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若者が夢を諦めない社会へ~Z世代が抱える想いを江の島FCで実現~

「男子のチームがあるのに女子のチームがないって違和感ありませんか?」

今回の取材のきっかけは、神奈川県のサッカークラブ・江の島FC代表を務める巴山雄太さん(以下、巴山)のこの一言でした。江の島FCは2019年にクラブを創設し、『若者が夢を諦めない社会』を目標に掲げ、その実現のためにサッカークラブを用いたさまざまなアプローチを試みています。
そんな江の島FCが2022シーズンから立ち上げるのが女子サッカーチーム。自らもZ世代の一員である巴山さんの「Z世代にとって、男女平等であることはもはや当たり前」と語るその姿に、多くの女子選手たちが加入を決めました。

今回は、巴山さんに加え、なでしこリーグでのプレー経験を持つ井口遥菜さん(以下、井口)、この春高校を卒業し、大学生との二足のわらじで活動する渡邉すみれさん(以下、渡邉)にお話を伺いました。

巴山雄太江の島FC代表 巴山雄太さん

男子チームしか持たないサッカークラブへの違和感

ーー江の島FCについて教えてください!

巴山)江の島FCは、茅ヶ崎寒川藤沢の2市1町の湘南地域と、鎌倉より東側の湘東地域8つの地域をホームタウンとするサッカークラブです。

私自身、「サッカークラブを作りたい!」と思って江の島FCを立ち上げたわけではなく、『若者が夢を諦めてしまう』ことに課題を感じ、解決したいと思っていました。その原因である、『仲間・空間・知見・資金』の支援を総合的に行っていくために、ステークホルダーが多く、ハブとなることのできるサッカークラブを設立しました。
そうした背景もあり、江の島FCはサッカークラブではありながら、江の島の文化振興の支援もするなどの活動も行っています。

チームとしても、ただ強くなってカテゴリーを上げるだけでなく、0からJリーグに参入することやなでしこリーグに昇格するなど、お金では買えないようなストーリーを重視し、「世界一泣けるサッカーチームを作ります」と宣言しています。

ーー以前巴山さんとお話したときに、「男子チームがあって女子のチームがないことに違和感がある」というお話を伺いました。そうした感覚が現時点でない方も多くいるのではないかな、とも思います。

巴山)私も含めて、Z世代はジェンダー格差や固定観念・偏見などを変えていこうと思っている世代です。ビジョンを持ってスポーツチームを立ちあげたけれど、男子チームしかないことに違和感を感じていました。Z世代の人たちが作る、ニュートラルな男女のチームを作っていくため、2022シーズンから女子チームを立ち上げることでまずは動き出したところです。

自分の好きなサッカーで社会に対してもアクションがしたい

ーーこの春から大学生である渡邉さんは、巴山さんのビジョンについてどう感じていますか?

渡邉)まず、江の島FCのキャッチフレーズである、夢を「描かなくなったこどもへ、描けなくなったおとなへ」という言葉が自分の中ですごく響きました。自分の好きなサッカーで、社会に対してもアクションできることに感動しました。

渡邊すみれさん江の島FC 渡邊 すみれさん

ーー昨年までなでしこリーグの愛媛FCで活躍されていた井口さんが、まだ何も実績のないチームである江の島FCに加入したのはなぜでしょうか?

井口)次のキャリアのことを考えないといけない年齢という現実的な問題でもあり、昨シーズン、愛媛FCからの退団をもって現役を引退しようと思っていました。正直、サッカー選手であることと次の夢を同時に進めることは難しい、という固定概念を持っていました。そんな時にチームメイトが江の島FCの存在を教えてくれて、『夢を諦めずに、なおかつ本気でなでしこリーグを目指す』という部分が私にとって魅力的で、このチームでプレーしたいと思いました。

ーー江の島FCは、井口さんのようなキャリア形成も考えている選手にとって、どのような特徴があるのですか?

巴山)既存の地域サッカークラブだと、選手が働きながらサッカーをするのが一般的です。「将来こんなことを仕事にしたい」ということはあまり考えずに昼間働く選手も他チームにはいるのも現状ですが、江の島FCとしては選手たちが現役引退後も輝ける教育支援をしています。海外遠征や語学の支援など、選手たちがチームに所属しながらも、サッカー以外の部分で活躍できるようになって欲しいと考えて仕組みを作っています。

ーー渡邉さんは学生ということもありますが、江の島FCでサッカーをしながらもう一つの軸としてやりたいことはありますか?

渡邉)たくさんあります。鎌倉の古民家を使用した地域の交流場所作りについて、自分が代表となって団体を立ち上げているので、大学生になったらさらに力を入れていきたいです。海外留学も考えているので、外国語のサポートを受けられるのもすごく楽しみです。

ーー新しいチームの雰囲気はいかがですか?

井口)私が今まで活動してきたチームは、自分と似たキャリア、似た考えの人が多かったのですが、江の島FCでは自分が今まで関わらなかったような人たちと関わることができています。私はチームで最年長ですが、人としてもサッカー選手としても成長することができそうなチームだと感じました。

江の島FC江の島FC 井口 遥菜さん

人生の幅を狭める前の世代の人に来て欲しい

ーー『女子サッカー選手』という概念に当てはまらなくても、江の島FCではサッカー以外の夢との両立をしながらプレーできるようになりそうですね!

渡邉)私は男子チームで長くプレーし、高校3年間では社会人選手ともサッカーをする機会がありましたが、中学校2年生くらいから身体的な面での差が出てきたことを感じています。でもそれ以上にぶつかった壁は、「このままずっとサッカー1本で生きていけるのか」ということです。

男女のサッカーではその市場の大きさが全然違います。アメリカの女子サッカーは、自分たちの権利や「こんなに活躍してるのに、なぜ給料がこんなに違うのか」ということを国に対しても訴えかけていて、個人的にはすごく好きです。日本では、男子でプロとして生活できる人は限られますが、それよりもさらにハードルが高いのが女子だと考えています。

巴山)例えば男子だと、引退して社会に出てもサッカーに関わっていくことができますが、女子は高校でほとんどが辞め、大学卒業でもさらに辞めてしまい、社会に出てサッカーをする人はほとんどいません。そうした問題もあり、江の島FCはゆくゆくは16歳〜20歳くらいの『人生の幅を狭めてしまう前の世代』の選手たちが集まって来るようなチームにしたいと思っています。サッカーを辞めてしまう前の子を支援することで、引退する人も減り、女子サッカー界全体のためのサポートができるのではないかと思います。

江の島FC

議論が生まれるチームにしたい

ーー今シーズンの意気込みを教えてください。

巴山)サッカー面では、今季は神奈川県リーグに所属をしながら皇后杯予選に出場をして、勝ち上がっていくことが目標です。土台を作る一年間にしたいので、今シーズンはそこで精一杯かなと思っています。
もう少し踏み込んだところだと、ジェンダー格差を解消していくことができたら良いと思っています。生活者と企業の間にサッカーチームが入って、「女性もこういう活躍ができる」という発信ができる存在になりたいです。

ーー発信を積み重ねることはすごく大事ですよね。
最後に井口さんと渡邉さんから今シーズンの抱負を聞かせてください。

井口)これからのチームなので、まずは積み上げていくこと。土台を私たちが作りたいと思っています。

渡邉)私にとっては大学生になるタイミングであり、女子チームでのプレー経験が浅いため、すべてが新しいスタートになります。新たなことにチャレンジしながら、しっかりと土台を作って次の2〜3年に向けて頑張りたいです。

ーー江の島FCの未来を追いながら、「これからこんな世界になっていくのかも」と私たちも考えるきっかけにしたいですね!

巴山)そうですね。男子も女子もレディースなど付けずに『江の島FC』という同じ名前でやっていきます。これも挑戦ではあって、1つの江の島FCというクラブに男子リーグに出るチームがあって、女子リーグに出るチームがあるみたいなイメージです。ややこしいので愛称名は付けますが。(笑)
ニュートラルなクラブを作り、周りからいろいろ議論が生まれるチームにしたいと思っています。何か気になることがあればたくさん批判していただきながら、チームを強くしていけたらと思うので、これから期待していただけたら嬉しく思います。

ーーありがとうございました!江の島FC

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