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ソナエルを始めた理由~Jリーグ・シャレン!ソナエル東海~

「Twitter上での『ソナエル東海杯、やってて良かった。』あのつぶやきに勝るものはない。」

『備えるを、楽しもう』のコンセプトで、防災力向上に取り組む『ソナエル東海』。Jリーグのシャレン!の取り組みの1つとして発足してから1年経った今年、全国規模で『ソナエルJapan杯』が始まりました。

防災を軸に活動を行う背景、想いについて、ソナエル東海発足当初から活動をサポートする大多和亮介さん(以下、大多和)、ヤフー株式会社SR推進統括本部CSR推進室災害チームの安田健志さん(以下、安田)にお話を伺いました。

ソナエル東海発足前からの盛り上がり

ーー昨年(2020年9月1日)、『ソナエル東海』が発表されましたが、大多和さんはどういった形で関わっていましたか?

大多和)私は、2019シーズンまで横浜F・マリノスというクラブに在籍していました。そのシーズン、運よくJ1リーグを優勝することができたのですが、それ以上に、リーグ記録でもある6万3854人の入場者数の記録を打ち立てることができたことが大きな節目となり、今は女子サッカー界(※)で働いています。(※大和シルフィード 代表)
マリノスではマーケティング責任者を務めていたのですが、2018シーズンごろから、当時としては珍しく、マーケティング部門の中に「ホームタウン活動」が組み込まれていました。

マーケティングの立場から『シャレン!』へ取り組む、ということが各クラブの中でも珍しかったようで、私が2020シーズンから大和シルフィードへ移る際に声をかけていただいて『シャレン!』のコアメンバーとして参画することになりました。

2020シーズンの『シャレン!』は4つのテーマを掲げていました。(高齢者、子ども、1次産業、そして防災)そのうち私は「防災」を任せてもらう形でスタートしました。

ーー大多和さんが関わる前から、東海クラブの防災への盛り上がり自体はあったんですか?

大多和)2020年2月にJ3のアスルクラロ沼津が、地域の防災マップ作りという活動をしていました。これは、選手と子どもたちが地域を一緒に歩き「ここ危ないよね」「もしもの時はこっちじゃなくてあっちから逃げようね」など取り組んでいたもので、素晴らしい形での取り組みでした。
そしてこの沼津の活動を知った残りの東海クラブが、「この活動すごくいい。沼津すごいね。」と。この動きがソナエル東海に繋がりました。

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それぞれのクラブが持つ『強み』を活かした活動

ーー「防災」という観点での活動で、どのような点を重視しているのでしょうか?

大多和)災害に対してスポーツ、Jリーグが持つ力は大きいと思っています。Jリーグで東日本大震災をきっかけに始めた『TEAM AS ONE』という募金活動ですが、6億円を超すお金を集めています。これは本当に素晴らしいことです。川崎フロンターレを筆頭に被災地でも、いろんな活動、しかも本質的な活動の長期的な活動を行っています。

「Jリーグの力だ」とか、「スポーツってやっぱり素晴らしい」となりますが、募金や復興支援は、いずれも災害が起こった後のことなんです。

東海クラブと防災について議論を始めたとき、最初に全員の軸を置こうとしたのは、「起こる前に我々に何ができるだろうか」というところから始めたんです。

巻誠一郎さんを始めとし、クラブや行政の方、一部企業の方や災害ボランティアの方にもご参加いただいて議論を深め、「備えるを、楽しもう」というコンセプトで動き出しました。

ーーなるほど。そうした考えでの動きだったんですね。実際のアクションのところは、アスルクラロ沼津さんなどクラブ側で既にあったものもあるんでしょうか?

大多和)そうですね。例えば、名古屋グランパスさんも既に地元の消防署と連携して活動されたりしていました。そして、南海トラフ地震のリスクにさらされている東海クラブみんなでやっぱり手を合わせていこうという動きに繋がる個別のアクションはありました。しかし、同じ静岡県でも、清水地区のリスクと藤枝地区のリスクの内容は全然違います。だからこそ、まずはそれぞれのクラブが置かれている地理的な、物理的な危機感に沿っていくっていうことと、そしてそれぞれのクラブが持っている『強み』をしっかりと組み合わせる形で始めていただいていく形になりました。

ーー印象に残る取り組みありましたか?

大多和)藤枝MYFCさんは、藤枝市さんとのタッグがすごいんです。
ちょうど昨年のソナエル東海が始まった頃は、感染症の影響で避難訓練ができなくなってしまっていた時期でもありました。そこで、「在宅避難訓練をやりたい、だけど周知する方法に困っている」という藤枝市側の課題の解決に藤枝MYFCさんが協力することで、ほとんどの藤枝市民を巻き込むような形でやられていたのは、Jクラブが防災に関わる価値を感じて印象的でしたね。そしてアスルクラロ沼津さんの「全力防災隊」。地域へのアプローチという視点が多い中で、まずはクラブに関わる人たちを防災のスペシャリストに育てようという活動で、他のクラブにとっても参考となることばかりです。

「他人事じゃない、自分事なんだ」と自覚してもらいたい

ーーヤフーさんとの関わりのきっかけは、どういったところにあるのですか?

大多和)たまたまヤフー株式会社の災害チーム・安田さんの上司と私が別の場所でお会いする機会がありました。Jリーグで関わっている仕事の相談もしていくうちに、安田さんを紹介していただき、安田さんに超スピードでいろんなことを動かしていただいて、実現に至りました。

ーーなるほど。安田さん、当時を振り返っていかがですか。

安田)ヤフー独自で行っている防災模試を立ちあげた当初は、1ヶ月期間限定のコンテンツを2018年3月、9月、2019年の3月って3回実施しました。より多くの方に災害知識の啓発をするためには期間限定ではなく、常時受験できるようにしたほうがいいと思い、常に受験できるようにいたしました。
しかし、平時だと皆さん災害について「なんとかしよう」という意識が向かないのが実情で、いかに「他人事じゃない自分事なんだ」と自覚してもらうかを考えていました。そんなところにJリーグさんとのお話をいただいて、まさに「渡りに船」という感じでしたね。

ーー安田さんが防災に対して取り組まれる背景には、どのような防災への意識があるのですか?

安田)私は2011年の東日本大震災を会社の20階のフロアで迎えました。当時Yahoo! JAPANのトップページを担当していた私は「被災者だけでなく、被災者の周りにいる方々に対して情報を」という使命感を持って情報発信に取り組んだことを覚えています。その中で計画停電をいかに防ぐかという課題が発生し、お客さまがいる地域が今どのくらい電力を使っているのかを可視化する仕組みを作りました。
人の役に立つ情報コンテンツ配信を通して、より多くの方に感謝を受けることができることを実感し、いまでも災害、防災に関してモチベーション高く業務に当たっています。

ソナエル東海杯、1か月の展開

ーー2021年6月にヤフー防災模試と絡めた『ソナエル東海杯』を行いました。各クラブのサポーターが、どれだけ防災模試を受験したかで優勝を争ったものです。初めての取り組みでしたが、いかがでしたか?

大多和)多くの人に防災に興味を持ってもらおうという定量的な部分では反省すべき点は残りますが、順位はおもしろい結果になりましたね。印象的なのは、FC岐阜が清水エスパルスに勝ったことです。クラブの規模、サポーターの数では差がありますが、FC岐阜さんはクラブ職員や自分たちのファン・サポーターに丁寧にコミュニケーションを取り、多くの方にアクションしていただける形を作っていました。

最終的には、名古屋グランパスさんが、ずっと首位だったジュビロ磐田さんをほぼ最終日に抜く形で優勝しました。市長も巻き込んで行政と連動したり、クラブのファンデータベースを活用したり、スポンサー企業を巻き込んだり、それぞれのクラブで戦い方にも色があり、興味深かったです。

でも何においても一番は、令和3年7月伊豆山土砂災害のときのTwitterでのつぶやきです。ちょうどこの企画が終わった数日後に災害が起こってしまいました。そのあとTwitter上で「ソナエル東海杯やっててよかった」「避難勧告がどれくらいのものかわかった」というつぶやきがありました。もうあれひとつで本当ににやってよかった、とひしひしと感じています。

安田)「やっててよかった」というコメントは、私にとってもすごくありがたい一言でした。今回の取り組みの達成感・やりがいを実感しています。
これまで触れるきっかけすらなかった方々がいることを考えると、非常に有意義なことだったというふうに捉えています。

今東海で起きている流れを全国へ

ーー2021年9月1日から、『ソナエルJapan杯』が始まっています。Twitter上でも各クラブ大きな盛り上がりを見せていますね。早いタイミングで全国に広がった背景にはどういったことがあるんですか?

大多和)これはもうヤフーさんのおかげです。よく1年でここまで来れたと思うもう一方で、本当の意味でのソナエルJapanにしていくには各地で今、東海で起こっているような流れを波及させていく必要があると思います。

安田)私たちとしてもやっぱりヤフー「ジャパン」なので、ジャパン全体でやりたい気持ちもありました。ですので、スピード感をもってここまでこれました。1年で見たときに、3月11日と9月1日という節目、そして多発する以外という観点で6月の取水期という節目は外せない、ということで大多和さんには少し無理をお願いしましたが、トントンとやらせていただけて良かったです。

大多和)今後は、ソナエル関西、ソナエル九州などのアクション的な広がりも今後できていければと思っていますし、それこそJリーグにこだわる必要もないと思っています。
BリーグやWEリーグ、その他いろいろなスポーツクラブが入ってきてくれれば、Jクラブのない地域についてもある程度カバーしていくことができるのではないかと考えています。
なんといっても、シャレン!は社会「連携」です。Jリーグクラブだけでなくても、社会課題を共有しながら、多くの人が主体的に参加することができるようにしておきたいですね。

ーーありがとうございます!

 

編集より

『防災』に目を向けるには、それなりのきっかけが必要です。そして、どうすれば守れるのかという知識も必要。

まわりの人や自分自身を災害から守りたいという想いの『きっかけ』をJリーグが与えてくれ、『知識』をヤフー防災模試で学ぶ。そんな仕組みが実際の災害において役に立ち、おおげさかもしれませんが、人の命を守ることにつながりました。

次回は、現在行われている『ソナエルJapan杯』についてもっと深く踏み込んでいきます!

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