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【シャレン!/福島ユナイテッドFC】 想いを乗せて、福島や農作物の魅力を届ける。選手自ら汗を流す「農業部」

福島ユナイテッドFC_農業部

Sports for Socialでは、「シャレン!(Jリーグ社会連携)」に取り組むJリーグクラブの「想い」を取り上げます。

選手たちが県内各地の農園に出向き、農作業に汗を流すーー。Jクラブとしては珍しい「農業部」活動を行う福島ユナイテッドFC。2021Jリーグシャレン!アウォーズにてパブリック賞も受賞されたこの活動について、事業部の阿部拓弥さん(以下:阿部)に話を伺うと、クラブの“福島への想い”が見えてきました。

風評被害に「クラブとして何かできないか」

ーーこの活動を始めたとき、どのようなことを思っていましたか?

阿部)もともと福島は農業が盛んな県でした。ですが、2011年の東日本大震災とそれに伴う東京電力福島第一原発の事故後の風評被害によって、福島県産の農作物が売れなくなってしまったと農家の方から伺いました。
そうした状況に対して、「クラブとして何か協力できることはないか」と、この活動を始めることになりました。

ーーどのような流れで始まったのですか?

阿部)私たちのスポンサー企業の紹介で、石川町にある「大野農園」の社長さんを紹介いただいたのがきっかけです。「農家とクラブが一緒に何かをしよう」という話になり、農家に出向き、収穫だけでなく日々の作業から参加させていただくようになりました。
クラブでりんごの木を2本買い取り、さまざまな作業を経て、収穫までしたものを「福島ユナイテッドFCのりんご」として販売したことから私たちの活動は始まりました。

ーーりんごから始まった農作物が、今では6品目にまで拡大していますね。

阿部)ここまで広がったのは、農家さんとの繋がりが大きかったと思います。農業の取り組みには継続性を持たせようと考えていたので、「福島と言ったら桃だ!」と、次の農作物は桃を生産することが決まりました。

それ以降は、福島市や須賀川市など、県の中心部で農作物を育てていました。ですが、「福島市・会津若松市を中心とする全県」をホームタウンとしていることもあり、農業部部長を務める樋口寛規選手から「会津地方で何かできないの?」「会津なら、アスパラガスが良いんじゃないか」という声が上がりました。それがきっかけになり、もともとお付き合いさせていただいていた、喜多方市の「エガワコントラクター」さんのご協力でアスパラガスを栽培することになりました。

農業部長である樋口寛規選手農業部長である樋口寛規選手

ーー農作物の中でも、特に大変なものは何ですか?

阿部)桃が一番大変かもしれません。

蕾のうちに花を摘み取り開花する花数を減らす「摘蕾(てきらい)」、花が咲いたときに生育の良いものを残す「摘花(てきか)」、未成熟の果実を摘み取る「摘果(てきか)」など、収穫までにたくさんの作業が必要な農作物です。

中でも収穫時は、午前中にトレーニングが終わったあとに午後の一番暑い時間帯に収穫を行い、その日のうちに箱詰め、発送まで行います。はじめは2本だった木も今では7本まで増え、収穫時期は特にハードです。

福島ユナイテッド_桃

「この前の試合、勝って良かったね!」

ーー選手が通年で取り組んでるのはとても特徴的ですね。どういったところが大変なのでしょうか?

阿部)どうしても、天候に左右されたり、生育状況によって作業が予定よりも前後したりすることがあるので、私が農家さんと連絡を取りながら活動しています。
ぶどうはほとんどがビニールハウスの中なんですが、他の作物はやはり外での作業が主になります。さすがに大雨の中で作業をするわけにはいかないので、天気予報は常に見ています。

ーー活動に取り組む選手からは、どういった反応がありますか?

阿部)自分が携ったことで、食べ物のありがたみが理解できたという声が多いですね。農業部長・樋口選手は、「農家さんはすごい」といつも言っています。

「農業部」というサッカー以外の活動を通して、いろいろな気づきが生まれ、参加することでプラスになっているという話もよく聞きます。我々のクラブには、大学や高校上がりの選手が多いのですが、選手も積極的に取り組んでくれていることで、“一つの社会勉強”にもなっていると感じています。

福島ユナイテッド_農家さん

ーー農家の方々からは、どういった反応をもらうことがありますか?

阿部)農家の方と連携する前は、「福島ユナイテッドFCという存在は知っていたものの、試合を観にいったことがない」「クラブに対して少し距離があった」と伺いました。
そうした方からも、クラブと関わるようになって以降は「この前の試合勝って良かったね!」「作業に来てくれた〇〇選手、調子いいね!」と、試合結果を気にしていただいたり、スタジアムにもご来場いただいています。

生産者の“想いやバックグラウンド”を載せるワケ

ーー昨年2020年6月には、公式オンラインショップもオープンしましたね。

阿部)農家や生産者の皆さんの中にはホームページを持っていてもなかなかPRできる機会が無かったり、“ブースで購入して気に入った商品を今度はぜひお取り寄せしてもらいたい”との想いもあり、クラブとしても次に繋げていくために、足並みを揃えて、クラブの管理するオンラインショップとして取り組むことにしました。今まであまりアクセスできていなかった県外在住の方々、特にサッカーファンを中心にPRできるようになったと感じています。

ーーオンラインショップでは、“想いやバックグラウンド”を載せていますが、どのような理由があるのでしょうか?

阿部)私たちのオンラインショップに出品していただいている生産者の方は想いを持った方ばかりです。そういった方々の紹介も併せて掲載したら、商品の魅力や福島県の良さがより届けられると思い、生産者さんの協力もあって載せることになりました。

福島ユナイテッド_農業部ECサイト

ーー昨年2020年からは新型コロナウイルスが流行し、クラブとして収益面でも大変だった中、「農業部」の活動をどのように捉えていますか?

阿部)サッカークラブなので、スポンサーからの広告収入やチケット料、ファンクラブ、グッズなど、ある程度収益化できるものが限られている中で、試合以外のところに新たな収入源ができたのは大きいと思います。

さらにオンラインショップを立ち上げたことによって、実際に出店に赴かなくても予約や注文をいただくことができるようになったので、クラブの事業として道が開けたかなと思っています。

売上高的には、もちろんスポンサー収入などの方が多いのですが、コロナ禍でチケットを売ることができなくても農産物は売れるという面では、オンラインショップを立ち上げて良かったと思っています。

長い目でのPRを

ーー福島が誇る「農業」というアプローチで取り組まれている活動は、他にどういったものがありますか?

阿部)桃を収穫する夏の時期には桃色の『ふくしまの桃』PRユニフォームを、秋のお米の稲刈りの時期には『ふくしまの米』PRユニフォームを着用して試合に臨んでいます!
桃やお米のユニフォームスポンサー(農業部パートナー)として、クラブと一緒に福島県産品のPRにご協力いただいている企業様にも感謝しています。

福島ユナイテッド_桃色ユニフォーム

ーーこれから力を入れていきたい取り組みはありますか?

阿部)2018年から福島市と連携して、福島の中心市街地活性化として、福島駅前にて、アウェイ戦のパブリックビューイングと音楽、食を同じ会場で行うイベント「ユナフェス」に取り組んでいます。

福島にJクラブがあるということを活かし、普段なかなかサッカーや福島ユナイテッドFCに触れ合う機会がない方へ、イベントをきっかけにサッカーの楽しさや福島ユナイテッドFCの存在・魅力を、逆にサッカーファンがイベントを通じて福島の魅力を、お互いに感じてもらえたら良いなと考えて取り組んでいます。

ーー「農業部」の“これから”について伺います。この活動のこれからをどのように考えていますか?

阿部)少しずつ認知されてきましたが、やはり継続性を持って活動していくことが一番大事だと思っています。1回だけ参加して終わりではなく、“長い目で見たときに福島のPRになるようなこと”をしなければと感じています。

地域の人に、「福島ユナイテッドFCがあってよかった」と思ってもらえるように、地域に根ざした活動を大事にしていきたいです。地域が良くなるような活動であれば、クラブが積極的に協力して取り組んでいきたいと思っています。やはりサッカーが本業がなので、農業の活動を増やしすぎてしまうと本業が農業になってしまうので、そこの調整は難しいところではあります。(笑)

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