2025年東京開催のデフリンピックのエンブレムがついに決定!
シンプルでカラフル、かつ印象的なデザインを制作したのは筑波技術大学4年 多田伊吹さん(以下、多田)。
以前のSports for Socialでの取材で、「アスリートに負けないくらいの情熱をもって制作したい」と話していた多田さん。そのイベントに参加したデフサッカー女子日本代表・岩渕亜依さん(以下、岩渕)とともに、エンブレム決定に対する感想、2025年に向けた想いを伺いました。
『手』を象徴としたエンブレム
ーー多田さん、エンブレムの決定おめでとうございます!
多田)ありがとうございます!私が作ったエンブレムは、最終選考に残ったほかの2作品と比べてシンプルなものでした。ほかの2つには、富士山や花など、素晴らしいデザインが多く盛り込まれていて、中高生にはそちらの方が好みかなと思っていたので、選ばれたときは驚きました。
決定後、実際にステージに上がったときに、「選んでもらえたんだ」と思い実感が湧きました。とても嬉しかったです。
ーーこのエンブレム制作では、さまざまな初めての経験もあったと思います。どんなことが多田さんにとって大変でしたか?
多田)デフリンピックのシンボルとして、『手』を活かしたエンブレムにしたいと考えました。普通に手の形を示すだけではオリジナリティがないので、そこにどう自分のデザインを組み合わせていくかを考えるのが大変でした。
ーーとてもシンプルで素敵なデザインですよね!デフフットサル選手の岩渕さんもイベントに参加されていましたが、多田さんのデザインについてどう思われましたか?
岩渕)とても素晴らしいデザインが3つある中で、多田さんのデザインは“シンプル”であることが目を引きました。イベント内では、多田さんがエンブレムに込めた想いを発表していただく時間があったのですが、一筆書きできるデザインであること、色をカラフルに使っていること、手の親指部分が花のモチーフになっていることなど、とても魅力的なデザインだと感じました。
多田)シンプルであることと、繋がりを表現することや色合いに関してはとてもこだわった部分なので、そこが伝わっているのはすごく嬉しいです!
岩渕)グループ内では、とくに一筆書きできることが素晴らしいという意見が多く出ていましたよ。
多田)ありがとうございます!私のまわりからも一筆書きがよかったという声を多くいただきました。
中高生で意見を交わしながら
ーー今回は、筑波技術大学の学生がエンブレム制作をし、開催地である東京都の中高生がワークショップを通して選考をするという新しい形でのエンブレム決定となりました。岩渕さんはそのワークショップにも参加されて、中高生と意見を交わされましたが、当日の雰囲気はいかがでしたか?
岩渕)6~7名ほどで分かれたグループは、それぞれ知らない人同士の組み合わせでした。最初はなかなか意見が出ませんでしたが、後半にはいろいろと意見が交わされていました。私にとっても、ほかの方の意見で「なるほど」と思う意見もあり、グループで話し合えたことは、どのエンブレムにするかを考えていく上でとても良かったと思います。
ーーたしかに、話し合いの時間中もだんだん後半になると盛り上がっていましたね!ろう者の方もグループ内に混ざっていましたが、分け隔てなくコミュニケーションを取っているのが印象的でした。
デフサッカーのコミュニケーションの工夫
ーーせっかくの機会なので、多田さんから岩渕さんに聞きたいことはありますか?
多田)デフサッカーでは、どんなコミュニケーションの取り方をしているのかが気になります!以前デフバレーボール選手に伺った際には、手話のわかる方もわからない方もいると聞いていたので、サッカーの場合はどうなのか。どんなコミュニケーション方法を取るのかが気になります。
岩渕)サッカーのピッチは広いので、手話を使ってもなかなか遠いサイドにいる人には伝わりません。また、声で指示したとしてもなかなか届きません。
監督からの指示の場合は、監督に近い人から伝達していったり、スローインなどでボールが外に出た際にチラッと監督の方を見たりして、チームとしての意思疎通をしています。
チーム内では、手話のわかる人、わからない人もいる中ですが、事前にチームとしての戦い方をしっかり決めた上で、サインなども決めて試合に臨むことで、ピッチ内での難しいコミュニケーションをフォローしています。
2025年に向けて
ーー岩渕さんたちのようなデフアスリートにとって、東京2025デフリンピックのエンブレムが決まるということはすごく大きなことですよね。
岩渕)デフアスリートとして、エンブレムが決まる瞬間に立ち会えたというのはとても大きなことです。いままでの大会と異なり、エンブレムを見るたびにその意味や込められた想いを思い出せるので、モチベーションの向上にも繋がるのではないかなと思います。
SNSでも多くのデフアスリートがこのエンブレム決定についてポジティブに反応していました。
多田)私も、デフアスリートの皆さんのSNSでの反応や、まわりの方からのコメントをいただいてとても嬉しかったです!出身地の岩手の方や、なかなか連絡をとれていなかった友人や知り合いからもメッセージをいただきました。
ーーいろいろなデフアスリートの方、世界中の方が自分の作ったエンブレムを見てくれることは嬉しいことですよね。
多田)そうですね。私はアスリートではないので、デフリンピックに関して“距離が遠い”という感覚を持っていました。こうして今回デザインの面で関わらせていただき、このデフリンピックの舞台に私も参加できる!と、身近に感じることができました。
スポーツをやっていない人でもこうして関われるような形をこれからも作っていってほしいなと思います。
ーー2025年に向けて、お二人からメッセージをお願いします!
岩渕)やはり、まだまだ認知度が低いことがデフスポーツの課題です。メディアにもたくさん取り上げられて、広がっていけばいいなと思っています。また、私自身は普段は地域のサッカーチームに所属して練習していたり、企業でも働かせてもらっています。そうした身近なまわりの人からデフリンピックの魅力を広めていくことにも取り組んでいけたらと思います。
多田)私は今年度で大学を卒業し、一般企業に就職します。幼稚園から聾学校に通ってきたので、健常者の方も多くいる会社に入ることには不安もあります。ただ、人と人とのつながりを大切にする会社なので、このエンブレムにも込めた『人の輪』を大事に仕事にも取り組んでいきたいです。そして、職場の人やお客様に対して、デフリンピックについて広め、認知度をどうやったら上げていけるのか、ということについて考えていけたらと思います。
ーーありがとうございました!
エンブレム発表イベントの様子はこちらから!