熊本地震が発生した2016年、当時現役Jリーガーでありながら、募金活動や避難所への訪問など多くの復興支援活動を行い、現在も復興支援活動、さらに環境問題への取り組みも行っている巻誠一郎氏。
熊本県にて、海洋ゴミを回収する『Seabin』という機械の普及活動を行う株式会社SUSTAINABLE JAPANの代表取締役社長の東濵孝明氏。「熊本県」「社会貢献活動」という共通ワードを持つ、両者のオンライン対談企画が実現しました。
Sports for Social では、東濵孝明氏と巻誠一郎氏の対談企画を3回に渡ってお送りします。
第3回となる今回の対談では、『これからのアスリートの姿』『社会貢献活動を行う源とは?』についてお話いただきました。
Vol.1はこちら https://sports-for-social.com/?p=45
Vol.2はこちら https://sports-for-social.com/?p=57
これからのアスリートの姿
ーー東濱)これからのアスリートの姿についてお話できればと思います。
ーー巻)アスリートってこれからどんどん増えてくると思うんですね。
サッカーができる環境が増えていて、昔はJ1だけだったものがJ2、J3、地域リーグができ、地域からもプロのサッカーチームを作ろうという動きが出てきています。
サッカーをやろうと思えば、どこまでもある程度できるような環境というのが日本でも整いつつある。それと相反する形で日本の中でのサッカー選手の価値は、数が増えれば増えるほど低くなるとまでは言わないですが、今回であれば色々なJリーグのクラブが社会的な部分で問題を起こしてしまうなど、どんどん社会の中でのスポーツ選手の価値が下がっていってしまう。
コロナ渦で予算が削減され、人員が削減される形となって、ある程度スリム化される状況が出てくると思うんですよね。そうなった時にどう社会と向き合っていくのか。
アスリートと言えども、20年も30年もできるトップアスリートはほんの一握りで日本にも数人しかいないような中、みんながみんなそういう価値を追い求めるかというとそうではないと思います。
本当に大切だと思うのは、Jリーグの理念でもある地域に寄り添った形でクラブがプレーをするというのもそうですが、選手も様々な形で価値をつけていかないといけない時代なのではないかなと思います。
もちろんプレースタイルでドリブル、ヘディング、パス、シュートが得意というの価値もありますが、それと同じように社会の中でどれだけ貢献できているのかという価値を作り、デュアルキャリアとして歩んでいくのは大事。
僕はそういう意味では、アスリートの中でも地域に根ざして社会と向き合い活動するという価値を追求していたアスリートでした。
アスリート自身も一つ、自分の価値というのを作っていかなければいけない時代なんじゃないかと。
それがYouTubeなどで発信するという価値もありますし、僕みたいに社会のためになることをやりたいという価値もある。
もしくは、セカンドビジネスとして、経営者として日本を引っ張っていくという価値もあるでしょう。
そういったものを追求していかなければいけないし、そういうものを意識せざるをえないような今のスポーツ界での動きになっていると思います。
一人一人が意識するべきだと思いますし、現役中は意識しつつ、ある程度、研ぎ澄まさないといけないと思います。
色々な誘惑であったり、やりたいことというのをトップアスリートになればなるほど、削いで行かないといけない。
実際に僕もトップアスリートでやっている時には、どんどん削ぎながら、社会に適応しないといけないと思う反面、社会からどんどん自分を切り離してアスリートとして研ぎ澄ましていかないといけなかった。
そういうものを同時に押し進めていかないといけない。
それを両立させるためには、何が必要かというと、社会に繋がること。
相反することですが、大切なことです。
僕の場合は、デュアルキャリアでビジネスの世界に入ってしまうとお金で動かないといけない。
年俸がプレッシャーになって、チームの中で歪みが生まれて、サポーターの中でもこの給料でこれだけのパフォーマンスしかしないなど、サッカー選手としてすごく難しくなってしまう。
なので、僕が言いたいのは社会と繋がるためにボランティアやろうとは言いませんが、お金じゃないものを追求するというのは、アスリートの中ですごく大切な価値なのではないかなと思いますね。
お金というのは、そういう取り組みをしていくと、お金の稼ぎ方やお金の向き合い方は、自ずと学べると思う。
サッカー選手って何がすごいかというと、足でやるスポーツで、誰もがう必ずしもまく行かないところからのスタートなんですね。
うまくなるために、個人・チームで問題・課題を見つけて、それを解決するという能力は、どのスポーツよりも養われると思う。
プロの第一線で活躍された方というのは、そういったものが自分の中にあるはず。
自分のサッカー人生が終わった時に、違う形でその能力を社会に向けて、自分のやりたいことに向けて、変換する能力がアスリートは足りていない。
その変換する能力をどこでどう養うのかということを、これからアスリートはもっと考えないといけない。
そういうことに向き合って、アスリートとして活動してきた選手は、次のキャリアでも非常にスムーズに上手くいくのだろうといつも思いますね。
ーー東濱)巻さんの言葉は、重いですね。
ーー巻)自分で実践しながら自分を実験台として、今までサッカー選手があまり歩まなかった道を自分で選んで歩んできた。
0から1を生み出すというのはすごく大変でエネルギーがいるのですが、そういうものは誰かがやらないといけないですし、僕もそういうものにやりがいを感じています。
東濱さんと一緒です。同じような感覚で次のキャリアを歩んでいます。
社会貢献活動を行う源とは?
ーー東濱)最後に、色々な活動をやられていると思うのですが、源、活力はどこからきているのでしょうか?
ーー巻)よく言われるのですが、あんまり考えたことがないです。
頑張ろうと思って頑張っても、人間ってそんなに頑張れるものじゃない。
溢れ出すというか、これをやったら未来がこう変わるな、こういう人たちが笑顔になってくれるなという風に考えて、逆に活動をしながら僕がエネルギーをもらっている。ある意味、自然体ですね。
次のキャリアでもずっとサッカーをやり続けている。
自分の好きなことだったり、サッカーやっている時って、「明日行きたくないな。」と思ったこと、一度もないんです。
毎日サッカーやりたいな、また明日もサッカーやりたいなと思いながら、サッカー選手続けていた。
今も同じように、「今度これやりたいな」「あの人の笑顔が見たいな」と想像しながら、ワクワクしながら毎日を過ごしています。その積み重ねであっという間に月日が経っているという状況ですね。
ーー東濱)毎日がすごく充実した日々ということですね。
ーー巻)そうですね。充実していますし、もっとやれることがあったなといつも思ってます。
ーー東濱)ありがとうございました。
◼️巻誠一郎氏プロフィール
元日本代表プロサッカー選手。 2003年ジェフ千葉に入団。2005年ジーコ監督率いる日本代表に選出。2006年ドイツW杯出場。 2010年ロシア、2011年中国への移籍を経て、東京ヴェルディに移籍しJリーグ復帰。 2013年ロアッソ熊本に移籍。2018年現役引退。 現役時代から地元熊本の震災復興に貢献する一方、介護施設、放課後等デイサービス、保育園などの経営も手掛けている。
Twitter:https://twitter.com/makiseiichiro36?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor
Instagram:https://www.instagram.com/makiseiichiro9/?hl=ja
◼️株式会社SUSTAINABLE JAPAN
地球環境の継続可能な発展に貢献する。未来の子供達の為に綺麗な海を残す。
海洋浮遊ゴミ回収機『Seabin』を取り扱う企業として、日本への導入台数を増やし積極的に海洋ゴミ・マイクロプラスチック回収を行う。
HP:https://www.sustainablejapan.org/
Instagram:https://www.instagram.com/sustainable_japan_co_ltd/?hl=ja