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伸びるのは、ボールが飛ぶ距離だけではない!〜東京ヤクルトスワローズ「投げ方教室」〜

つば九郎と一緒に投げ方教室

東京ヤクルトスワローズでは、「都会の子供たちに野球の楽しさを」という想いを掲げ、都内の学校に出向き、「投げ方教室」を行っています。

スワローズで選手としても活躍し、自身も子どもたちに指導する広報部の三輪正義さん(以下:三輪)に活動について伺うと、“伝えること”を大切にする球団の想いが伝わってきました。

「失敗しても大丈夫」

ーー「投げ方教室」は、どういったきっかけで始まったのでしょうか?

三輪)子どものボールを投げる力の低下が話題になった時期に、学校の校長先生から「投力低下に対して何かできないか」と相談があったことがきっかけです。その際、何か役に立てることはないかと考え、その課題の克服のために活動をスタートさせました。

ーー「投げ方教室」の中では、どういったことを意識されているのでしょうか?

三輪)参加してくれる子どもの中には、ボールを投げるのが苦手な子もいますが、「苦手なことにもチャレンジすることが大切」だと伝えています。

それはスポーツだけでなく他のことにも通ずることで、嫌なことから逃げると、自分の可能性を狭めてしまうことがあると思うし、好きなことをやるうえで避けては通れないことでもあると思うので、「いろんなことにチャレンジしようね」と一生懸命取り組むことの大切さを話すことにしています。

他には、話し合いの時間を設けることもあります。

投げ方教室の最後に作戦会議の時間を取り、今日のことを復習して、どうやったらボールを遠くに投げられるかということをグループで話し合ってもらっています。子どもたちが話し合い、自分たちで意見を集約することは、とても成長に繋がることだと思っています。

投げ方教室

ーー参加した子どもたちからの反応で、どういったことが印象的でしたか?

三輪)参加した後に作文を送ってくれた子の中で、私が伝えたことを覚えていて、作文に書いてくれた子がいました。今の子どもたちは失敗をすることに慣れてないと思うので、「いっぱい失敗していいんだよ」「失敗しても大丈夫だよ」と言ってあげたら、「そう言ってもらえて、すごく楽になりました」というようなことを書いてくれたんですよね。

そうやって、“私が言ったことがきちんと伝わっているんだ”というのは、とても印象に残りました。

ーー出張授業に行った学校の先生方からは、どういった反応がありましたか?

三輪)授業をご覧になっている先生方から「みんながすごく遠くにまでボールを投げられるようになりましたね」と言っていただけたり、「子どもたちが一生懸命やっている姿を見られるのはとても有難いです」という言葉をかけていただけることがあり、それが嬉しいですね。

ただ、現状に満足せず、どうすればより良い授業になるのかを考え続け、これからもアップデートさせていきたいと思っています。

投げ方教室写真

子どもたちの中に残り続ける一日に

ーー三輪さんのように元選手として活躍された方が「投げ方教室」で活動されていますが、元選手がこういった活動されることの意義をどう感じていらっしゃいますか?

三輪)子どもたちの中には私たちのことを知ってくれている子もいますが、ほとんどの子は当然知らないと思います。

でも、そういう子たちもスワローズの事は知っていることが多いので、「スワローズのユニフォームを着ている人が来てくれた」ということは、子どもたちの中にずっと残り続けるはずなんですよね。「今日一日、楽しかった」とか、「今日は、こんな一日だった」という会話から、家庭での会話に繋がるとすれば、それが元選手がやる意義なのかなとは思いますね。

三輪正義さん

ーースワローズは東京都を活動拠点としているため、地域との関わりという面では難しさもあると思います。地域との関わり、地域貢献活動はどのようにしていきたいと考えていらっしゃいますか?

三輪)「野球=カープ」という印象が強い広島などに比べると、東京近辺には読売ジャイアンツや横浜DeNAベイスターズ、それに西武ライオンズや千葉ロッテマリーンズなどのファンもいるでしょうから、さまざまな球団が存在するという点では、難しいかもしれないですね。

そうした中でも、「投げ方教室」のように、1人でも多くの子どもたちにボールに触れる機会を提供したり、チャレンジすることの大切さを理解できる時間を提供したりというように、地域に良い影響を与えることができれば良いなと思っています。

つば九郎のおかげで、伝わりやすい動画に

ーーYouTubeでは、球団のマスコット・つば九郎の出前授業の動画も公開されていましたね。球団にとって、つば九郎はどんな存在でしょうか?

三輪)“ヤクルトファンではないけど、つば九郎ファン”という方もいるくらい、つば九郎は人気のあるマスコットです。そのような強力なマスコットがいることは、東京ヤクルトスワローズという球団を知ってもらうきっかけになり、ファンの拡大にもつながっているのではないかと思っています。

新型コロナウイルスの影響で、子どのたちが学校になかなか行くことができなかった時期には、つば九郎に投げ方教室のYouTube動画に参加してもらいました。つば九郎が一羽入ってくれると、画が“まろやか”になりますよね。ボケてもらいながらも、伝えるべきことを伝えることができるので、いろいろな方に伝わりやすい動画になったと思っています。

縁を大切に、目の前のことを継続していきたい

ーー今後、どういった地域・社会貢献活動をしていきたいとお考えですか?

三輪)外苑前の商店街の方々と一緒に清掃活動をしたり、去年と今年はコロナ禍で中止になってしまいましたが野球大会を開催したり、地域の人との交流があっての私たちだと思っています。

他にもスワローズでは、「燕プロジェクト」という緑のユニフォームを着る機会があるのですが、商店街の方たちにも着てもらうことがあり、「次回はウチもやらせてほしい」と言ってくださる商店街の方もいらっしゃいます。

そういう縁を大切にして、一つずつ目の前のことを継続してやることが未来に繋がっていくことだと信じ、これからも地域のみなさんから愛される球団を目指して活動していきたいと思っています。

東京ヤクルトスワローズ「地域のイベントに賑わいを」

ーーコロナ禍で、なかなか“つながり”を大切にする活動を行うのは難しいかと思います。

三輪)商店街の盆踊り大会ができなかったからオンラインで実施する、というような活動は、オフラインでのリアルなつながりよりは薄いつながりになってしまうかもしれませんが、続けることで将来に繋げていけたらと思います。

そうすることで、球団を知ってもらう機会になったり、明治神宮野球場に来てもらえるきっかけになったりすると思います。すぐには数字につながらないことだとしても、目に見えないことはとても大事だと思うので、そういうことをきっちりやっていきたいです。

ーーありがとうございます。今後の地域・社会貢献活動が楽しみです!