「2021年はいろんなことを”知る”1年にしたい」と語る元Jリーガーの松岡亮輔さんを聞き手に、さまざまなゲストをお迎えし、活動や想いを対談形式で深堀りしていく本企画。
今回のゲストは、アフリカを中心に活動されているSOLTILO株式会社の土屋雅人さん。後編では、土屋さんの原動力と今後の展望を伺いました。
タレント・元プロサッカー選手
松岡 亮輔(まつおかりょうすけ)
1984年生まれ。兵庫県西宮市出身の元Jリーガー。
中学・高校はセレッソ大阪の下部組織に在籍。Jリーグではヴィッセル神戸・ジュビロ磐田・モンテディオ山形・藤枝MYFCに在籍し、通算297試合、計14年間活躍。2014年天皇杯準優勝、2019年にはJ3リーグ年間ボール奪取数1位の個人賞を記録。2021年1月現役引退。2021年3月M’sAdvance(エムズアドバンス)を設立し、現在はテレビやラジオ、セミナーなどのタレント活動に加え、オンラインサッカースクールの事業も運営している。3児の父でもある。
SOLTILO株式会社
AFRICA DREAM SOCCER TOUR メインコーチ
土屋雅人(つちやまさと)
1989年6月22日生まれ / 埼玉県出身
大学卒業後、ショーワグローブ株式会社の営業職として4年間勤務後、2016年に青年海外協力隊としてサモアサッカー協会へ赴任。帰国後、JICA東京 国際協力推進員を経て、ラグビーワールドカップ2019™日本大会サモア代表アシスタントリエゾンオフィサーを務めた。大会終了後~現職として、ケニア・ウガンダ・ルワンダおよび日本国内の“機会の不平等に直面している子ども達”を対象に、無償サッカー指導や職業体験など、子ども達自身の世界を拡げるきっかけ作りを行っている。
松岡亮輔が抱き続ける世界への想い
松岡)僕は日本でずっと生まれ育って、選手として海外移籍をしたいっていう気持ちは強くあったんですよ。個人的にツテを頼って探しましたが、なかなか見つかりませんでした。
その願いが叶う前に引退してしまったのですが、知りたいんですよね。海外の人の生活習慣であったり、文化とか性格みたいなものを。
土屋さんに是非「日本と海外の違い」を教えて欲しいです。
土屋)海外で楽なのは、あんまり気を使わなくていいというか、行間を読まなくていいので、結構ストレートに言いたいことを言えます。あとはミスが当たり前というか、うまくいかないことの方が普通なので、チャレンジが失敗に終わったとしても「何も失っていない」と感じられていいですね。
コミュニケーションのところも、言語や文化の違いで難しかったりもしますが、元々が違うっていうのが大前提としてあるので、時に分かり合えなくても、別の日になればすっからかんとして仲良くなったりとか。喧嘩しても次の日には気にしなかったりとか。
そういった根に持たない海外の方のあっけらかんとしたところは私は結構好きです。苦労しているところで言うと、日本食が食べられないくらいです。苦労はあんまりなかったです。
ーー土屋さんから見て、松岡さんが今後「海外」「社会貢献」をキーワードに、こんな取り組みをできそうではないか、というアイデアはありますか?
土屋)プロサッカー選手としてプレーされていた松岡さんがこちらに来て、現地の子供たちに教えていただけるのも、もちろん一番喜ばれると思いますし、今日本で静岡を中心に活動されている様々な取り組みを海外(アフリカ)にも取り入れていただいて、スポーツを通じた地域活性化を、現地のNGOと一緒に取り組んでいただいても面白いと思います。
あとは「オレは摂取す」のゼリードリンクを持ってきて、それに関するマーケティングを現地でやっても面白いんじゃないかなと思います。
アフリカでの経験を活かし、もう一度サモアへ
松岡)ありがとうございます。土屋さんは、個人として今後の展望はありますか?
土屋)将来的には、もう一回サモアに戻って、サモアのサッカーが発展するお手伝いを、指導者側、もしくはマーケティング側でチャレンジしたいなという想いがあります。
なぜサモアかというと、マーケット的に世界から取り残されている場所なんですよね。アジアやアフリカは人口が今後爆増するので、海外からの投資がどんどん入ってきていますが、サモアは人口も大きくは増えていかないし、現在も人口20万人ほどで且つ島嶼国と大陸からのアクセスも良くないので、投資がなかなか呼び込めず、国として伸びる見込みも薄いです。
国の課題の一つに、優秀な人材ほど海外に出てしまうという「国の空洞化」があり、意外と世界から取り残されてるのってアフリカやアジアではなくて、サモアや他の大洋州の国々 なのではないかと思っています。そこであえて、サモアが発展するチャレンジをしたいです。
またサモア以外のところでいうと、アメリカ大陸は北も南も行ったことがないので、行ってみたいですし、アフリカはアフリカでも東側は英語圏ですが、西側はフランス語圏になるので、それぞれ違うアフリカの文化があると思います。
アフリカだけではなく、まだまだ勉強で海外いろんなところに行きたいなとは思いますし、日本全国にも足を運んだ経験があるわけではないので、国内もいろんなところに行ってみたいです。
松岡)パワーがすごいですね、土屋さんの原動力ってなんなんですか?
土屋)好奇心ですかね。松岡さんのに合わせて言うと。
松岡)いや、俺の好奇心がちっぽけに見えてきたんですけど。(笑)
土屋)そんなことないですよ!(笑)
楽しんだその先に「結果的に」社会貢献をしている
松岡)例えば、家族を養うためとか、自分の名誉のためとか、人が困ってるからであったりだとか、いろんな目的で人は動くと思いますが、土屋さんの場合はなんだと思いますか?やはり好奇心ですか?
土屋)そうですね。好奇心と、あとは自分が楽しいかどうかでしか動いてなくて。僕は人を助けたいとか社会のために活躍したいとか、そんな大それた気持ちはありません。
自分が楽しいと思える事をやって、結果的に貢献できていたらそれが一番いいかなと思います。
松岡)アフリカのため、社会のため、「結果的に」十分役割を果たしていますよね。
ーー土屋さんは何をしている瞬間が楽しいですか?
土屋)海外でサッカー指導をしていると、日本の子どもたちがまずやらないような奇想天外なプレーが目の前で展開されるんですよ。頭の上のハイボールに対して両サイドから脚が出てくるんですよね。少林サッカーみたいに。(笑)
そう言うのを見て、ケラケラ笑ってる自分が楽しいです。
松岡)第二のオルンガ選手(※1)が出てきそうですね。
※1 マイケル・オルンガ選手…ケニア出身のサッカー選手。昨年まで柏レイソルに在籍。
土屋)身体能力的にズバ抜けている子は、本当にズバ抜けていて凄いです。
松岡)日本でもそうなんですけど、僕らから見て明らかに才能がある子でも、コーチとか環境とかお金とかも含めて、埋もれちゃう子っていくらでもいるわけじゃないですか。
日本でもいるのに、おそらくアフリカだともっといるんじゃないかなって思うと、そこは発掘してあげて、何かその子の将来に繋げてあげたいという想いはありますよね。
土屋)そうですね。私たちも、アフリカで活動をしている日本のNGOとか現地のコミュニティの人たちと一緒にサッカー指導をさせてもらっていますが、そこから溢れている子どもたちや、経済的理由で学校も行けていない子どもたちへはアプローチ出来ていない状況です。まだまだやっていて歯痒いところはいっぱいあります。
松岡)やはり、現地にいるスタッフの人数はまだ足りていない状況ですか?
土屋)そうですね。コーチの数を増やすことができれば、常時他の国に指導者がいる環境が作れます。また、日本で行なっている活動も、私が海外に滞在している間は止まっているのが現状なので、日本でもスクールとは別で、社会貢献活動をやってくれるコーチがいてくれたら、それはそれで日本の子どもたちのためにもなるかなと思います。
ソルティーロ広報)私は土屋が日本でやってくれた活動をよく知ってるんですが、素晴らしいものを残してくれています。それを誰かを雇って、やってもらうことはもしかしたらできるかもしれないと思います。でも、この活動は我々の想いに共感してくれないと意味がなくて。続けられないし。そういう人材を見つけるのは、やはりそう簡単じゃないなってことは感じますね。
養護施設の子供たちや母子生活支援施設で生活している子どもたちなど、サッカーの習い事をしたくても、できない子どもたちがいるという現状があります。そういった子どもたちに対して、土屋が無償でサッカー教室を開催して、才能がある可能性がありそうな子は私たちのサッカースクールに通える環境を提供しています。
また、サッカーだけでなく、料理教室やプログラミング教室など、様々な教室を土屋が企画してくれて、いろんな体験できる機会をつくっています。
そういった機会を通じて、彼、彼女たちがそれぞれの職業に興味を持ってくれたら、第一ステップとしては、彼、彼女たちの人生にとって意味がある時間になったんじゃないかなと思います。
松岡)素敵ですね。ソルティーロさんの活動や想いをもっともっと発信していくことで、絶対に共感してくれる人は出てくると思います。SNSという武器がありますからね!
本日は貴重なお話を聴かせていただき、ありがとうございました!
土屋)ありがとうございました!