、どんな想いが存在するのか。代表を務める大多和さん、スタッフの橋本さんにお話を伺いました。...

常田菜那が感じる課題「スタジアムに足を運んでもらうために、応援してもらう相手側に寄り添うこと」〜0から1を生み出すために〜

テレビやWEBでのスポーツニュースで、男子サッカーほど大々的に取り上げられることが少ない女子サッカーは、トップリーグであるWEリーグの情報ですら世間では日常的に目に飛び込んで来る機会がなかなかありません。『Jリーグ』に比べて『WEリーグ』と聞いてピンとこない人も多いように感じています。そういった面から女子サッカーはまだまだマイナースポーツの位置付けであると私は考えています。

リーグ戦が、どこで・いつ開催されているのかが世間に知られていない現状があり、スタジアムに足を運んでもらう機会を増やしていくことが重要になってきます。
リーグ全体での周知活動、選手自らのSNS等での発信、イベント開催でのPR活動などの機会を意識的に増やし、より周知活動に力を入れていくことが観客動員数増加に繋がることは言うまでもないことです。その中でも、地域に根ざしたクラブを目指し、クラブとして、選手として地域に寄り添い、その地域から必要とされる存在になるための活動が大切だと感じています。

Jリーグが「Jリーグ百年構想〜スポーツで、もっと、幸せな国へ。」というスローガンを掲げ、「地域に根ざしたスポーツクラブ」を核とした活動を各クラブが積極的に行っているのに対して、女子のクラブはカテゴリー問わずそうした活動の量が少ない印象があります。Jリーグのクラブのように、その町のシンボルとして存在し、地域をあげて応援されるクラブにしていくためには、ただ単に「応援してください」「試合を見に来てください」というだけではダメで、応援してもらう相手側に寄り添うこと、地域に貢献できる活動を通して、「応援したい」と思ってもらうことがとても大切です。

いかに選手が地域の人やサポーターと直接的に関われることが大切であるのかを、私自身地域に対する取り組みを通して実感しました。前所属クラブ(伊賀FCくノ一三重)では、地域のお店に自ら一軒一軒足を運び、ポスター配りや告知を行ったり、地域のゴミ拾い活動を通して地域の人と直接的に会話をすることで、応援の輪を広げることを実感しました。直接関わることで自分がどういう選手で、どういうクラブに所属しているのかを知ってもらえます。また、どういう想いを持って取り組んでいるのかを知ってもらえば「応援したい」「一度試合を見に行ってみたい」と思ってもらえます。0のところから1を生み出すためには、そういった直接的に関わる機会を作ることが大切だと強く感じています。

カテゴリー問わず、女子サッカー全体が“クラブとして”、“選手として”その地域に対して貢献できるようなアクションを積極的に行って、その町のシンボルとなることが女子サッカーの認知度を高めることに繋がるのではないかと考えています。

“女子サッカー選手”自身の価値を高めること~“プロ”だからこそ社会に目を向け、自らの存在意義を見出す~

“女子サッカー選手”とは社会でどういった存在で、どのように貢献するのか?

これは、娯楽であるスポーツを職業とする立場になったとき、自然と芽生えてきた思考です。

今まで「好き」でやってきたことが「仕事」となり、もちろん社会に対して貢献していかなければならない。私がそうであるように、ほとんどの選手が「好き」でサッカーを続けています。自分の好きなこと、自分を磨くことを仕事として生活するようになったとき、アスリートはただ単に競技をしているだけでは、世間一般の社会人と比べて社会的貢献度は低くなると感じています。がむしゃらに競技に打ち込んでいた学生時代から「アスリートとしての自覚」を持つような思考転換ができるような機会が選手には必要です。よりスポーツ選手としての役割、自覚が必要となり、競技以外の部分でも社会に目を向け、社会貢献の意識を持たなければなりません。もちろんアスリートとして、自身を鍛え結果を生み出すことが一番の役割であることは変わりません。その中でいかに選手としての価値を高められるかが、社会への貢献に繋がるのだと感じています。

前所属クラブ(伊賀FCくノ一三重)は、アマチュアリーグであるなでしこリーグの位置付けであったことから、毎日雇用先に勤務しながら競技に打ち込んでいました。アスリート雇用ということもあり、競技を第一に優先してもらえる職場環境ではありましたが、社会との接点を持っていることで競技生活だけでは得られない刺激を感じることができていました。一般企業の中の仕組みや、そこで働く人たちの立ち振る舞い、関わり方から多くのことを学ぶことができました。それに比べ、WEリーグはほとんどの選手がプロ契約です。“プロ”としての覚悟や自覚はより一層高まり、結果を出さなければ生き残れない世界であるので、その分野で結果を出すこともより一層求められます。結果を出すための“プロフェッショナル”なマインドを築き上げるのと同時に、社会的貢献や社会的位置付けにも目をやり、自らの存在意義を見出すことがとても大切だと感じています。自己投資できる時間が長い分、その時間をどのようにマネジメントしていくのかを考えたときに、社会や身近な地域に目を向けて、アスリートとして貢献できる取り組みを積極的に行えたら選手自身の社会的価値は高まるのだと思います。
まだまだ主流ではない女子サッカー界の中で、“女子サッカー選手”としての価値を高めることが、女子サッカーの発展に少しずつ繋がっていくのでしょう。

ポーツマス大学
【イギリス・ポーツマス大学】募金や寄付を企画する“RAG”という役職とは!?大学女子サッカー部による4つのチャリティ活動今回は、Sports for Social初となるイギリスの活動を取材しました! イギリス南部にあるポーツマス大学には140を超える運動部が存在します。サッカー部やバレー部から、日本では聞き馴染みのないクリケット部やネットボール部などもあります。スポーツに関連した学部だけでも、スポーツマネジメント学部、スポーツ心理学学部、さらにEスポーツコーチング学部など幅広く学ぶことができます。 取材を行ったのは、女子サッカー部に所属し、ポーツマス大学3年運動スポーツ科学学科のFreya Bartlettさん(以下、Freya)。実際にサッカー部が1年を通して行ったチャリティ活動を、4つ厳選してお話を伺いました。...
常田菜那

「女子サッカーって面白い」と思ってもらえるようなアプローチを

7月20日に開幕した女子W杯で圧倒的な強さを見せ、世界になでしこ旋風をもたらしたなでしこジャパン。今後の世界大会でも強さを見せつけ、結果を出すことで再び日本国内で「なでしこフィーバー」を巻き起こし、注目度を上げ集客や発展に繋げるだけでなく、一時のブームから文化に根付くことに期待がかかっています。強豪国のスペイン相手に圧勝した今回のW杯からもわかるように、競技自体のレベルが上がり、個々のレベルも上がっています。競技の質が上がることでより女子サッカーに関心を持ってもらえるきっかけになります。試合を観に来てもらうには、その中身の質が高いことが求められ、「女子サッカーって面白い」と思ってもらうことが大切です。

そこに足を運んでもらうまでの働きかけや取り組みも課題であり、力を入れるべき部分であると思っています。そのアプローチの質も上がれば、女子サッカー全体に対して「おもしろい!」と興味を持ってもらえます。競技自体のレベルを上げていくことと同時に、“女子サッカー選手”としての価値を高めていくことが、課題である「集客」や「認知度」に対して大きな役割を果たすのだと思います。

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教員も諦めず、サッカーで世界を繋ぎたい〜JICA × Sports for Social Vol.3〜女子サッカー WEリーグにおける『WE ACTION DAY』。なかでも印象的なアクションに選ばれたのは、JICAとの協力で実現したアル...

その地域になくてはならない存在に~女子サッカーに恩を返していきたい~

まだまだ主流ではない女子サッカーだからこそ、“女子サッカー選手”が社会に対してさまざまな角度から貢献し、その地域になくてはならない存在になるべきだと強く感じます。「女子サッカークラブがこの町に存在してくれて良かった」「女子サッカー選手から勇気をもらい、夢を与えられた」といった声が広がり、身近な地域から豊かさを提供できる存在になっていきたいです。そうなることで「サッカーをやりたい!」と思う女の子が増えて、どんどん女子サッカーの輪が広がっていきます。選手自らの意識や小さなアクションから、女子サッカーの発展へと繋げられたらいいと思います。
幼い頃からサッカーから多くのことを学び、成長させてもらった。サッカーの魅力に触れ、夢を持つ喜びを感じてきました。
女子サッカー選手として「与える側」になった今、多くのことを与えてくれた女子サッカー界に対して自分なりに恩を返していけるような行動をしていきたいと強く思っています。

文:ノジマステラ神奈川相模原 常田菜那

常田菜那
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