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今なにができるのか。防災を身近に捉えてもらう取り組みについて考える座談会を実施

藤枝MYFCイベント

静岡県にある、特注家具OEM製作を主に行うFPKナカタケ株式会社では、日常では子どもたちが遊べる迷路としてなど、さまざまな用途で“普段づかい”もできる避難所用パーテーション『どこでもく〜も』の販売を行っています。

静岡県では、南海トラフ地震が起きた際には大きな被害が出ると予測され、さまざまな方が防災に関する取り組みを行っています。今回は、『静岡の防災』について考える座談会を開催しました。
参加したのは、FPKナカタケ株式会社から代表取締役社長・中根正雄さん(以下、中根)と、牛丸あやめさん(以下、牛丸)に加え、Jリーグ・藤枝MYFCにてホームタウン活動の推進をされている鈴木裕利さん(以下、鈴木)、そして現役の学生でありながらNPO法人「New universal act」として防災活動に取り組まれている、藤本湧磨さん(以下、藤本)、久保田海央さん(以下、久保田)。

「楽しく、身近に感じられる防災とは?」みなさんも一緒に考えてみてください。

FPKナカタケ
「静岡らしく」防災と向き合う。静岡の企業が東北の被災地を訪れて感じた想いとは?住宅設備向けOEM家具製造と商業施設向け特注家具製造を行うFPKナカタケ株式会社では、2020年に避難所用のパーテーションを開発しました。その後、日常では子どもたちが遊べる迷路としてなど、さまざまな用途で“普段づかい”もできる『どこでもく〜も』として販売を行っています。 本社を置く静岡県は、南海トラフ地震が起きた際には大きな被害が出ると予測されます。静岡の企業だからこそ、静岡の方々に防災意識を少しでも高めてもらいたいという強い想いを持っているFPKナカタケ株式会社。代表取締役社長中根正雄さん(以下、中根)と、牛丸あやめさん(以下、牛丸)に『どこでもく〜も』が誕生した経緯、実際に被災地を訪れて感じたことなどについてお話を伺いました。...

企業・Jクラブ・学生団体が集合!

ーー現在それぞれ取り組まれていることについて教えてください。

中根)FPKナカタケ株式会社は家具の製造メーカーなのですが、私自身の中に“防災”に特化した商品を開発したいという想いがありました。そこで、日常的に使えて、いざというときに役に立つものという観点から『どこでもく~も』という商品を開発しました。
現在は、『どこでもく~も』を企業に購入いただき、その企業から学校に寄贈していただいたり、さまざまなイベントに出展し、多くの方にその商品を見てもらっています。

ーー「避難所用のパーテーションが、日常では迷路として遊べる」という商品ですよね。藤枝MYFCさんの試合会場にも出展していると伺っています。

鈴木)そうですね。藤枝MYFCでは、昨シーズン防災に関する取り組みとして中学校の防災の授業に関らせていただくだけでなく、FPKナカタケさんの『どこでもく~も』をお借りして、スタジアムで迷路を作ったイベントを実施したり、各地でのイベントにも『どこでもく~も』を持っていき、『サッカー迷路』を実施いたしました。

藤枝MYFCイベント焼津市での『どこでもく~も』を用いた藤枝MYFCのイベント

みなさんのご協力もあり、昨シーズン昇格を果たすことができたので、今シーズンからはJ2の舞台で戦います。これまでよりも注目度も高まると思いますので、静岡の皆さんが防災について改めて考えてもらうきっかけを与えて、恩返しができるよう頑張りたいです。

ーー現役の学生でありながらNPO法人「New Universal Act」にて防災活動に取り組んでいる藤本さんと久保田さんは、どのような活動をされているのですか?

藤本)『New Universal Act』は、学生が中心となって活動をしており、静岡県内の学校で防災に関する授業の開催などをしています。防災を「いかに楽しく、そして身近に感じてもらえるように」という観点を大切にしながら、自治体の方とも協力して、学生目線で地域に密着した防災活動に取り組んでいます。

New Universal ActNew Universal Act 藤本さんの授業の様子

防災を楽しく、身近に感じてもらうには

ーー今日は「防災を楽しく、身近に感じてもらうには」というテーマで皆さんの想いを伺っていきたいと思っています。鈴木さんは、藤枝MYFCで実際に学校で防災の授業を行ってみていかがでしたか?

鈴木)どうしても学校の授業だと、「まじめに聞かないと」という印象を生徒たちは受けがちです。マスコットを連れていったり、『どこでもく~も』を迷路として活用し、遊びながら防災について学んでもらうことで、自然な流れで子どもたちには授業に参加してもらっていると思っています。

ーー楽しみながら防災について学べる良い事例ですね。子どもたちに身近に防災を感じてもらうかということはすごく難しいことだと思います。学生である藤本さん、久保田さんは被災地にも訪問されたとのことですが、訪問してみて感じたことはありますか?

藤本)地元の飲食店に行った際、災害時の写真と、再びお店を再開させた時の写真があったんです。この場所で実際に災害が起きて、そこからなんとか立ち直って今がある、ということをすごくリアルに感じました。もし静岡で同じことが起きたら「自分たち十数年でここまで立ち直れるだろうか」と思いましたし、災害の恐ろしさと地域に住む人たちの苦労や努力があっての今なんだということを強く感じることができる体験でしたね。

久保田)私は被災地訪問が初めてで、メディアを通じて災害の恐ろしさというものを実感していたのですが、実際ここまで津波がきたということを視覚的に感じることでよりリアルにその怖さを実感しました。

ーーやはり直接足を運んで、感じることで得られるものは多いですよね。一方で、静岡に住んでいる皆さんが防災に興味を持ち、活動を行うようになったきっかけも気になります。現役高校生である久保田さんは、なぜ興味を持ったのですか?

久保田)中学生までは、学校で行われている防災訓練にただただ参加している学生でした。その訓練では流れが決まっているので、それに従うだけだったのですが、たまたま藤本さんの担任だった先生が、自分の部活の顧問の先生だったのをきっかけに『New Universal Act』の活動に参加するようになったことで、楽しみながら参加していたら実は防災だったという体験をし、興味を持つようになりました。

沼津でのイベントの様子沼津でのイベントの様子

ーー楽しみながら防災を知る活動は藤枝MYFCさんも取り組まれています。担当されている鈴木さんは、それ以前から防災への関心はあったのでしょうか?

鈴木)正直、防災にはあまり関心がありませんでした。静岡に住んでいて、小学生のときから「南海トラフ地震がいつか来る」って言われ続けてきて、かれこれ30年弱ぐらい経ちます。もちろん地震はたまに起きますし、起きたときは意識が強くなるものの、少し経ったらすぐ忘れてしまいます。
そんな中、昨年から藤枝MYFCのホームタウン推進部という部署に所属して、自ら防災に関する情報を発信する立場になりました。自分の経験から、ストレートに防災がテーマのイベントや授業を企画しても、もう慣れてしまっていてあまり効果はないと思ったので、サッカーと結び付けての活動や、FPKナカタケさんなどの企業にも協力してもらっての活動など、『防災×〇〇』の活動にすることで防災活動のハードルを下げることにつながると考えています。

ーー素直な意見から、今の活動につながっているんですね。

鈴木)私自身も被災を経験したことがないので、やはり「当事者意識を1人でも多くの方に持ってもらうには」ということを今でもずっと考えていますし、まだまだ課題を抱えているとも思っています。

ーー課題はまだまだあるとのことですが、FPKナカタケとして考えているアイデアなどを教えてください。

中根)もっといろいろな人、団体、企業などが防災について一緒に考える場を作っていくべきだと思っています。自治体には自治体のルール、学校や企業にもそれぞれの考えがあるのは当然だと思いますが、やはり各々の力だけでは防げない被害もあります。私たちはそうした考えを持って、学生である藤本さんたちと一緒に被災地訪問に行くなど、いろいろな世代の人たちと関わるような活動をしたりしています。
そうしたさまざまな人が交わるコミュニティが必要で、いざというときに力を合わせられる関係性を作りたいです。そのような中核を担える存在の1つがスポーツチームだと思うので、藤枝MYFCさんとは今後も活動を積極的に行っていきたいです。

藤本)活動をする上で、静岡県外の学生と話すことも多いのですが、「地震がくる」と言われ続けてることもあり、“静岡の人は防災に対する知識が備わっている”と感じています。知識量ではなく、慣れてしまっていることが課題だと思うので、常に意識を更新できるような取り組みが必要だと思います。

牛丸)慣れすぎてしまっているという点では、毎回同じ避難訓練を行うだけでなく、いま一度その内容を改めていくことが必要だということは、被災地訪問した際にも感じました。

久保田)『New Universal Act』のような学生自らがNPOとして防災活動を行っている団体がある、ということも静岡ならではの特徴だと思うので、若い人にも防災意識を常に持っていただけるような環境づくりに努めたいです。

ーー東日本大震災が起きた当時をあまり覚えていない若い世代にも「自分ごととして捉えてもらうには」という観点は今後も重要なポイントになりそうですね。

それぞれの立場から静岡を守る

ーーみなさん本日はありがとうございました。参加してみていかがだったか、感想をお聞かせください。

牛丸)いろいろな立場の方々が、「防災に楽しんで取り組むには」という共通のテーマで話してみて、やはり皆が共通の課題を抱えているように感じました。今までやってきたことをベースに、今後もさまざまな方と協力しながらより良いものにしていこうと思います。

久保田)藤枝MYFCさんの取り組みについて初めて知って、サッカーチームを通じた防災の形にすごく可能性を感じましたし、新たな防災のあり方について考えるきっかけになりました。

藤本)それぞれ別の立場でありながら、静岡を想って皆さん活動に取り組まれていることは共通していて、地域があっての私たちなんだ、ということをすごく感じました。東日本大震災を知らない子どもたちも今後増えてくるので、そういった子どもたちにも防災の大切さを伝えていくことが、静岡を守ることにもつながるので、そういった循環を生むピースになれるよう今後も頑張りたいと思います。

鈴木)非常に貴重な機会でした、ありがとうございました。Jリーグチームとしての責任やその可能性を改めて感じました。もちろん防災だけではないですが、行政の方や企業の方など、いろいろな人を巻き込んで常に新たな活動を生み出せるように頑張ります。今シーズンも応援よろしくお願いします。

中根)サッカーの話をしているうちに色んな方とつながれて今までやってこれました。静岡という土地柄だからこそサッカーチームに期待をすごくしています。また、若い世代の意見ももっと取り入れていくべきだと思うので、今日のような場を今後も設けていくことが必要なんだと改めて感じました。

ーー今日のお話をきっかけに、静岡の防災がより良いものになっていくと信じています。本日はありがとうございました!

※本件は中小企業地域資源活用等促進事業の助成金を活用して実施しています。

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