2022年6月7日(火)〜 6月9日(木)にかけて行われる、スポーツ×社会貢献のオンラインイベント「Sports for Social Summit 2022 summer」。その見どころをセッション毎に紹介していきます。
Session.8は「骨髄バンクを広めたい!~いのちをつなぐホンモノの想い〜」。
登壇者の荒井daze善正さん(一般社団法人SNOWBANK)との事前打ち合わせの様子を紹介します!
きっかけは28歳の時に受けた余命宣告
ーーまず、SNOWBANK設立の経緯について教えていただけますか?
荒井)私は20代からプロスノーボーダーとして活動していました。しかし、28歳の時に慢性活動性EBウイルス感染症という病気を患い、余命宣告を受けましたが、治療の際に献血者からの輸血や骨髄ドナー登録者からの骨髄提供によって命を救われました。この経験がSNOWBANK設立につながります。
私は治療を進める際に医師の方から、骨髄の適合者が14名いると伝えられました。しかし、14人の中にすぐに骨髄の提供をできる方はおらず、骨髄移植を待つ期間を半年過ごしました。その半年という期間に私は「もしも自分が生き続けることができたなら、14人と言われる社会ではなく、100人・1000人・1万人と言われる社会にしたい」と考えていました。
ーー適合者が14人と聞くと、数としては多いなという印象を持つ方もいらっしゃると思うのですが、ただ一致するだけでは治療に踏み切ることは難しい現状にあるということでしょうか?
荒井)そうですね。骨髄移植では、HLA型という骨髄の型が存在します。また、HLA型の中には、A座・B座・C座・DR座という4座(8抗原)があります。HLA型は両親から各座半分ずつを遺伝的に受け継ぐため、兄弟間での適合率は高くなります。一方で、非血縁者間では、数百から数万分の1の確率でしか一致しません。さらに、一致した方がいた場合でも、実際に移植手術を行えるとは限りません。提供者の方の生活環境の変化や体調の変化などさまざまな要因によって、適合者が見つかってから手術に至るまでの期間は人それぞれです。そのような状況を考えると14人は決して多いとは言えません。
ーーだからこそ100人・1000人・1万人と一致する数を増やして、実際に骨髄移植につながる確率を高めることが必要なのですね。
荒井)はい。実際に骨髄移植につなげていくことは重要なことです。ですが、私自身はあまり重く考えずにもっと気軽に登録していただきたいなとも思っています。登録した場合、絶対に骨髄の提供を行わないといけないわけではありませんし、考えや環境の変化は誰にでもあると思います。そのため、最終的な判断は登録後、適合の連絡が来てからでいいのです。
ーードナー登録をもっともっと身近なものにしていくことが大切ということですね。
荒井)そうですね。遠くの誰かを救うことではなく、自分自身や近くの大切な人が必要としたときの準備だと思ってほしいですね。
コロナ禍でも過去最多の献血数・ドナー登録数
ーーでは、実際にSNOWBANKでは、どのように活動をスタートさせていったのでしょうか?
荒井)始めは一般的なボランティア活動からスタートしました。ボランティア活動では、どうしても「献血をしてください。ドナー登録をお願いします。」とお願いするスタンスになりがちです。
そこで、献血やドナー登録に対し、対象者が向かってきてもらえるような仕組みを作りたいと思い、2011年にプロスノーボーダーや音楽アーティストなどを集めた「東京雪祭SNOWBANK PAY IT FORWARD」を開催しました。そこで集まった方々にメッセージを発信し、自ら行動して行きたくなるような活動に繋げていこうとしました。
ーー実際に従来(お願いするスタンス)の活動との数字的な違いはありましたか?
荒井)そうですね。毎年、献血者 222名・ドナー登録者 111名を目標にイベントを開催しています。2021年は2日間のイベント開催で、1万1000人の方にご来場いただき、献血は402名・ドナー登録は121名の方々にご協力いただきました。
毎年同じ場所で開催しているため、既に登録してくださっている方もお越しいただく中で、新たにご協力いただける方が毎年のようにいることは、イベントとして成功しているのかなと感じています。
ーー毎年多くの方にご協力いただくこと、特に新規のドナー登録者を獲得するために、どのような工夫をされたのですか?
荒井)最初はプロスノーボーダーを集めたスノーボードのイベントがメインでした。活動を行う中で、このままではただのスノーボードイベントで終わってしまうと感じ、もっと多くの方に献血・骨髄バンクのことを知ってもらうためには、活動の幅を広げていく必要があると考えました。そこで、音楽アーティストのジャンルを変えたり、サーファーを呼んだり、プロレスや日本財団HEROsの活動とコラボしたりと、変化を加え活動を展開してきました。
ーー荒井さんの中で、特に印象に残っている年などはありますか?
荒井)やはりコロナ禍で開催されたということもあり、2021年は私の中でとても印象に残っています。状況的にイベント開催が難しい中でも、献血・ドナーを求めている患者さんは減りません。そのため、どのような状況下でも開催したいと思っていました。結果として、これまでで最も多くの方にご来場いただき、献血・ドナー登録ともに過去最多となりました。
ーーコロナの観点で言うと、音楽アーティストの方々は特に難しい期間を過ごしていらっしゃると思いますが、アーティストの方々の反応はいかがでしたか?
荒井)「とても温かいイベントですね。毎年呼んでください」と言ってくださるアーティストさんが多くいます。私たちの目的は献血・ドナー登録を増やすことで、患者さんを治療のスタートラインに立たせてあげることです。そのようなはっきりとした目的があることで、『何のために歌うのか』ということを意識して活動できることが大きな理由だと思います。また、2022年5月21日には「THE BANK」という音楽イベントも開催しました。
ーー音楽の面からも良いアプローチが行えているのですね。
荒井)過去に『COTSU FES』というイベント内で献血・ドナー登録を呼びかけた際に、あっという間にたくさんの方のご協力を得ることができました。その際に、音楽の力はすごいなと感じ、継続的に音楽の面からもアプローチし続けていきたいと考えました。
2020年にも『COTSU FES』を開催する予定でしたが、緊急事態宣言のため開催中止となりました。そこで、出演予定だったアーティストさんにご協力いただき、指定の献血ルームで献血または骨髄バンクドナー登録をした際に「SNOWBANK献血で来ました」と伝えると、限定グッズなどがもらえる「SNOWBANK献血プロジェクト」もスタートしました。
ーーアーティストの限定グッズがあると、たしかに足を運ぶファンの方は増えそうです。
荒井)緊急事態宣言下では、献血ルームはもちろん街にも人がいない状況になりましたが、限定グッズをきっかけに献血ルームに足を運んでくださる方が増えました。また、そうしたキャンペーンが終了した後も、継続して献血を行ってくださる方もいて、非常に取り組んでよかったなと思いました。
ーーSNOWBANKさんの活動の中で、アーティストとともに行う音楽の部分と、スノーボードイベントやHEROsとのコラボなどのスポーツの部分もあることで、どのような作用がありますか?
荒井)これまで行ってきたスノーボードや音楽ではコアな層にしかアプローチできていなかったのですが、それぞれを絡めることによって、より幅広い層にアプローチすることができていると思います。
患者さんが治療のスタートラインに立てる環境を作りたい
ーー今後、SNOWBANKが目指す姿や目標があれば教えてください。
荒井)私たちが常に目指しているのは、患者さんが治療のスタートラインに立てる環境を作ることです。命を救うことではありません。実際に移植手術が受けられる状況でも、手術を拒む方もいらっしゃいます。治療が必要になったときに、誰もが選択できる環境を私たちは作りたいのです。そして、そのための手段が献血や骨髄バンクだと考えています。最終的には、献血やドナー登録をすることが当たり前な社会になるといいなと思っています。
ーー誰もが同じスタートラインに立てるということが重要なのですね。その環境を作っていくためにも、今後取り組みたいことは何かありますか?
荒井)これまで取り組んできたような活動は継続して取り組んでいきたいと思います。また現在、東京雪祭やTHE BANKを制作する段階で専門学生などに参加していただいていますが、そのように若い方を巻き込んだ取り組みをもっと行っていきたいと思っています。
ーーありがとうございました!
▼チケットはこちらから
https://sports-for-social-summit2022summer.peatix.com
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◆Session.8 概要
6月8日(水) 20:00~20:50
タイトル「骨髄バンクを広めたい!~いのちをつなぐホンモノの想い~」
登壇者:荒井daze善正(一般社団法人スノーバンク)