『人と人との”きずな”は、あいさつから始まる』そんな言葉があるように、あいさつには人と人を繋ぐ力があります。
地域密着型スポーツクラブとして子どもたちの笑顔を増やすべく、選手自ら学校の校門に立ち「朝のあいさつ運動」に取り組むカマタマーレ讃岐。
クラブに関わるすべての人たちを大切にするとともに、地域の人たちと感動を共有するというクラブ理念の裏側にはどんな想いがあるのでしょうか。
ホームタウン担当の笠居さん(以下:笠居)にお話を伺いました。
次は“自分が”サッカー選手として
ーー「朝のあいさつ運動」を始めたきっかけを教えてください。
笠居)元々、香川県教育委員会が「人と人との“きずな”は、あいさつから始まる」ということで『さぬきっ子あいさつ運動』を行っていました。そこに混ぜてもらうような形がスタートだったのではないかなと。2012年ぐらいの様子は写真でも残っていますが、2015年ぐらいからクラブ単独で学校に訪問してあいさつ運動をしたという記録が残っています。
今、ホームタウン活動の一環としてあいさつ運動を積極展開しているのは、気軽に地域に出て子どもたちに接する機会を得やすいからです。やはりサッカー選手なので、本当はボールを使って一緒にサッカーすることでサッカー選手らしさも伝わるし、子どもたちの印象にも残ると思いますが、その内容で実施だとどうしても活動できる時間帯が限られてきます。練習前の数十分を活用できるあいさつ運動は、いろんな場所に数多くお伺いできるため積極的に行っています。
ーー実際にこのような活動やってみて、選手たちからはどんな声を聞きますか?
笠居)基本的にはポジティブな声ばかりですね。行く先々で、子どもたちや一緒に参加してくださる地域の皆さんから喜んでいただけるので、「あいさつ運動をすると言ってもらえればいつでも行きます」と言ってくれる選手がほとんどです。
自分が小学生や中学生の時に通っていた学校にプロのサッカー選手が来てくれた時、凄く嬉しかった、思い出に残っている、という選手も多くいます。次は自分がサッカー選手という立場になって地域に還元していくところにやりがいを感じてくれていると思います。
ーーとても素敵なサイクルですね。
一緒に参加される地元の方や警察の方、地域で一緒に活動をしている方々からはどんな反応がありますか?
笠居)「ありがとうございます」と言っていただくことが多いですね。
いつもよりも子どもたちが笑顔で登校していたり、一度学校の中に入った生徒が、次に登校してくる子どもたちを迎えるためにあいさつ運動の列に加わったり、盛り上がりが選手がいるのといないのとで全然違うようです。また来てくださいと歓迎していただいています。
ちょっとした関わりが、忘れられない特別な体験に
ーー元々、カマタマーレ讃岐や選手を知らない方達にも興味を持っていただけている実感はありますか?
笠居)ちょっとした関わりが一つ二つあるだけでも、子どもたちにとっては特別な体験になると思います。選手は、肘タッチなどで積極的にコミュニケーションをとってくれているので、「次はこの人たちがサッカーしているところを見てみたい」と子どもたちが思ってくれればいいなと。
家に帰ってお父さんやお母さんと「今日カマタマーレの選手が来てくれてサインもらったよ」「握手したよ」という会話が生まれているそうです。そういうキッカケ作りも現場で同時にできているので、そこからクラブに興味を持ってもらえたら嬉しいですね。
ーー私自身も、通っていた小学校に地元のサッカー選手が来てくれたことを強く覚えています。そのような子どもたちもたくさんいるのではないでしょうか。
この活動をする中で特に印象に残っている体験があったら教えてください。
笠居)実体験の中ですと、やはりいつどこへ行っても子どもたちや参加してくれる人たちが喜んでくれることが、心に残ります。
コロナ禍なので、対面での活動はできないことが多かったのですが、徐々に、あいさつ運動はあまりリスクを伴わずできるということが学校間で浸透しているというのもあります。近くの小学校で行っていたあいさつ運動の噂を聞きつけた子どもが、校長先生に直談判し、「是非うちでもお願いします」と校長先生がクラブに話を持ちかけてくださったこともありました。これは、最近特に印象に残っている出来事です。
また、教育委員会の方から聞いた話ですが、あいさつ運動を始めた2012年ごろ当時小学生だった少年が、通っていた学校にカマタマーレ讃岐の選手があいさつ運動で来てくれたことがすごく嬉しくて心に残ったというのを理由に、大きくなってからあいさつ運動に飛び入りで参加してくれたことがあります。
今度は自分が地域に恩返しをしたいという想いでそのような行動を起こしてくれた訳ですが、5年後10年後に結びつくのはすごいなと。自分がその当時関わっていたわけではないですが、前々からこのような活動を継続的に展開してくれている選手やクラブスタッフに感謝しなければいけません。今の活動が5年後10年後に繋がるように、これからもやっていかないといけないなと再認識したという意味で印象に残っています。
選手が変わっても、スタッフが変わっても、恩返しを続けていく。
ーーこのあいさつ運動をカマタマーレ讃岐様が行う意義はなんでしょうか?
笠居)Jリーグとしてホームタウン活動を推進していて、カマタマーレ讃岐も地域密着型クラブとしてどんどん街に出て活動していこうと宣言した中で活動しているというのが前提にありますが、クラブ自体がもともと地元の学校のOBクラブから発足しています。そこから今に至るまで、地域の人たちに支えてもらえたからこそJ3でプレーできているクラブでもあるので、恩恵に乗っかりただサッカーをするのではなくて、選手が変わっても、スタッフが変わっても、これからも継続して恩返しを続けていくというところが大きいかなと思います。
ホームタウン活動を通じて子どもたちに特別な体験をしてもらって、それが子どもたちの次の行動のきっかけになれば嬉しいですよね。
あいさつ運動以外のホームタウン活動も含めて言えば、例えば、選手と一緒に体を動かすことの楽しさを知ってもらえれば、家の中でも楽しめる選択肢が溢れている現代でも、外で体を動かす選択肢が生まれて、健康に育つことにも繋がります。
ーー今後、様々なホームタウン活動を通して、地域の方やファンの方とどんな関係性を目指していきたいですか?
笠居)年間で365回のホームタウン活動をすることを目標に掲げた「まいにちカマタマ」の中で、ただ回数をこなすだけでなく、一回一回の活動の中でよりクラブを身近に感じてもらい、最終的には試合を見に行きたいと思っていただければ嬉しいです。
活動の後すぐに見に来ていただければもちろんうれしいですが、5年後10年後に選手やマスコットとふれあったことを思い出して、カマタマーレに興味を持ったりファンになったりしてスタジアムに来てくれるような、先を見据えたところもを目指していきたいですね。
試合に来てくださる人たちだけではなくて、そうではない香川で生活する人にとっても日常の中にカマタマーレがあって、自分たちの街のクラブと認識してもらい応援していきたいなと思ってもらうと同時に、一緒に香川県を盛り上げていきたいという気持ちが芽生えて欲しいですね。
カマタマーレを中心に地域が盛り上がって、いろんなところで新しい価値が生まれたり、今あるものの価値が上がったりするというところで、サッカーチーム中心のまちづくりに繋げる、ということを今後目指したいです。