妊活や不妊に関して、パートナーと話す機会はありますか?
ライフプランのひとつではあるけれど、話すのが難しいこのトピック。株式会社F Treatment代表・金藤美樹穂さん、Sports for Socialを運営する株式会社HAMONZ代表・山﨑蓮がざっくばらんに語り合いました。
どんな問題やストレスがあるのか、どう向き合っていけばいいか、まずは「知る」ことから始めてみませんか?
話し合いの場を持つことでお互いの考えを「知る」
山﨑)妊活や不妊に関するお話は、みなさん家庭内でされているものでしょうか?
金藤)できているところとできていないところさまざまだと思いますが、できていない場合は弊社の「F check」を使って話し合いの機会を持っていただけたら嬉しいです。実際に、使っていただいたあとに、ご夫婦同士で話し合いの場を持ちましたという感想をいただくこともあります。キットを使ったことで想定外の結果が出た場合でも、ライフプランや次のアクションを考える機会を新しく持てましたというお声もあります。©︎F Treatment Co.,Ltd
山﨑)仮に、ネガティブな結果が出た時は、どうやって話し合っていくべきでしょうか?男性としてどう考えていくべきなのか。喧嘩の原因や離婚の原因にもなりうると思うので、そういうことが起きた時にどう話せば良いのでしょう。
金藤)そうですね。検査結果が想定したものと違ったからといって、絶対に子供ができないというわけでは決してないことだけは勘違いしないで欲しいなと思っています。色々な原因が重なり合っているものですので、あくまでリスクがあるかもしれないということを知れたと捉えていただければ嬉しいです。いきなり、子供ができないんじゃないか?という会話をしてしまうのは良くないかなと思います。
山﨑)なるほど、そういうことなんですね。
金藤)おそらく、それまでそういった話をしていないと思うので、お互いにどういう考えを持っているかを知り合うことが大事だと思います。
山﨑)なるほど。なかなかそういった話を真剣にする機会もないですよね。みなさんは、どういった流れで妊活などの会話をしてるか気になります。男性側がどういったアプローチしていくのかなと。
金藤)おそらく「ライフプランニング」という切り口で話すと心理的ハードルは低くなるのではないかと思います。ご夫婦で生活を一緒に営まれるということは、例えば、車を買うのか、家を買うのか、引っ越すのか、といった大きな意思決定も全部含めてライフプランだと思います。その中で、お子さんはどうするということや、お仕事はどうするということも必ず含まれてくると思います。子供は何人くらい欲しいのか、子供を作らないという選択肢もあると思うので、そういったことを含めてライフプランを考える。そこから逆算していくことで妊活や不妊治療といった話も出てくるのではないかと思います。
©︎F Treatment Co.,Ltd
女性の方が知識があるのであれば、男性から「分からないから教えて欲しい」と聞いてみるのも良いと思います。女性もまだ知らなければ最近ではクリニックのHPなどでも詳しく解説くださっていたり、オンラインの勉強会を開催しているところも増えているので、一緒に情報を検索して、共に知識を高めていくのも良いのではないでしょうか。「女性の問題だから自分は関係ありません、興味ありません」などのスタンスですと、男女で知識のレベルに差が生まれてしまいなかなか会話になりずらいですよね。「わかってもらえない」という状態になってしまうと、話し合いが進まないし、苦しいと思うので、お互いに知っていくことが大切ですね。
山﨑)ありがとうございます。この対談を多くの男性に読んで欲しいなと思います。むしろ、女性からパートナーの方にシェアしてもらえたら嬉しいですね。とても良い話を伺えました。
不妊治療の3つのストレス
山﨑)不妊治療はかなりストレスがかかると聞いたことがあります。どのように向き合っていったら良いのでしょうか?
金藤)私自身、不妊クリニックに通っていたという実体験も踏まえてお話しすると、負荷は3つくらいあると考えています。不妊治療というと、まず「お金の問題」と「時間」と、「それらを踏まえた精神的な辛さ」という3つです。
まず、それらがどう負荷なのかは物理的に知らないといけないと思うので、不妊治療について少しお話しさせていただきます。まず「知る」ということが大切だと思うので。
まず、お金についてです。初期の不妊治療ステップとして「タイミング療法」というものがあります。まずはご自宅で性生活を営んでいただくというものですので、通常のご家庭の妊活と同等ですが、不妊治療でもそこからスタートします。
山﨑)「タイミング療法」は家庭でも病院でも行うものなんですね。
金藤)排卵のタイミングで行為を行う方法です。排卵のタイミングはなかなか分かりにくいです。一般的に、基礎体温をアプリや手帳で管理されている方が多いと思いますが、生理不順の方も結構多いので、排卵のタイミングを正確に知ることは難しいです。ですので、病院では先生が卵胞の大きさなどから、排卵の時期を教えてくれるので、「2日後くらいだと思うから2日後にもう一回病院に来てください」と言われて2日後に行って、もう一回エコーで診てもらって、「今日くらいだから今夜タイミング持ってみて」と先生に言われます。そして家でタイミングを持つという感じです。
それでもうまくいかないと、次のステップは「人工授精」です。
山﨑)「人工授精」という言葉は聞いたことがあります。
金藤)「人工授精」は、人の手を介して男性の精液を女性の子宮内に注入する方法です。精子の量や運動量が少ない、女性に性交痛がある、セックスレスや勃起不全あるなどの場合に適応されます。
人工授精でも難しいと、その次のステップが「体外受精」です。卵子と精子を体外に取り出し、体外で受精を行う治療です。受精が確認できたら受精卵を培養して子宮に戻します。理科の授業で、細胞が二分割して四分割するという細胞分裂の絵を見たことありませんか?
山﨑)あります!
金藤)受精した後は卵が細胞分裂していくので、ある程度成長したものを体の中に戻します。
さらにその次のステップになると、卵子の中に針を使って精子を直接入れる方法を用います。これが「顕微受精」です。
山﨑)初めて聞きました。
金藤)適切な卵子と精子を選ぶことができ、確実に受精させることができます。
山﨑)確かに、そうですね。
金藤)精子も先ほどお話しした通り奇形や運動量が少ないものもあるので、適切なもので受精し、培養して体内に戻します。
大きく分けると、タイミング、人工授精、体外受精、顕微受精があります。もちろん方法によって値段は高額になっていきます。不妊治療は、どんな薬剤を使うかや何をするかによって費用の差が大きいので、なかなか一概には言えないですが、ざっくりとした目安として体外受精で1回50万円ほどでしょうか。
山﨑)高額ですね。
金藤)病院などによっても変わるんですが最低でも20万円から100万ほどになるケースもあります。
山﨑)成功確率は高いのでしょうか?
金藤)顕微受精などステップが上がっていくと高まっていきますが、必ず成功するわけではないです。さらに、それがいつ実るのかもわからないですよね。高額なお金をかけて確実に手に入るのであればまだ気持ちも保てますが、いつ実るのか、本当に成功するのかも分からないという不安があるものなんです。
山﨑)これは時間もお金もかかりますね。大変なストレスだと思います。
金藤)そうなんです。時間という点では、排卵は1ヶ月に1回しかチャンスがないことも大きく関わってきます。例えば顕微受精の場合、昨今では受精卵を培養して凍結し、次の周期で体内に戻す治療が多いようです。もちろん、その方のお身体の状況と診療方針によって同周期で戻す場合もありますが、治療と治療の間の待つ時間も大変長いので、焦る気持ちと裏腹にもどかしい気持ちになります。さらに、培養途中で上手く育たずに中止になることもあるので、再チャレンジに向けて待つ時間が負荷になることもあります。
山﨑)なるほど、本当に大変ですね。
金藤)先ほど「タイミング療法」で、「2日後に病院に来てください」と言われるとお話ししましたよね。つまり、通院のスケジュールが立てられないんです。
山﨑)予定が狂ってしまうこともあるんですね。
金藤)「生理の○日目」にしかできないという検査もあるので、自分の予定や希望のスケジュールだけで進めることが難しいです。
山﨑)男性として良い話を伺いました。今お話を伺うまで、女性が突然病院に行くということへ理解がなかったので、今とても反省しています。もっと早く知っていたら良かったと思います。
金藤)そうですね。そういうスケジュールで動かなくてはいけないと知ってもらえることで、精神的ストレスは低減していくかなと思います。
山﨑)「病院によく行く=身体が弱い、体調管理がなっていない」と思ってしまいがちですが、そうではないんですね。
金藤)さらに、不妊治療について会社などに開示していない方も多いので、そういったストレスもあると思います。知らないから偏見が生まれると思うので、知らなくて良いや、から変わっていけると良いですね。
不妊に悩んでいる人へ
山﨑)不妊の悩みを伝えられない方に対してのアドバイスはありますか?
金藤)そうですね、おそらく不妊についてだけでなく、悩んでいる時って悩みが漠然としていて何に悩んでいるのかわからないと思うんです。なので分からないことを整理するために、知識を得ることと自分の身体の状態を知ることが大事だと思います。
山﨑)仕事でもそうですもんね。悩んでいるけど、何に悩んでいるのか明確ではないとさらに不安になってしまいます。
金藤)そうですよね。知ることで悩みが明確になり、その悩みに対してできる行動をしていくことで、悩みが緩和されるのではないかなと思います。あとは、相談できる相手を見つけることです。自治体やNPOなどで実施している相談サービスを利用したり、パートナーとコミュニケーションを取り合ったりして、相談できる環境を整えることが大切だと思います。
山﨑)今日のお話を聞いて、男性が自分事として考えられる未来になっていくと良いなと思いました。私も、今日をきっかけに色々学んでみようと思います。ありがとうございました。
編集部より
今回は
●不妊治療にはどんなストレスや問題があるのか
●パートナーとどう向き合っていけばいいか
という内容でお届けしました。
「不妊」に関して、新しい発見ばかりだったのではないかと思います。現状では、パートナーにもどう話していいか難しいトピックだと思われがちですが、「知る」ことで話のハードルが下がったり、誰かを傷つけることも減ったりするのではないでしょうか。
自分とは遠い話だと思わず、知ってみる、話してみる、行動してみることが大切です。
株式会社F Treatment
不妊治療net
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