スポーツ

実はこんなにおもしろい!箱根駅伝のコース解説【6区~10区】

2024年で第100回を迎える箱根駅伝。多くのドラマを生んだ正月の風物詩です。
100年以上の歴史を”繋いできた”大会は、数えきれないほど多くの人が関わり、想いを繋ぎ、さまざまなことをもたらしました。
Sports for Socialでは、競技面のみならなず、想いを”繋いできた”人にフォーカスし、100年以上の歴史を紐解いていきます。

今回は6区~10区、復路のコース解説です。花の2区、山登りの5区などと比べて、少し地味な印象もある復路ですが、1区間ごとに勝負のポイント、みどころが満載です。箱根駅伝が好きな人なら是非コースの情報も少し詳しく押さえておきましょう。

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区間説明

6区

20.8km<箱根・芦ノ湖→(芦之湯)→(恵明学園前)→(小涌園前)→(大平台)→(箱根湯本駅前)→小田原中継所>
区間記録<館澤亨次(東海大学)2020年・57分17秒>

7区

21.3km<小田原中継所→(二宮)→(大磯)→(国道134号)→平塚中継所>
区間記録<阿部弘輝(明治大学)2020年・1時間01分40秒>

8区

21.4km<平塚中継所→(湘南大橋)→(茅ヶ崎)→(遊行寺坂)→戸塚中継所>
区間記録<小松陽平(東海大学)2019年・1時間03分49秒>

9区

23.1km<戸塚中継所→(権太坂)→(横浜駅前)→鶴見中継所>
区間記録<中村唯翔(青山学院大学)2022年・1時間07分15秒>

10区

23.0km<鶴見中継所→(六郷橋)→(蒲田・京急蒲田駅)→(大森)→(大井)→(新八ツ山橋)→(品川駅前)→(田町)→(中央通り)→東京・大手町 読売新聞ビル前>
区間記録<中倉啓敦(青山学院大学)2022年・1時間07分50秒>

三菱重工
2023、2024年は陸上界が熱い!盛り上がりを牽引する三菱重工マラソン部とは?お正月の風物詩といえば『駅伝』を挙げる人も多いでしょう。伝統の箱根駅伝だけでなく、元日に行われるニューイヤー駅伝(全日本実業団対抗駅伝)も多くの方にとって定番として根付いています。 多くのチームが『企業名』を背負って出場するのがこの大会の大きな特徴。2023年のニューイヤー駅伝で4位、途中3区では首位になるなど注目を集めた三菱重工マラソン部は、先日の東京マラソン2023で日本人トップ、そしてブダペスト2023世界陸上代表にも選ばれたの山下一貴選手、オリンピック代表有力候補の井上大仁選手をはじめ、個人でも有望な選手たちが集まっています。...

各区間の見どころ

6区~より厳しい山下り~

芦ノ湖スタートから小田原中継所までの20.8kmを走る。この区間は「山下り」と呼ばれ、最初の4.5kmをのぼった後は急激な標高差840mの下り5区とは真逆の区間。

標高差840mの山下り

芦ノ湖をスタートして最初の4.5kmを登り切ると、残りの約16kmは標高差840mの山下り。選手たちは、最速100m14秒台というハイスピードでの下りを駆け下るが、これは平地の何倍もの負荷をかけるため、選手たちの脚力を削りとる難しい区間となっている。

残り3kmの緩やかな下り

残り3kmほどになると、徐々に下りが緩やかになる。しかしこの区間は、選手たちにとってはまるで上り坂に感じられるほど疲労がたまっているため、痙攣を引き起こすこともある。

極寒のスタート

高地からスタートするため、気温が低く、山中では降雪がみられることも。選手たちが長袖シャツのユニフォームを着用したり、アームウォーマーを併用したりして体温調節をする姿が見られる厳しい環境。

<Pick up!>

早朝からスタートするため、降雪の影響を一番受ける環境条件が厳しい区間。
第87回大会(2011年)には、2位を走る高野寛基(早稲田大)が凍結した路面で2回転倒。そのトラブルも乗り越え、区間2位。早稲田大の総合優勝にも貢献。

7区~復路の隠れたエース区間~

小田原中継所から平塚中継所までの21.3kmを走る。序盤に小刻みなアップダウンがある他は平坦なコースであり、全区間の中で最も走りやすいといわれる区間

気象条件との闘い

7区は、スタート当初は山から吹き降ろす冷気で冷え込むため、寒さに耐えなければならない選手が多い。しかし、太陽が高くなるにつれて気温も上がり、最も気温差が激しい区間。

小刻みなアップダウンがある区間

7区は、10区間中最も走りやすい区間とされているが、9km以降は小刻みなアップダウンがあり、選手たちの脚力を削る。

優勝争いを左右する重要な区間

かつては「つなぎ区間」と呼ばれ、走力があまり高くない選手が置かれることが多かった7区。2010年代以降は「復路の2区」として位置づけられ、7区に力のある選手を置くことが、優勝への鍵となっている。

<Pick up!>

ハーフマラソン日本記録保持者である小椋裕介(青山学院大)は、唯一4年連続で7区に出走。
第91回(2015年)大会と第92回大会(2016年)では、区間賞を獲得し、青山学院大の初優勝と2連覇に貢献。

8区~5区の登竜門~

平塚中継所から戸塚中継所までの21.4kmを走る。5区への登竜門であり、海風と急坂が立ちはだかる難しい区間

優勝やシード権争いのカギを握る

前半からタイム差を稼いでいくチームも多いが、後半の区間で逆転や順位を上げることができるため、優勝争いやシード権獲得のカギを握る区間となっている。

海風が鍵

8区のスタート地点である平塚から藤沢を経由し、鎌倉を通過する。この間の約10キロメートルは海沿いを走るため、選手たちは強い海風に直面する。風向きや強さによっては、集団の形成や単独走行の戦略が変わる。

遊行寺の坂

残り6キロ地点にある遊行寺坂は、8区の最大の難所。距離は約400メートルで、最大勾配は10%を超える。坂を駆け上がる力強いランナーは順位を上げることができるが、失速してしまう選手も多いため、タフな区間。

<Pick up!>

第73回大会(1997年)で古田哲弘(山梨学院大)が樹立した1時間04分05秒の区間新記録。
この記録は第95回大会(2019年)に小松陽平(東海大)が塗り替えるまで22年間破られることはなく、箱根駅伝の歴史の中でも最も長く残った区間記録。

9区~松の9区~

戸塚中継所から鶴見中継所までの23.1kmを走る。序盤からアップダウンが連続するため、オーバーペース覚悟で突っ込むのか、力を溜めて入るのか、判断力と実行力が求められる区間

エースクラスが集う

9区は、「花の2区」と呼ばれる往路2区の裏返しであり、「松の9区」とも呼ばれる。各校のキャプテンないし準エースクラスが集うことが多く、エースランナー同士の激しい競り合いが期待される。

レースの大きなターニングポイントとなる区間

スタート直後の3キロの下りと、7キロすぎの「権太坂」が勝負を分けるポイント。そのため、優勝争いやシード権争いにおいて、大逆転の舞台になることも少なくない。

中継所での劇的なシーン

全中継所中、最も繰り上げスタートが発生しやすい。そのため、9区のランナーの目の前で10区のランナーが繰り上げスタートしてしまい、タスキをつなぐことができず涙する光景が幾度も見られる。過去最多の繰り上げは60回記念大会の18校。中継所の中でもっとも劇的なシーンが展開される区間。

<Pick up!>

第60回大会(1984年)では最多18校が繰り上げスタート。
復路繰り上げスタートを除き、繰り上げスタートがなく、全チームが襷を最後までつなぐことができたのは、直近では89回大会(2013年)。

10区~すべてが決まる~

鶴見中継所から大手町フィニッシュまでの23.0kmを走る。往路の2区と同様に、最も厳しい区間の一つであり、選手たちにとってのプレッシャーが最も高い区間

最後に待つ長距離区間

往路の2区に次いで2番目に長い区間。選手たちには、持久力とスタミナが求められ、難所である「六郷橋」や「新八ツ山橋」といった厳しいアップダウンを攻略するための技術的なスキルも必要。

重いプレッシャー

最終区間であり、フィニッシュまでの距離が残りわずかとなる区間。そのため、選手たちは自分のチームの勝利のために全力を尽くさなければならない。最終順位が決定するこの区間は、選手に想像できないほどの重いプレッシャーを与える。

熱狂的な応援

最終区間であり、フィニッシュ地点には多くの観客や大学の応援団が押し寄せる。選手たちは、熱狂的な応援に励まされ、そのエネルギーを利用して最後まで全力を尽くす。

<Pick up!>

第97回大会(2021年)最終10区で3分19秒差で首位に立っていた創価大を駒澤大が逆転。
最終10区で逆転総合優勝を飾ったのは、第77回大会(2001年)で順天堂大が駒澤大との17秒差を逆転して以来20年ぶりの出来事。

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