“未来をひらくチカラは、まず一歩の挑戦から。”
小学生を対象にした新たなスポーツ体験プログラム、 キッズトライアスロンプロジェクト『SCOPE』(supported by SCOグループ)が2025年夏に全国5都市(岐阜・埼玉・福岡・京都・神奈川)で開催されました。スイム・バイク・ランを体験するトライアスロン体験会に加え、現役選手やオリンピアンとの交流も実施。そして10月5日には、東京都・海の森水上競技場で特別イベントが行われました。
本記事では、その特別イベントで行われたトークセッション「子どもたちの挑戦が未来をひらく ─ スポーツが支える“105年活きる”社会とは」の模様をお届けします。世界最高齢トライアスリート・稲田弘氏、五輪出場経験を持つ上田藍氏、日本トライアスロン界のキーパーソン岩城光英氏らが語る、子どもたちの挑戦と社会のつながりとは?
登壇者
- 稲田 弘 氏(世界最高齢現役トライアスリート/ギネス世界記録保持者)
 - 上田 藍 氏(北京・ロンドン・リオ五輪 トライアスロン日本代表)
 - 岩城 光英 氏(公益社団法人トライアスロンジャパン 会長)
 - 藤本 公浩 氏(株式会社SCOグループ 取締役社長)
 
子どもたちの挑戦が未来をひらく「チャレンジすることの楽しさが原動力」
ーー「子どもたちの挑戦が未来を開く。スポーツが支える105年、生きる社会とは?」というタイトルで、スポーツによる挑戦の価値、そして生涯スポーツ、心の成長、そして企業と社会との関わりについてお話していければと思います。まずは皆さんに、これまで生きてきた中での“チャレンジ”、新たな一歩を踏み出すきっかけやその心の原動力について伺えますか?
稲田)私は70歳からトライアスロンを始めました。原動力というほどのものではないかもしれませんが、きっかけは「健康でいたい」という気持ちです。
トライアスロンに取り組んでいるうちに非常に楽しくなっていき、「この歳になってもこれだけできるんだ」という新しい発見に嬉しさを感じました。そして、続けていくとさらにできることが増える。日々の成長と新たな発見の繰り返しで、楽しみながら取り組んでいます。
稲田弘さん上田)私は兄がスイミングスクールに通い出して、「私もやりたい!」と思ったのが一番最初のトライアスロンへのきっかけでした。幼い頃から不器用な子だったのですが、スイミングスクールで少しずつできることが増えたり、ランニングの大会で長い距離を走れたり、そうした成功体験の積み重ねがありました。自分の喜びだけでなく、友人や家族と一緒に喜び合えることがたくさんあるといいなと思っていた私にとって、スポーツはそんな喜びを多く感じることができるものでしたね。
一緒に喜び合える仲間がいて、見守ってくれる人たちがそばにいました。失敗しても頑張って続けていればいつかできるようになる日が来ますし、その繰り返しの先にオリンピックがありました。まさに、チャレンジすることの楽しさが原動力になっていると思います。
ーー今回の『SCOPE』では、子どもたちを対象にトライアスロンの体験会を実施しています。子どもたちの「やってみたい」をサポートする“大人ができること”には、どんなことがあると思いますか?
上田)褒めることはもちろん大事なのですが、できなかったことに対して“悔しさをプラスに変える”ことも大事だと思っています。「できなかったことができるようになれば、もっと成長できるんだよ」ということを自然な流れで言葉で伝え、子どもがそう思えるかどうかが、楽しさを感じながら挑戦を続けられるかに大きく関わります。私も、できなかったことに対して「伸びしろが見つかったね」と言ってくれる両親や、一緒に頑張ろうと励まし合える友人の存在が大きかったです。
上田藍さん続けることの難しさと向き合う|「これは自分にとって1つの試練だ」稲田さんの挑戦を支える考え方
ーー長く競技を続ける中で、必ずどこかで“壁”が出てきます。挫折があったり、心が折れそうになったり。稲田さん、上田さんともに長くトライアスロンを続けていていますが、どのようにそうした壁を乗り越えてきたのでしょうか?
稲田)“壁”はほとんど毎日感じています。老化も感じますし、怪我もたくさんあります。レース中もいろいろなことを考えます。そんなとき、「これは自分にとって1つの試練だ」と考えることで、怪我への怖さもなくなりますし、この競技を続けられること自体がすごく嬉しいことだと考えることで、練習を楽しく感じられるようになりました。本番のレースは厳しいですけどね(笑)。
不安が訪れることもたくさんありますが、これまで乗り越えてきたことなので「またか」と思って、今ではほとんど気にしていません(笑)。
ーー上田選手はいかがですか?
上田)もともと私はすぐに何事もできるようになるタイプではなかったので、「できないことが当たり前、頑張らないとできるようにならない」という考え方になっていたのは壁を乗り越える上では強みになっていたかもしれません。
できないことに対して、練習や準備をしっかりすればできるようになる、と思いながら、子どもの頃から積み重ねることができたのは大きな財産ですね。
ーー稲田さんは来月で93歳。若い世代の方たちに「年を重ねても挑戦できるんだ」というメッセージはありますか?
稲田)やれるかどうかを悩むのではなくて、「やればできるんだ」ということを知ってほしいです。今回のイベントに来た子たちは皆さんそんな風に思ってチャレンジしている子どもたちだと思うのですが、それを多くの子どもたちに知ってほしいなと思います。
ーー「やればできる」。素敵な言葉ですね。
地域・企業・スポーツが交差する未来
ーー岩城会長は長きにわたり日本のトライアスロンを支えてきています。地域・企業・スポーツ、この3つが共存しながらトライアスロンがどのように人々の生活をよくしていくのか?この点についてどのようなお考えをお持ちでしょうか?
岩城)私たち競技団体だけでなく、地域の皆さんや自治体、そして企業の皆さんと連携を深めていくことで、単なる“スポーツイベント”を超えて地域の価値を持続的に高めていくような取り組みができるのではないかと考えています。
トライアスロンの大会は、開催地の地元の住民の皆さん、企業の皆さん、自治体の皆さんなど多くの方々に支えられて運営されています。数あるスポーツの中でも、地方創生に貢献しているスポーツだと考えていて、地域の歴史や街並み、豊かな自然環境を大事にしたレースを作っていくことで、地元の方々からしても「自分の生まれ育った地域はこんなに素晴らしいものを持っているんだ」という故郷への愛着や誇りも生まれるのがトライアスロンの醍醐味です。
今回行われているSCOPEイベントは、そのモデルとなり得るものだと感じています。
岩城光英さんーー地方のトライアスロン大会では、地元の方々やお店の方々も皆さんでお手伝いしてくださっているのが印象的です。街としての一体感が見られて嬉しい場面ですよね。
藤本)SCOグループとしては、『オーラルケアプロジェクト』をスポーツと地域を絡めながら進めています。口腔内の健康は、全身疾患の予防にもつながるという医学的なデータもあり、“地域に根ざした”Jリーグクラブとともにオーラルケアクリニックを設立することでスポーツ・企業・地域が関わった健康への施策に取り組んでいます。
いきいきと生きていくために、健康である必要がある、そのためには口腔内の健康を保たなければならない、という啓発活動をJリーグクラブとともに行い、そのサポーターの健康増進につなげています。
ーーSCOPEについてはどうですか?
藤本)子どもたちにとってもトライアスロンは結構苦しいスポーツであり、私自身も昨年トライアスロンを始めたところですが、成し遂げた時の達成感は本当に言葉では言い表せないものです。
子どもたちにとって、“挑戦すること”や“仲間を作ること”など、人生に大切なものを感じるきっかけづくりの活動は、その子の将来にも繋がりますし、日本がもっとよくなることにつながるのではないかとも思っています。
ーーたしかに、精神的にも身体的にも強くなるスポーツなので、子どものうちから経験することがいろいろなことにつながっていくことはよくわかります。SCOグループが掲げる「テクノロジーで105年を活きる」というビジョンとの関わりも見えてきますね。
挑戦することの意味を、すべての子どもたちへ
ーー最後に、子どもたちへのエールをお願いします!
岩城)トライアスロンはスイム・バイク・ランと3種目を行いますので、バランスよく体を鍛えられます。途中でほかのスポーツに取り組むこともあると思いますが、生涯スポーツとしていつかまた「トライアスロンに挑戦したいな」と思っていただけたら嬉しいです。
藤本)トライアスロンはもちろん、いろいろなことにまずは一度触れてみてほしいと思います。見て、感じて、さまざまなチャレンジをしてもらいたいですね。
稲田)子どもたちの目を見ていると、「一生懸命頑張ろう!」という気持ちが滲み出ていますよね。いい目をしています。そういう気持ちを持って、このままトライアスロンを続けてほしいなと願っています。
上田)このSCOPEのイベントでは、子どもたちの元気な姿を多く見ることができました。そのチャレンジする姿は、さまざまな世代の人たちに元気を与えるものだと思います。スイム・バイク・ランという3種目があり、簡単にはすぐにうまくいくわけではないトライアスロンだからこそ、チャレンジすることを諦めずに、チャレンジすることが楽しい!と思ってほしいですね。「今日失敗しても、次またチャレンジしよう」と思う子どもたちが、このSCOPEをきっかけに増えてくれたらと思います。
ーーありがとうございました!
SCOPE 特別イベント大会 当日の様子
当日は天候にも恵まれ、多くの子どもたちがコースを駆け抜けました。
トランジションエリアも本格的。小学校1年生〜6年生までが参加し、貴重な経験を積みました。
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