北海道日本ハムファイターズのメインマスコットとして活動していた「B·B」。その可愛らしい姿に思い出を重ねるファイターズファンの方も多いのではないでしょうか。実は、「B·B」は2018年に活動の場をグラウンドからある別の場所へ移しています。今回は、グラウンドを飛び出し北海道の各地で活動する「B·B」に直接お話を伺いました。
「B·B」が1年かけてその町の魅力を発信する「The HOME」
ーーB·B、自己紹介をお願いします!
B·B)北海道日本ハムファイターズマスコットのB·Bです。ファイターズのメインマスコットとして2017年まで14年間活動してきました。今はグラウンドを卒業して地域貢献に活動のステージを移しています。
ーーB·Bがやっている「The HOME」というプロジェクトの趣旨や概要について教えてください。
B·B)「The HOME」は、特定の自治体を対象に、1年間かけて地域貢献活動を行うプロジェクトです。4月から翌年3月までの年度単位で行っています。2021年度は、太平洋沿岸の浦河町という町で活動していました!
ーーありがとうございます。どのような活動をされているのでしょうか。
B·B)具体的な活動内容は、市町村によってテーマが異なります。抱えている課題やPRポイントがそれぞれ違うので、個別に自治体と話し合い、希望や課題を聞いた上で、僕にできることをしていきます!長期間に渡って継続的に、それぞれの自治体に合わせて、できるだけ深く、というのがポイントです。そしてそれを僕のブログで積極的に発信もするというのが、この「The HOME」というプロジェクトです。
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北海道をあらわす数字だった背番号「212」
ーー「The HOME」の活動を始めたきっかけはありますか。
B·B)僕は、2004年から2017年までファイターズのメインのマスコットとして活動してきました。僕の背番号「212」は、北海道日本ハムファイターズが2004年に新しく北海道に誕生した当時の北海道の市町村の数なんです。僕が「212」という背番号をつけることは、ファイターズが札幌だけではなく、北海道全体をホームにしているという意識のあらわれでもありました。
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ーー「212物語」という活動が「The HOME」の前身なんですよね?
B·B)そうです!2006年に始めた「212物語」は、僕が10年間かけて北海道の市町村をすべて回るというプロジェクトでした。それぞれのまちを丸一日かけて回り、地元の方たちと交流をして、見どころや特産品などを紹介する映像を作り、後日札幌ドームでの試合の時に大型ビジョンで放映していました。
ーー10年間かけて212全ての市町村を回ったんですね!
B·B)はい!北海道民の方であっても全市町村を回ったことある方はなかなかいないと思うのですが、10年間かけてやり遂げました。大半の市町村で地域の方と交流会を行ったので、いろんなまちで当時のことを思い出していただけることが多いですし、行った側としても市町村の名前を聞くと特産品や名所が思い出されます。
ーーB·Bに聞けばそれぞれのまちの魅力が分かるんですね。素晴らしいです。
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10年で212の市町村を回ったからこそ見えた「課題」
ーー「212物語」の活動を通して、考えたことなどはありましたか。
B·B)2017年にメインマスコットを卒業し、2018年から地域での活動が中心になりましたが、どのまちに行っても「B·B!」と声をかけられることが結構あり、今までやってきた積み重ねを感じますね。一方で、課題を感じることもありました。基本的にひとつのまちでの活動は1日限りだったので、どうしても内容が「広く·浅く」になってしまったことです。活動当日は、役場の方とコミュニケーションをとるためお付き合いは生まれますが、10年以上経った今でもお付き合いが続いているケースはそれほど多くはありません……。
ーーなるほど。10年間活動していたことによって新しい課題も生まれてきたんですね。
B·B)また、「212物語」では主に「まちの見どころや特産品の紹介」が基本だったため、もっとそれぞれのまちの実態に合わせた活動ができたら…と考えていました。北海道は大半のまちで人口が減少していて、地方へ行けば行くほど過疎化の課題を目の当たりにすることが多く、少しでも力になれないかなという思いが僕の中にずっとあったんです。
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ーーその思いが「The HOME」に繋がったのですね。
B·B)はい。僕がグラウンドを卒業した翌年の2018年は、ちょうど北海道命名150年の年でした。なので、北海道庁主催の150年記念イベントに僕も関わらせていただき、僕の地域活動最初の年を過ごしました。また、その傍らでいくつかのまちを訪れて、市役所や役場の方と深く話し合い、僕がどのように地域と関わっていくとよいか、意見を出していただきました。そして2019年度から「The Home」を始めたんです。
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B·Bが馬に乗って障害を跳んだ!?
ーー1日限りの活動「212物語」と長期間の活動「The HOME」とを比べて、「The HOME」だからできたというエピソードはありますか?
B·B)浦河町での活動では、町の方から5つのミッションを提示されたんですが、その中で一番のミッションは「競走馬の町として馬文化を発信してほしい」という内容でした。びっくりしたのですが、その内容は僕が乗馬を練習して、障害飛越競技に挑戦するというものでした。それまでにも乗馬体験をしたことはありましたが、馬を引いてもらいゆっくり歩く程度。しかし、このミッションを達成するためには、1日だけの練習では当然足りません。達成のために継続的に練習をし、障害を跳べるまで上達しました。
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ーーミッションを達成したのですね!B·B、すごい!!!
B·B)すごいでしょ!町民乗馬大会の障害飛越競技にも出場しました。「212物語」のように1日だけの活動ではなく、「The HOME」だからできたことだと思っています。初心者から練習を重ねて上達していった様子は僕のブログでずっとレポートを続けていたんですが、それによって読者の方々にも乗馬の魅力を知っていただいたり、乗馬大会にも応援に来ていただいたり…と、ある程度「興味の入口」の役割は果たせたのかな、とは感じています。
ーー練習はどこでやっていたんですか。
B·B)浦河町内にある日本中央競馬会(JRA)日高育成牧場の広大な施設で行いました。施設で行われている調教の様子もブログで紹介しましたので、調教や競馬について興味のなかった方にも反響があって、JRAの方にも感謝されましたね。
ーー継続的に活動したからこそ得られた結果ですね。
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真面目なB·B「カジュアルに、でも、正確な情報を」
ーーブログを更新する上で気をつけていることなどはありますか。
B·B)地域貢献活動というのは堅苦しいものだと思われることが多いので、できるだけカジュアルに、堅くなりすぎないように伝えることを意識しています!ただ、いい加減な情報を載せることはしたくないので、きちんと伝えようとすると長くなってしまうこともあります。この点は悩みどころではありますね。正確な情報を分かりやすく伝えられたら良いなと思っています。
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ーー浦河町のほかには、これまでどのような地域で活動されてきたのでしょうか。
B·B)浦河町の前年は、それぞれのテーマに沿って今金町、大樹町、斜里町の3市町村で活動しました。北海道南西部にある今金町では、少子化の影響もあり中学校の野球部員が5名しかいないという問題がありました。一方で、小学校の野球チームには一定の人数所属している子がいることがわかったため、僕が小中両チームに顔を出すことによって、小学生チームの子どもが進学後も野球部に入りやすいように働きかけを行いました。
ーーファイターズのマスコットであるB·Bが来てくれたら、嬉しいですね!!
B·B)そう言ってもらえると嬉しいです!また、今金町では秋に3000人くらい集まる町最大のお祭りが開催されます。その期間に合わせて2週間くらい滞在し、お祭りの見せ場である山車に乗って太鼓を叩くために地元の子どもたちと一緒に練習をしました。
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ーーB·Bが太鼓を叩いたのですね!子どもたちも喜んでくれたでしょうね。他にはありますか?
B·B)知床にある斜里町では、テレワークの推進というテーマがありました。テレワークされている事業者の中にドローンに力を入れている方がいらっしゃったので、夏の間使われていないスキー場を活用してドローン操縦を教わり、町のPR動画なども撮ったりしましたね。また、人間と自然との共生を目指す知床財団の映像に「クマ」役で出演したこともあります。僕、一応クマなので!
ーー本当にいろいろな活動をしてきていますね。地域の方々にとっても嬉しいことだと思います。
B·B)PR活動の貢献などに関して感謝されることも多く、とてもやりがいを感じながら活動させていただいていますね。
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「B・B」が行ったところに行ってみたい
ーー活動をしてきて嬉しかったことなどはありますか。
B·B)地域の方々が喜んでくださるのが一番嬉しいです。浦河町での活動は、新型コロナウイルスのまん延とも重なってしまったため、思うように活動ができないまま1年が過ぎてしまいました。そのため特別に活動期間をもう1年延長して、先日最終日を迎えました。町長さんから感謝状をいただいたり、「PR活動に貢献してくれてありがとう」という声をいただいたりしました。
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ーー感謝状をいただけるなんて、嬉しいですね!
B·B)はい!それに、僕のブログを読んでくださっている方が、行ったことのない町に興味を持っていただけるのもとても嬉しいです。ファンの方が、「B·Bが行ったところに行ってみよう」という感じでそれぞれの町を訪れてくださるようで、活動をしてきた積み重ねが実を結んでいるような気がします。僕と一泊二日でそれぞれの町に泊まるという企画も行ったのですが、その企画に参加していただくことによって、それぞれの町により興味を持ってくださる方が増えています。そういったこともとても嬉しく感じています。
ーーマスコットキャラクターとしての発信力や親しみやすさの結果ですね。
B·B)そうですね。もちろん、選手が参加することができれば良いとは思いますが、行くことができる期間や場所が限られてしまうので、選手の代わりに僕が活動できたらいいなと考えています。
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グラウンドを卒業したB·Bのこれからの目標
ーーありがとうございます。2022年度の活動について教えていただけますか。
B·B)はい。2022年度は、中標津町と芽室町、雨竜町の3町で活動します。これら3町とファイターズは、パートナー協定というのを締結しているのですが、それもコロナ禍でなかなか活動ができずにいました。そこで、「The HOME」を協定の一環とすることで、この3町にも活用してもらえればと思い、提案させていただきました。
ーーパートナー協定は、他の市町村とも結んでいるのでしょうか。
B·B)はい。来年2023年に新球場のES CON FIELD HOKKAIDOが開業する北広島市とも結んでいます!新球場、楽しみです!
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ーー3町で活動することへの意気込みなどはありますか。
B·B)今年度の3町はいずれも農業·酪農などが基幹産業で、僕にPRを期待される部分もその辺になるんですが、それぞれの町の特徴を活かしてどう差別化できるかがポイントだと思っています。雨竜では特産品のお米やメロン作りを1年間追いかけ、中標津は牛乳消費拡大やふるさと納税PRのお手伝い、芽室では強い「人間力」を持った住民の多く住む小さな集落に着目するなど、それぞれ面白いテーマを設定できて、これからの活動が楽しみですよ!
ーー1年後が楽しみですね!他の目標などはありますか。
B·B)活動内容についてもブラッシュアップできたらと考えています。今後の目標として、B·Bだけで完結してしまう活動ではなく、他の事業や活動に派生·展開させられるようになったら良いなと考えています。
ーーB·Bは引退してしまったと思われている方もいるようですが、このような深い活動をされているのだとは知りませんでした。
B·B)僕は引退していませんよ、みなさん!引退したのではなく、活動の場をグラウンドから北海道全体に移しただけなので、こんなに元気に活動しているということを知っていただけたら嬉しいです。僕が一番大切にしてきたことは、「ファンの方々との心の絆」です。決して派手ではないかもしれませんが、これまでもこれからもファンとのふれあいの時間を大切にしていきたいと思っています。チームは勝ったり負けたりすることがありますが、どんな状況でもファイターズを応援したいと思っていただけるように、活動を続けていきたいです!
ーーありがとうございました!B·Bのこれからがとても楽しみです。今後も北海道のみなさんを笑顔にしてくださいね!
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B・Bのブログ「The HOME~B Bみらい大志Diary~」
https://www.bbthehome.com/