『サーマルリサイクル』とは、「廃棄物を焼却する際に発生する熱エネルギーを、再利用すること」です。プラスチックなど完全に分別しきれない廃棄物を処理するのに有効な方法ですが、様々な問題点もあるのです。この記事では、『サーマルリサイクル』の意味や問題点、環境省の取り組みについてわかりやすく解説していきます。
サーマルリサイクルとは
先程も述べたように『サーマルリサイクル』とは、「廃棄物を焼却する際に発生する熱エネルギーを、再利用すること」です。
英語で「thermal(サーマル)」は「熱」を意味するように、焼却する際の熱エネルギーを使って、暖房や給湯などの発電に利用することを指します。簡単に言うと、ゴミを使った火力発電です。
「リサイクル」と聞くと、「廃棄物を加工して新しい製品をつくりだす」ことをイメージする人が多いと思います。このように、廃棄物が新しい製品の原材料となる方法を「マテリアルリサイクル」といいます。しかし実際は、この「マテリアルリサイクル」が難しいものが多数存在するのです。
例えば、プラスチックは代表的な事例です。プラスチックを新たな製品の原料として再利用するには、ポリエチレン、ポリプロピレンなど多様な種類のプラスチックを分別する必要があります。しかしこの作業は手間とコストがかかるため、分別せずにまとめて焼却せざるを得ない現状があるのです。
分別だけでなく、品質の劣化や設備など様々な課題によって「マテリアルリサイクル」は非常に困難な状況にあります。こうした「マテリアルリサイクル」の課題を解決するために生まれたのが『サーマルリサイクル』なのです。
サーマルリサイクルの利点・問題点
これから『サーマルリサイクル』の利点と問題点を紹介したいと思います。
利点
『サーマルリサイクル』の利点は、プラスチックなど完全に分別しきれない廃棄物を有効活用できることです。分別する際のコストや設備投資額も少ないため、さまざまな廃棄物を低コストで一気に処理できることも利点の一つでしょう。
また、『サーマルリサイクル』はメタンガス(二酸化炭素の21倍の温室効果をもつ)の発生を抑えることができます。食品が付着したプラスチックを埋め立てると、やがて食品が腐敗しメタンガスが発生するのですが、『サーマルリサイクル』によって埋め立てゴミを減らすことでメタンガスの発生を抑えることができるのです。
問題点
一方、『サーマルリサイクル』には問題点もあります。まず、有害物質であるダイオキシンが発生してしまう点です。高温で焼却するため、ある程度の発生は抑えられますが、それでも完全に防げるわけではありません。ダイオキシンの他にも、鉛や水銀、燃焼後に残る灰など、強い毒性のある物質が生成される点は『サーマルリサイクル』の解決すべき課題とも言えるでしょう。
そして、そもそも『サーマルリサイクル』を「リサイクル」として位置付けて良いのかという論争が世界で起きている点は、大きな問題点と言えるでしょう。海外では『サーマルリサイクル』はただの「エネルギー回収」や「熱回収」と呼ばれており、「リサイクル」に含まれていないことが多いのです。しかし、日本の環境省は『サーマルリサイクル』を「リサイクル」の一つと捉えているため、その分高いリサイクル率を誇っているのです。そのため、海外から批判の声が上がることも少なくないのです。
環境省による位置付け
環境省は『サーマルリサイクル』を「リサイクル」として位置付けていることは、先程お伝えしました。しかし、循環型社会を目指す上では『サーマルリサイクル』の優先度は低く、そのことは「循環型社会形成推進基本法」によって明記されています。
具体的な優先度としては、一番は「リデュース(発生抑制)」、二番は「リユース(再使用)」、三番は「マテリアルリサイクル」、そして四番目に『サーマルリサイクル』が位置付けられています。つまり、『サーマルリサイクル』は最終手段として検討されるべきであり、まずは使う資源を減らすことが重要だということです。
2018年の環境省の調査によると、日本の小売店においてレジ袋やフォーク、スプーンなどのサービスが過剰であると感じている人は6割超であることが分かっています。日私たちのささいな思いを行動に生かすことが、使う資源の削減につながり、環境保護の第一歩となることでしょう。
編集部より
今回は『サーマルリサイクル』の意味や利点・問題点について解説しました。日常生活をする中で「いま捨てたゴミが、どのようにリサイクルされるのか」を考える機会は少なく、それを想像するのは難しいことだと思います。ですので、今使っている物を大切にすること、マイバックを常に持ち歩くことなど、私たちが環境保護のために “明日からできること” を考えてみる必要がありますね。