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【シャレン!/ヴァンフォーレ甲府】ヘルスケアのイノベーション~長年続くことをさらに発展させる~

ヴァンフォーレ甲府 事業コンセプト

Jリーグ社会連携(以下、シャレン!)で開催のシャレン!アウォーズ2021にエントリーした活動内容の裏にある想いを取り上げるこの連載。今回は地域密着という点で大きく前を行く、ヴァンフォーレ甲府の活動を取り上げます。エコスタジアムの活動などで環境省からも評価され、SDGsの取り組みが注目されはじめたクラブですが、地域と密接に結びつき、「山梨のために」という想いのもと活動している事業にもイノベーションが起きていました。

今回は、一般社団法人ヴァンフォーレスポーツクラブの長田さん(以下、長田)にお話をお伺いしました。

社会課題解決型のヘルスケア事業

ー今回シャレンアウォーズに出された、「社会課題解決型のヘルスケア事業」について教えてください。

長田)簡単に言うと、全国的にも社会課題となっている年齢の高い方々へのフレイル予防、要介護領域に入っていかないための健康維持のお手伝いをしています。Jリーグとしても、ヴァンフォーレとしてもこの活動は10年以上やってきていて、会場も県内4か所で行っています。

2017年にサッカー以外のスポーツやヘルスケア分野、社会課題解決を主とした総合型地域スポーツクラブ「一般社団法人ヴァンフォーレスポーツクラブ」を立ち上げて、事業の一部を株式会社から移管したこともあり、毎年続けてきたものをもっと深堀りして、我々がやっていることを通じて多くの県民が健康になることを目指していこうと考えました。これまでの活動では感覚値でしかなかった”健康”というものを可視化できるようになれば、参加者の指標づくりになり日々の意識向上にもなる。プログラム化することで、参加者や実施地域を更に増やせればより多くの方の健康づくりに寄与できるのではと考えています。

シャレン_ヴァンフォーレ甲府

ー経済産業省の「地域企業イノベーション支援事業」に採択をされています。どういった点が評価されてそこに至ったとお考えですか?

長田)いままで、地域イノベーション事業というのはモノづくり事業が中心で、スポーツクラブの事業というのはなかったんです。様々な考え方がありますが、目に見えにくい健康というものを追っていく中で、そこをいかに目に見えるように、可視化できるようにするか、という取り組みが評価されたのだと思います。さらに、はくばくさん、クスリのサンロードさんなどの地元スポンサー企業や複数の行政を絡めたこと、県外で先進的な取り組みをされている、AIを活用し動作分析を行っている「㈱Sportip」さんにご協力をいただいたり、筋肉量を超音波で一瞬で測る「(株)グローバルヘルス」さんなどと一緒に関わることができたことで、ヘルスケアの事業としての経済的な発展性も評価されたと思っています。

ーこの事業に対して、まわりの企業、地域の有望企業も含めてやっていかれていますが、企業さんの反応はいかがですか?

長田)この事業に関して、現時点で明確な成果が出てはいませんが、将来的に発展的な取り組みになる可能性を感じています。また、ある企業さんは今回僕らの取り組みで一緒になった企業と別の事業で一緒にやられたり、我々がハブとなったことがきっかけで新しいものが生まれていったりもしています。

シャレン_ヴァンフォーレ甲府_社会貢献活動_プロジェクト体制図

イノベーション事業からの発展

長田)これまでの健康維持の活動の課題として、運動する、結果が出る、ということが目に見えるのは、10回のプログラムだとすると1回目と10回目だけということが多いです。健康になる活動であったかどうか、という評価はそれである程度できると思うのですが、これをいかに年間を通じた活動にしていけるか、というところはまだ課題です。

どんな健康を目指す活動も、日々の行動変容につなげることが重要で、それがないとその人の健康寿命を延ばしたり、医療費削減につながったりはしないと思っています。これからは、そこにうまくデジタルを絡ませて、例えば1週間に1回のプログラムだとしたら残りの6日間どう過ごしているのかをデータとして蓄積させたりして、より通年で健康をサポートしていきたいと思っています。

なおかつそこに、1万歩歩いたらポイントに還元されて、それがクラブ独自のポイントとして加算されるような仕組みをつけ、最終的にはクラブのスポンサー企業のお店に行って割引を受けられるようになると理想的です。すでにある形かもしれませんが、「動く」⇒「評価する」⇒「還元される」⇒「モチベーションUP』、そしてまた動くというサイクルを作ることが出来れば、「おらが感」を持ちながら身近な活動として持続性の高い健康づくりに繋げられると思います。

ーこれまで高齢者向けだった活動から、デジタル化の方向に舵を切ったキッカケはなんだったんですか?

長田)単純に、キャッシュレス化やチケットのデジタル化が進む中で、スマホの普及率も高くなっていることが背景にあります。我々のクラブは地方にある小さいクラブで、人口年齢分布のピラミッド同様にサポーターさんの年齢層も高いんです。スマホの使い方がわからない、という方も多い中で、私の母もそうなのですが、健康教室などをキッカケにヴァンフォーレと関わって、共通の話題の中で、仲間と一緒にスマホを触ってみたら使えるようになったとか、今回で言えばポイントが貯まるという様なキッカケも手伝って、小さいかもしれないけれども知らぬ間に個人個人がDX化していったというようなこともクラブとしての役割、価値なんじゃないかと思っています。ヴァンフォーレがきっかけで、そういったものに触れて、少し慣れていくような。

ー今回の活動で選手の関わりはありましたか?

長田)実際、昨年はコロナ禍で選手と参加者が触れ合うことが難しかったです。

ただ今年は、すでにSportipさんのAI解析アプリを使って数選手の姿勢を実際に測定して「プロってこんな姿勢をしているんです」というような事例紹介をする準備をしているところです。やはり、プロ選手の実例を使って、到底追いつけない数値を見せたり、逆に選手だって実は曲がってるんですよなどと身近な存在である選手を話題に出来ることは有益なのではと思っています。

筋力測定についても、一般の方が5mmの筋肉の厚みだとしたら選手が15mmくらいあったりとか、そういうのを画像として見せながらやっていこうと思っています。一般の方も見たことのない画像だと思うので、それが自分の状態に興味を持つことやモチベーションのアップになってくれれば良いなと思っています。

シャレン_社会貢献活動_ヴァンフォーレ甲府

「すこし、やる気が出たようだ」

ーこの事業でうれしかった体験はありますか?

長田)すごくうれしかった体験がありました。70代後半のおとうさんで、引きこもり気味になっていた方なのですが、今回このプログラムがあるということで、近所の方が引っ張り出してきてくれて。初回お会いしたときは、筋力が低下している自覚があって姿勢もすごく悪く猫背でうつむき加減で、正直すぐ離脱してしまうかもなと思っていたんです。でも3回目以降、だんだん喋るようになってきて、「久しぶりに庭の剪定をしたよ」とか「他の運動教室に出たらケツがいてーんだよ」とか。(笑) 結局、私の心配をよそに全10回すべてに参加されました。最終回のアンケートをとったらそこに一言、「すこし、やる気が出たようだ」と。引っ張り出してきてくれた方も「本当に変わったのよ。連れてきて良かった」と、言ってくれて。これは本当にうれしかったです。

自分たちのやってきたことの価値を本当の意味で実感することができました。

ーそれは素晴らしいですね。

長田)体を動かすことで、ちょっと汗をかくことであったり、仲間と一緒にやることであったり、良い意味でストレスの発散や健康に繋がる場になっているなと感じています。SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)を最終目標とした数値化を継続していくことは難しい道のりだけれども、1回1回の現場では確実にメンタル的な要素に働きかけ効果が出ている、ということは改めてハッキリとわかりましたね。そうした部分はこの活動において評価されるべき部分だと思うので、そこにプラスアルファで効果を可視化することを続けて、多くの方のモチベーションを長く維持する良いきっかけになってくれればと思っています。今回シャレン!アウォーズに出させていただきましたが、世の中のたくさんの人に評価される、というところではなく、地方の1クラブとして今後も地元山梨のため、もっと言えば目の前の10人15人が喜んでくれるようなことを続けていきたいと思います。その積み重ねがやがてより多くの方々の健康に寄与する活動になってくれると信じているので。

ーありがとうございました!今後の活動も注目しています!

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