特集

“自分らしく”いられる介護とは?お風呂が持つ幸せと、介護がもたらす「優しい自分」

アサヒサンクリーン

超高齢化社会が訪れると言われている日本。中でも、介護の問題は大きな社会課題として多くの人々に認識されています。
静岡県に本社を置き、全国で訪問入浴介護を中心とする介護事業を展開しているアサヒサンクリーン株式会社。介護保険利用者のうち、訪問入浴の利用者は1.6%と言われる現在において、“お風呂の幸せ”はなぜ必要なのでしょうか?

自立支援のために行われる介護、そして“その人らしい幸せ”を求める介護のあり方について、アサヒサンクリーン株式会社代表取締役社長浅井孝行氏(以下、浅井)にお話を伺いました。

アサヒサンクリーン株式会社 浅井氏アサヒサンクリーン株式会社代表取締役社長浅井孝行氏

介護で働くと「優しい自分」になれる

ーー現在、介護業界における人材不足や老々介護など、介護に関する社会課題は多く存在しています。浅井社長は現在の『介護』業界をどう捉えていますか?

浅井)今回このような取材の機会をいただき、『介護』という事がどういう事なのか改めて考えました。私自身、介護保険が導入された2000年からこの業界に携わっています。当初は、介護が社会課題であることは間違いないなと思っていると同時に、介護の仕事自体は何かを作り出したり世の中の便利にするものではないので、生産性のあるものではないという少しネガティブなイメージがありました。

ーーそうなんですね。いま、浅井社長自身が魅力を感じる点はどのようなところですか?

浅井)介護職に従事することで有意義だと思うのは、「優しい自分になれる」ということです。介護を必要としている方は、何かしら自分1人では出来ないことがある、言い換えると“弱さ”を持った方がほとんどです。そのような方々に、優しさを持って向き合うことができることは、優しさを持てた自分自身を誇らしく思うことにも繋がります。

そんな実感をすると、実は介護をされる側よりも、する側の方が得ることが多いのでは?とも考えます。「介護という社会課題を解決する!」というイメージではなく、目の前の人に対して優しくなれて自分自身気持ちがいいなと感じられました。

お風呂が持つ力とは?

ーーアサヒサンクリーンさんは、介護事業の中でも訪問入浴介護に力を入れられています。

浅井)介護を受ける方や家族にとっては、入浴というのは転倒や湯あたり、ヒートショックなどの事故が起こりやすいというイメージもあり、無理して入浴を勧めないこともあります。特に自宅で介護を受ける場合、自宅には介護用の特殊浴槽設備や浴室に手すりがない場合がほとんどです。そうした方は、体を拭く(清拭・せいしき)だけで、半年から1年ほど入浴を我慢することもあります。

ーーたしかに、「お風呂は危ない」というイメージもあるかもしれません。

浅井)しかし、そんな中でも“入浴”という行為が幸せをつくると私自身は強く感じています。
以前、言葉を発することもあまりなく、24時間ベッド上で生活されていて1年ほどお風呂に入られていない方の訪問入浴に立ち会いました。その方が訪問入浴のサービスを受けられたとき、スーっと涙を流されたんです。それを見ていたご家族の方も涙を流し、私たちスタッフも思わずもらい泣きしてしまいました。

「これこそがお風呂が持つ力だ」と感じましたね。私たちも疲れているとき、入浴することでホッとしたり、「生き返った」と思う瞬間があるじゃないですか。そのお客様も、そうした感覚を思い出したのかもしれません。

ーーなかなかお風呂に入れていなかった方に、以前の幸せな瞬間を思い出す素晴らしい瞬間だったのですね。

浅井)老人ホームにおいても、要介護度の低い方は入浴することもありますが、どうしても作業的な方法になってしまいます。元気だったころのお風呂とはかなり違うものです。1人でのんびり湯船に浸かることができる訪問入浴は、通常イメージされる介護ともまた違うものだという印象を持っています。

アサヒサンクリーン株式会社

要介護者の自立を支援するための訪問入浴

ーー浅井社長が、介護という仕事に対して大事にしている姿勢はありますか?

浅井)介護というサービスの本質は自立支援だと思っています。至れり尽くせりなサービスではなくて「自分でできる環境」を整えてあげることが大事であり、介護される方の本質的な喜びは「自分でできる」というところにあります。
ご自身でできる環境を整えるために必要なお手伝いを考えることこそが介護の基本です。
「お風呂に入っていただくだけで自立支援になるのか?」と思ったこともありましたがそんな事はありませんでした。

ーーたしかに、お風呂に入る“だけ”でいいことがあるとは素直には考えづらいです。

浅井)お風呂に入った後だとADL(日常生活動作)が回復し、自分でいろいろできるという声をよく聞きます。また、入浴によって得られる温熱効果は体調の回復にも寄与します。
さまざまな介護サービスがある中で、特殊な分野であるとは思います。しかしながら、実際に入浴をしていただいている現場から感じ取れるものは「自立を支援する」という介護の本質であると感じます。入浴される方が気持ちよく、感動する姿を見ると「介護とはこういう仕事なんだな」と思いますね。

訪問入浴介護の実態

ーー先ほど「特殊な分野である」と浅井さんがおっしゃったように、介護という分野において入浴というイメージと結びつくことは一般的にもあまりないのではないかと思います。そのギャップはどのようなところから生まれているんでしょうか。

浅井)理由は2つあると思います。1つ目は訪問入浴そのものや、効果があまり認知されていないことです。現在のケアマネジャーと呼ばれる方が、介護を受ける方にとってどういうお手伝いや介護が必要かというプランを立てることが主流であり、ケアマネジャーさんたちは介護のことを知り尽くしています。しかしながら、訪問入浴介護というサービスについては「名前を聞いた事がある程度」という方がまだまだ多いのが実情です。

ーー知識として訪問入浴介護を知っているけれども、浅井さんが体験されたように、その文字以上の効果を理解してくれているケアマネージャーさんは少ないのかもしれませんね。

浅井)2つ目は“お風呂”の必要性です。衛生面だけで判断すると、寝ながら体を拭く清拭でも問題ありません。ベッド上から移乗できる方、つまり場所の移動ができる方は訪問入浴ではなくデイサービスでお風呂に入ることが多いので、訪問入浴という選択をすることが少なくなります。

ーーできないことに対してのサポート、という意味で行くと、訪問入浴介護は贅沢品のような位置付けになってしまいますね。

浅井)そうですね。ですが、一度体験していただいた方はほとんどの方が満足し、ケアマネージャーさんも効果を実感してリピートすることが多いサービスです。是非いろいろな方に選択肢として認識いただき、体験してみていただきたいですね。

働く中で自分の“存在意義”を感じられる仕事を

ーー以前、訪問介護の事業をされている方から「こんなに感謝をされる仕事はない」と言われたのが私としてはとても印象に残り、そこから介護業界をポジティブに捉えることができました。人材不足が叫ばれて久しいですが、若い人たちが介護の仕事を魅力的に思うために必要なコトはなんでしょうか?

浅井)新しく迎え入れる方だけでなく、現在介護業界で働く方々にも魅力を感じ続けてもらうことは必要であり、中期のビジョンとして考えていかなければならないことだと思っています。
弊社のパーパスとして「いつもの安心を、ずっと」を掲げています。介護される方の状態が改善に向かうということは正直申し上げるとあまりありません。ですが、1日でも長く日常が続いてほしい、それをお手伝いをすることが弊社の存在意義なのだと考えています。

さらに、社員一人ひとりが自分自身の仕事を通して存在意義、存在価値を全員が認識できるようになることが理想です。介護業界では、ものすごく志がある方もいれば、介護で“しか”働けないと思っている方もいます。この仕事は特別な知識や技術、資格がなくても自分自身が存在する意義や価値をどこかに絶対見出せます。そうしたさまざまな方々に対し「自分自身の仕事を通しての存在価値は何なのか」を会社と一緒に明確にしていき、それをチームでも共有していきます。多様な存在意義を認め、自分の力を発揮して役割を果たすことを周囲が認めていくような風土づくりが必要です。

それができる組織を作ることが、介護を生業にする組織の進んでいく方向なのだと思います。

ーー単純に“人を集める”ということではなく、「介護で働く中での自分の存在意義がある」と思えるような組織を作っていくことが中長期的に見て大事なのですね。

浅井)「ありがとう」って言ってもらえたり自分がこんなに優しくできるんだと気づけるというところにすごくやりがいがある仕事です。自分自身が「いいな」と思う自分になってほしいですね。

ーー素晴らしいですね。介護について、そして“お風呂”の持つ力について強く実感しました。本日はありがとうございました!

スポーツ×介護の可能性

アサヒサンクリーン株式会社では、東京都社会人サッカーリーグのアローレ八王子や、町田ゼルビアFCレディースの選手、いわゆるアマチュアスポーツ選手を雇用しています。

アサヒサンクリーン株式会社

「介護は肉体労働の部分が多いため、最初は体育会系の人材が持つ基礎体力への期待からスポーツチームとの取り組みを始めました。ところが、体力面以外にも精神的な部分、組織における個人の価値発揮や役割の認識など、私たちとマッチする部分をかなり感じています。(浅井)」

次回記事では、実際に『スポーツ選手が介護業界で働くこと』についてインタビューします!

アサヒサンクリーン株式会社HP:https://www.asahi-sun-clean.co.jp/

アサヒサンクリーン株式会社
『介護×スポーツ』スポーツチームが介護を活かす。ただ働くだけではないその価値とは?訪問入浴介護事業を中心に、介護事業を展開するアサヒサンクリーン株式会社は、2019年から東京都社会人サッカーリーグ1部アローレ八王子とスポンサー契約を結び、アマチュアサッカー選手たちが仕事として介護事業に従事しています。 「介護職は人が不足しているから、アマチュアスポーツ選手を雇っている」というだけではない、両者にとって価値あるその取り組みについて、アサヒサンクリーン株式会社多摩エリア長の遠藤成駿さん(以下、遠藤)、そして高尾事業所長として働きながらアマチュアサッカー選手としても活動する林慶之さん(以下、林)にお話を伺いました。...
介護
「お姉ちゃんの理想の介護をつくろう」〜セヌーがつくる介護での働き方〜連載『#介護の未来を考える』 今回お話を伺うのは、Jリーグ・栃木SCに所属するプロサッカー選手の瀨沼優司さん(以下、優司)と姉の瀨沼愛さん(以下、愛)。神奈川県相模原市出身の2人は、2021年9月に『株式会社セヌー』を立ち上げ、2022年2月から在宅介護サービスを展開します。 現役のプロサッカー選手と長年介護職に従事されている姉・愛さんが立ち上げるこの事業に関して、設立の経緯や会社の方針について話を伺いました。...

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