「アップサイクル」とは廃棄物をゴミとして捨てるのではなく、別の新しい製品にアップグレードしモノ自体の価値を高める循環システムのことです。アップサイクルはさまざまな業界から注目されており、服や家具などにも取り入れられています。今回はアップサイクルの意味やリメイクとの違いなど、製品例とともに解説していきます。
アップサイクルとは
捨てられる予定だった廃棄物にデザインやアイデアといった付加価値を新たに加えモノ自体の価値を高めていくという取り組みです。着なくなった服にアレンジを加えたり、ソーラーパネルをテーブルにしたり、工夫や作品の幅は多岐に渡ります。
アップサイクルは1994年10月11日にレイナー・ピルツ氏がドイツメディアに向けて、アップサイクルとダウンサイクルについて語ったことが始まりであるといわれています。
しかし、1800年代にアメリカの思想家ラフル・ワルド・エマソンが「自然界には寿命を終えて捨てられるものはない。そこでは最大限利用された後も、それまで隠れていた全く新しい次のサービスに供される」と述べていたことから、アップサイクルは昔から当たり前に行われてきたことがわかります。
産業革命以降は効率性と規模が追求され「使い捨て文化」が定着しましたが、近年は地球環境の保全や社会との関わりに対する関心が高まり、サステナブルな取り組みが広がっています。その1つとしてアップサイクルが再注目されているのです。
リメイクやリサイクルとの違いは?
リメイクとの違い
リメイクに明確な定義はありませんが、元の製品と異なるものを作るのではなく手を加えてアレンジすることをいいます。また、アップサイクルよりも広い意味で使用され、価値を上げる場合と下げる場合の両方の意味を持っています。
リサイクルとの違い
不用品を一度資源に戻してから製品をつくる場合が『リサイクル』、不用品をそのまま使用しより魅力的な製品をつくる場合が『アップサイクル』です。
アップサイクルはなぜ必要?
人々が生活を続けるにあたって廃棄物の発生は避けられません。しかし、このままでは地球への負担は増加し、環境汚染などの問題がより一層深刻化していきます。そこで必要な取り組みがアップサイクルなのです。
メリットとしては製品にさらなる価値が付くこと、リユース(再利用)と比較し製品そのものの寿命が延びること、資源に一度戻すリサイクルに比べコストやエネルギー消費を抑えることなどがあります。
捨てられるはずだったものを価値ある製品へと変化させることができるアップサイクルは、環境保護やエネルギー消費の抑制に重要なSDGsの取り組みの一つであると言えます。
アップサイクルの取り組みや作品の例
ファッション業界
・SEAL(シール)
廃棄されるはずのタイヤチューブから一点物のバッグや靴を制作しているブランドです。
・FROMSTOCK(フロムストック)×学生団体carutena
株式会社アダストリアが展開しているアップサイクルブランドとエシカルファッションを発信する学生団体が共同制作し、捨てられるはずだった服からトートバッグにアップサイクルした取り組みです。
・MALION VINTAGE(マリオン ヴィンテージ)
古着やヴィンテージの布地を使用し、レディースファッションの服やアクセサリー、バッグなどを制作しているブランドです。
建設業界
・株式会社大林組
「アップサイクルブロック」という資材を開発し、建設資材として利用しています。この資材は、東日本大震災の時に発生した木材やゴム、金属類などの混合廃棄物を使用しアップサイクルしています。
・瀬戸内造船家具プロジェクト
オズマピーアール、浅川造船、ConTennaの3社が共同で発足し、廃棄・焼却処分されてきた造船古材を活かした家具作りを行っています。
イベント業界
・HELLVIT合同会社
廃材や古材を活用し、イベントブースや住宅などの外装・内装をデザインし施工を行っています。
・蝉(semi)
掲示期間が終了した屋外広告やバナー、フラッグなどの素材を利用しバッグやカードケースなどの普段使いできる製品をつくっています。
このように、アップサイクルの取り組みは様々な業界で広がっています。普段の生活にアップサイクル製品を取り入れてみてはいかがでしょうか?