Jリーグ・大分トリニータでは、ユニフォームスポンサーおよびソーシャルアクションパートナーであるネットワンシステムズ株式会社と協力し、社会貢献活動に積極的に取り組んでいます。
今回は、アンプティサッカー『FC九州バイオラール』の加藤誠さんへのインタビューです。
「何かを失っても、もっと人生は輝ける」
そんなメッセージを持つ加藤さんが、パラスポーツを通じ、また日本代表の経験を活かしながら共生する社会を目指し挑み続ける理由とは何なのでしょうか。
「年齢や性別、障がいの有無を超えて誰もがスポーツを楽しめる社会を作る――。」
パラスポーツの普及に邁進している、『FC九州バイラオール』というアンプティサッカーチームを運営する加藤誠さん。
自身も24歳の時、事故で左足を失いました。そんなとき、上肢又は下肢の切断障がいを持った人々により行われるアンプティサッカーに出会い人生は一変しました。
突然の事故 そしてアンプティーとの出会い
加藤さんを事故が襲ったのは24歳の時。
自転車での通勤中、青信号の横断中に左折してきたトラックに巻き込まれ左足を失いました。何が起きたのか分からないまま片足を失い、皮膚移植などを繰り返しながら1年間に及んだ入院生活。言葉では言い表せないほどの大きなショック、そして一変した状況、更に小中高とサッカー部に所属していた加藤さんは、大好きなサッカーができないことにひどく落胆したと当時を振り返ります。
ようやく勤めていた仕事にも復帰した頃、東京でお世話になっていた義足技師の方の勧めでアンプティサッカーを知った加藤さん。
「最初は片足でサッカーなんて…とお断りしました。でもその時にアンプティサッカー選手の動画を見せてもらって、素直にすごい!と思いました。」
その動画に映っていたのは、アンプティサッカーのブラジル代表・エンヒッキ・松茂良・ジアス(通称ヒッキ)選手。片足とは思えないほど華麗にリフティングをこなし、プレーする姿に魅せられた加藤さんは縁あって彼の作った代表チームメンバーとして声がかかり、仕事を辞め東京へ。
「初めてのチームだったので、来れば日本代表だよと言われたんです(笑)。もちろん色々考えはしましたが、人生で日本代表になる事なんてあり得ない経験。初心者で迷いはしましたが決断しました。」
こうして第2のサッカー人生をスタートさせた加藤さん。大好きなサッカーを再び楽しめるチャンスを掴み、2010年ワールドカップへ出場しました。初戦は開催国のアルゼンチンという強敵相手に8-0で敗戦。出来たばかりのチームだけに無理もないと思いながらも、加藤さんの胸には悔しさと情熱と希望が宿りました。
失ったものより得たものの大きさ
「日の丸を背負って、君が代を唄えたことは本当にすごい経験でした。でも試合は、個人としてもチームとしても全然通用しなかった事が悔しくて。帰ったら自分でチームを作ろうと心に決めました。」
日本代表になるという感動を、少しでも同じ状況の人たちに伝えていきたいと帰国後すぐに動き出した加藤さん。ゼロからの出発、何から手をつけていいのか分からないながらも新聞社やテレビ局を自ら巡る日々。アンプティサッカーの仲間をつくり、共に楽しみながら高みを目指したいという想いだけを胸に無我夢中で走り回りました。
「誰もいない所からのスタートでしたが、1人また1人と増えていく事が本当に嬉しかったですね。大変でしたけど当時が一番楽しかったですね。」
現在13名となったFC九州バイラオールは、定期的な練習を重ね数々の大会に出場し優勝経験も重ねる強豪チームに成長。アンプティサッカーの普及のために体験会や講演会にも積極的に参加しています。
「講演会でも話すのですが、片足を失って本当に良かったなって思っているんです。本当ですよ(笑)。年の離れた学生たちと一緒にサッカーをしたり仲間になったり、アンプティサッカーを通じて今まで出会うことのないだろう人々に沢山出会えました。失ったものより、それにより得たものの方がどれだけ大きいか分かりませんから。」
事故に遭い悲しみの底を経験した加藤さん。アンプティサッカーとの出会いが人生を大きく変えました。
みんな同じというメッセージ
「体験会もよく行いますが、障がい者が頑張っていると思われるのではなくて思いっきりシュートを放って“すげえ!”って思ってもらいたいんです。障がい者ではなく1人のプレイヤーとして。」
今、彼が伝えたいのは一人ひとりの意識を少しだけ変えてほしいという想い。自分たちができるだけ多くの人に会うことで、障がい者に対する意識は変化するのだと加藤さんは言います。
「共生する社会に向けて、健常者と障がい者の壁を取り払うために僕たちがいるのだと思っています。体験会で会う小さな子どもたちも、会って話せばどんどん表情も柔らかくなるし、今後その子たちの障がい者の見方も変わるのだと思います。そんな風にスポーツを通じて障がい者でも普通にプレーできること、みんな変わらないんだという意識を少しでも持ってもらえたらうれしいですね。」
障がいを持ちながらも、夢を持って打ち込めるものがあれば人生はもっと輝けるということを教えてくれた加藤さん。でもそれは障がいの有無に関係なく、すべての人に伝えたいメッセージです。生まれつきの病気や予期せぬ出来事に見舞われることは、誰にでも起こり得ること。みんな同じだという意識を持つことで、もっと未来は明るく過ごしやすい社会が創れるのではないでしょうか。
加藤誠(かとう・まこと)
1983/3/31生まれ。大分県速見郡出身。
2011年FC九州バイラオール設立。
その後、アンプティサッカー日本選手権で優勝、準優勝を重ね、2012年アンプティサッカーW杯ロシア大会、2014年同大会メキシコ大会へ出場など多くの記録を持つ。またチーム活動の他にもアンプティサッカーの普及のため体験会、講演会を全国で実施している。
引用元:https://www.netone.co.jp/csr/social-action/oita-trinita/activity-report/20210813.html