私たちの想い

平和への思いを行動に〜第5回南スーダン全国スポーツ大会〜 前編

JICAのスポーツを通じた社会貢献活動についての連載です。
前回の第4回大会に続き、南スーダン全国スポーツ大会の第5回大会について、前編・後編と分けて掲載します。

スポーツを通じて『平和への思いを行動にする』南スーダンの取り組みについて紹介します。

信頼に根差した平和と安定

約半世紀の紛争を経てスーダン共和国から南部10州が分離・独立を果たし、2011年7月に世界一新しい国、南スーダン共和国が誕生しました。
しかし、新生国家としての国造りの最中であった2013年12月、2016年7月の二度にわたり政府の派閥抗争に端を発する騒擾が起こり、各派の支持基盤となる民族間の激しい争いが全国に波及しました。

国内の治安、社会経済状況は急速に悪化し、国民の3分の1にあたる400万人以上が故郷を追われ難民や国内避難民となりました(UNHCR April 2020, IOM March 2020)。
暴力と混乱、貧困が長期化するにつれ、異なる民族や住民の間で不信感・憎悪が増幅されていきました。

2018年9月、国内の平和と安定を促進するため「再活性化された衝突解決合意」が南スーダン関係者によって結ばれ、平和への機運が高まるなか、2020年2月にようやく新国民統一暫定政府が設立し、南スーダンは三度目の国造りのスタートラインに立ちます。

今後、南スーダンが持続的な平和を実現するには、多様性と調和のある統一国家の成立に向けて、国民が信頼のもとに結束することが不可欠です。

スポーツを通じて民族融和と結束を

南スーダン文化・青年・スポーツ省(以下、「スポーツ省」)は、JICAの協力のもと、第5回全国スポーツ大会「国民結束の日」(以下、「大会」)を開催しました。

「平和と社会的結束」をスローガンに掲げる本大会は2020年1月25日から2月3日までの10日間にわたり、南スーダンの首都ジュバで実施されました。

スポーツ省大臣とともに開会式に出席したJICAの萱嶋理事は、「選手、審判、観客、そしてジュバ市民が、お互いを尊重し、ともにこの大会に参加することは、南スーダンの平和に貢献することになる」と、今後の南スーダンの若者たちの未来に大きな期待を込めました。

スポーツを通じて国民の交流、民族間の融和を促進し、市民レベルで平和と社会的結束を後押しするべく、JICAは2016年の第1回大会から継続して大会開催に協力しています。大会の趣旨に賛同する国際機関(UNMISS、UNDP)や他国政府援助機関(スイス開発協力庁)、民間企業など6の機関・団体からも前年に引き続き資金協力や物資提供がなされました。

大会には、全国から代表に選抜された360人を超える19歳以下のアスリートが参加し、男子サッカー、女子バレーボール、男女陸上の各競技で日頃の練習の成果を発揮しました。今年は新たに南スーダンの伝統競技である男子レスリングが加わるなど、回を重ねるごとに競技の多様化が進み、より包摂的な大会へと進化しています。
フェアプレーの精神に則って、連日熱い試合を繰り広げる若きアスリートの姿は多くの市民の関心を引き付け、試合会場は観客であふれかえりました。

南スーダン随一の規模を誇る本大会は、選手にとって年に一度の晴れの舞台です。そのため、スポーツ省は公平・公正な選手選抜を目指し、毎年改善を重ねています。政情不安や治安上の課題などの制約に直面しながらも、地方政府と連携して選手選考にあたりました。

JICA_スポーツ省_打ち合わせスポーツ省職員が開会式の進行の打ち合わせを行う様子
JICA_南スーダン_レスリング初めて競技に加えられた男子レスリングの試合

進む女子、障害者の大会参加

いまだ南スーダンでは「男は外、女は内」といったジェンダーにまつわる固定観念が根強く、女性の社会進出の障壁となっています。
そのような状況にあって、大会は、女子がスポーツを通して能力を発揮し「外」で活躍する大切な場所であり、観客を含むすべての参加者のジェンダー意識に前向きに働きかける貴重な機会でもあります。

スポーツ省は性暴力や早期結婚・出産、女性の就学率の低さなどの社会問題の解決に貢献していくことも大会の目標とし、今年も女子の参加促進に取り組むとともに、スポーツに取り組む女性のロールモデルの創出を推進しています。

さらに、今回は車いすバスケットのエキシビションマッチが初めて実現しました。選手たちの生き生きとした表情や力強いプレー、初めて見るスポーツに驚きを感じながらも夢中になって応援する観客の姿が印象的でした。今回のマッチを通して、南スーダンにおいてスポーツが障がい受容(障害者の自己受容や社会受容)ならびに社会参加に果たす役割と、その可能性が示されました。

JICA_南スーダン_車いすバスケ初の試みとして車いすバスケットのエキシビジョンマッチも開催した
JICA_南スーダン_女子バレー女子バレーで空中戦を繰り広げる選手たち

 

■出典元:『第5回南スーダン全国スポーツ大会「国民結束の日」の開催-平和への思いを行動に-』

https://www.jica.go.jp/south_sudan/office/information/event/20200616.html

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独立行政法人国際協力機構(JICA/ジャイカ)は、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行っています。

JICAは、人々が明るい未来を信じ多様な可能性を追求できる、自由で平和かつ豊かな世界を希求し、パートナーと手を携えて、『信頼で世界をつなぐ』というビジョンの下、活動しています。

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平和への思いを行動に〜第5回南スーダン全国スポーツ大会〜 後編JICAのスポーツを通じた社会貢献活動についての連載です。 前回の第4回大会に続き、南スーダン全国スポーツ大会の第5回大会について、前編・後編と分けて掲載します。スポーツを通じて『平和への思いを行動にする』南スーダンの取り組みについて紹介します。...

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