コロナ禍で気付かされた新しいエンターテイメントの価値。地域、行政、学校や企業などすべてを巻き込み、課題を共有し取り組んでいく為に発足したまったく新しいカタチ。
ブロックチェーンを活用したトークン発行型クラウドファンディングサービス「FiNANCiE」を活用し、湘南ベルマーレフットサルクラブが取り組む新しい社会貢献活動について、代表取締役社長の佐藤伸也さん(以下、佐藤)、ビジネスプランニングチームの北裕貴さん(以下、北)にお話をお伺いしました。
「トークンで社会課題解決のための仲間を集める」
ーーFiNANCiEを活用しての今回の取り組みは、どのような目的で始められたのでしょうか?
佐藤)私たち湘南ベルマーレフットサルクラブの事業戦略において、3本柱のうちの一つである“社会性”の部分で、5年後に160のプロジェクトを作ると公言しています。これを今いるメンバーだけでこなせるはずもなく、より私たちに関係する人口を増やしていくことが達成するためには必須事項です。
そうした背景もあり、同じ志を持って共感してくれる仲間を1人でも多く集める手段として『FiNANCiE』を活用することにしました。
ーー同じ志の人たちを探すのは難しいことだと思いますが、今回FiNANCiEというトークン発行の仕組みを選んだ理由を教えて下さい。
佐藤)大きな理由の1つは、私自身がWEB3の領域やいわゆるDAOと言われている集団の形に非常に興味があったことです。湘南、小田原地域というホームタウンの考え方もありながら、一方で広く地域を飛び越えて人を集めたいとも思っていたので、デジタルの世界を活用しようと思いました。
以前から「FiNANCiE」のサービスについて話を伺っておりましたが、その当時は興味はありながらも、私たちの目的とする“社会課題解決に向けた仲間作り”にどのように活かすのかというイメージができていませんでした。ですが、フィナンシェ社も実績を積み重ね、会話を重ねるうちに、このサービスを使った仲間集めが一番いいと思い、活用に踏み切りました。
ーー仲間づくりという点でのデジタルの世界の活用にはとても興味があります。実際に募集を掛けてどのようなメンバーが集まったのですか?
佐藤)スポーツに関わっている方や、スポーツが好きな方が多いのはもちろんですが、中でも社会貢献や地域連携に対して感度が高い方々が集まりました。そうした方々は、スポーツにおいて勝敗や技術向上という点だけではなく、もっと大切なことがあるのではないかとも考えており、地域や職業もさまざまです。
トークンホルダー自体は100名ほどで、そのうち10数名が常時アクティブに参加してくれています。
前例がない中で取り組む課題とメンバーとの相乗効果
ーー現在、組織としてどんな動きをしているのですか?
北)現在動き出しているプロジェクトの一例として、目が見えない方へのアプローチがあります。目が見えない人たちに対して「見るスポーツ」としてのフットサルの楽しさを伝えようとするプロジェクトです。アリーナに来たときも、ガイドをつけてプレーをなるべく言語化して伝え、頭の中でイメージを持ってもらえないかと考えています。
さらに、キッチンカーなどのアリーナの外のイベントにおいて、ユニバーサルデザインやガイドを充実させようとしています。場内と場外のコンテンツで、盲学校の方たちと一緒に提案を進めようとしています。
ーー地域も絡めた提案で、まさに地域と一緒に取り組んでいる形ですね。
北)もう1つ、FiNANCiEのトークンホルダーから生まれた話で、外反母趾に対するプロジェクトがあります。その方の知り合いで足のスペシャリストがおり、子どもたちも含めて外反母趾で悩む方に対してインソールや靴選びなど、サポートと改善ができないかと考えています。
ベルマーレフットサルクラブは、下部組織が小学生から高校生まであり、700名ほどメンバーがいます。外反母趾のヒアリング会や、必要な解決策を一緒に考えるなど、ベルマーレの持つリソースを使うことでメンバーの活動がもっと広がるようなことも考えています。
ーーチーム発信のものもあれば、トークンホルダー発信の社会課題解決のプロジェクトも動き出しているのですね。こうした活動でトークンホルダーの方々が感じている価値はどのようなものがあると思いますか。
北)「形がまだないものを作り上げる楽しさ」を感じてもらえると思っています。スタートアップメンバー募集という打ち出し方で集まったメンバーでもあるので、本当に1から一緒に作るというイメージを、クラブ側もメンバー側も持って活動できているんじゃないかと思います。
佐藤)今アクティブに動いているメンバーが、「楽しい」などの価値を感じてくれることが大事で、またその人たちが同じように感じてくれる仲間を連れてくるなど、このコミュニティが大きくなっていくイメージは私たちとしても持っています。
動き出しているものもありますが、実際に湘南ベルマーレとのプロジェクトを実現できれば、より一層このコミュニティの価値を実感できるのではないかと思います。
手探りの中見えたコミュニティの未来
ーー今回、FiNANCiEを活用してよかったと思えることはどのようなことですか?
佐藤)語弊のある言い方かもしれませんが、すごくレベルの高いメンバーが集まりました。それぞれが目的のために自ら考えて動ける人ばかりで、やるべきことをやって必要なことは議論することができます。
プロジェクトが形になった際、その過程にも注目が集まると思います。今後もトークン発行という形で、この社会課題解決に興味のあるメンバーを増やしたいと思っていますし、それで得た資金は事務所移転なども絡めてメンバー同士が集まれる“リアルな場所”を作ろうと画策しています。
ーーオンラインで人を集めて社会課題を解決しようと言う活動は世の中的に新たな取り組みだと思います。自立型組織が有効だと思う理由や実感されていること、反対に難しいと感じていることがあれば教えて下さい。
佐藤)普段働いている会社に勤めている人たちは会社の仕事に費やす時間が多く、ある一定の狭いコミュニティでしか活動できていないことが多いです。そういった人たちが集まれる“場”をつくっておくことが、普段忙しくてその人自身の力を引き出す有効な手段だと感じていて、メンバー同士で議論する中で新しい発見があったり、その人の力が引き出されるのであれば作った甲斐があるなと思います。
難しいことでいうと、やはりコミュニケーションを密にしていかないといけないと感じています。こうしてオンラインで募集して集まった集団では組織が形骸化してしまうケースも多く、クラブのニュースなど何かしらの接点を常に持つことで、「自分のこのクラブの一員なんだ」と思ってもらうことが大事なのではないかと思っています。
ベルマーレが向かう社会貢献のカタチとは?
ーー最後にこのトークンを活用した、社会課題解決・コミュニティがどのようになっていきたいかを教えて下さい。
佐藤)「シナジーをデザインしていく」ことを目指しています。いろいろな人や考え方を掛け合わせて相乗効果が生まれるような、そんなデザインができたらいいなと考えています。それを続けていくと、共に力を引き出し合う“共創ファミリーの実現”ということに繋がります。
北)みんなが自走してどんどんこの輪が広がって、冒頭に挙げた160のプロジェクトもいつのまにか達成されていくような、そんなコミュニティになっていくと嬉しいですね。
佐藤)あとは、現在トークンホルダーと呼んでいる皆さんにいい名前を付けたいですね(笑)。それを聞いただけで、あ、ベルマーレのコミュニティのメンバーだね!となり、メンバーも誇りを感じてくれるような。規模も大きくしたいですし、そんなコミュニティにしていきたいですね。
ーー非常にワクワクするお話をありがとうございました!